SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめのセミナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第112号(2025年4月号)
特集『いま選ばれる「ブランド」の作り方』

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

インフレの今こそ注目。世界の「低価格ブランド」の躍進を事例とデータで探る

新しいビジネスモデルの導入(4)Walmart - On-Demand Early Morning Delivery

 スーパーマーケットチェーンのWalmartは、2024年より「On-Demand Early Morning Delivery (早朝配送サービス)」を開始しました。

画像を説明するテキストなくても可
Walmartのリリースより

 就業前の忙しい朝の時間合わせて、ベビー用品、仕事着、朝食の材料など、注文した商品を30分以内に宅配。またニッチな需要もカバーしていて、たとえば早朝の釣りに出かける人に向けて「生餌」も宅配可能な商品にリストアップするなど、とことん「朝」のニーズに応えるサービスとなっているのが驚きです。

新しいビジネスモデルの導入(5)Walmart x Zipline - Drone Delivery

 続いてもウォルマートの事例です。現在同社では、テキサスをはじめとする六つの米国の州で、自立型ドローンによる宅配サービスを提供しています。

画像を説明するテキストなくても可
Walmartとパートナーを組むZiplineの公式YouTubeチャンネルの動画より

 ウォルマート店舗周辺6マイル(約10キロ)圏内が対象となっており、約180万世帯に対してサービスを拡大しています。重量とサイズに制限があるものの、現在は卵のような壊れやすい商品も配送可能な対象に含まれるなど、宅配における技術も年々向上をしています。宅配時間の短縮や、僻地へのサービス拡大、二酸化炭素排出量の削減など多くの可能性があり、Amazonなどの他社との導入競争も激しくなっています。

 これらの五つの事例のように、成功する低価格ブランドは先進的なビジネスモデルを積極的に導入しています。IP商品を活用し店舗をエンタメの場と変え(Miniso)、AI導入でショッピング体験を強化する(Amazon)。既存の商品を再活用することでサーキュラーエコノミーを作り出し(Zara)、将来的なコスト削減と利便のためにドローン宅配を始める(Walmart)。特筆すべきは、コストを価格転嫁するのではなく、新しいアイデアやテクノロジーを導入することで、コストの将来的な削減と付加価値を共存させていることです。

まとめ:低価格であること=創造的で革新的なアプローチ

 今回の記事では、現在の低価格ブランドにおける競争力の源泉を、次の2軸にまとめました。

1.感情的なエンゲージメント
  • 深い共感性(Lidl)
  • ユーモア(Tesco)
  • 有名人登用(Lidl)

→かつての「価格」を中心した訴求から、感情的なエンゲージメントを図るコミュニケーションへ転化。低価格帯という付加価値も相まり、強力なナラティブとして生活者に伝わっている。

2.新しいビジネスモデルの導入
  • エンタメ型店舗(Miniso)
  • 発見方ショッピング(Amazon)
  • サーキュラーエコノミー(Zara)
  • オファーの細分化(Walmart)
  • 宅配ロジスティクスの進化(Walmart)

→発想やテクノロジーを通して、産業をリードするような先進的な顧客体験を提供している。また従来の少品種・大量生産によるコストの削減というイメージを脱するように、既存のシステム(店舗ネットワークや商品の網羅性)を活用した、細分化された商品/サービスの供給が行われている。

 HAVASの調査データから生活者の意識を見ても、「生活者の日々の生活を助けてくれる味方であり、社会にとって良い存在である」と捉えられています。さらには「革新的なブランドである」という、もはやカテゴリーをリードするような存在のように考えられ始めています。

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

 このように、長年「利益を削った安売り」と捉えられてきた低価格ブランドは、今や創造的で革新的なアプローチだと考えられています。価格と品質に対する生活者の意識の変化は、多くの分野に影響してくる内容だと捉えており、引き続き注目をしていきたく思います。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/05/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48977

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング