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『MarkeZine』(雑誌)

第112号(2025年4月号)
特集『いま選ばれる「ブランド」の作り方』

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事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

インフレの今こそ注目。世界の「低価格ブランド」の躍進を事例とデータで探る

感情的なエンゲージメントの例(3)Lidl - You Got This

 再び、Lidlの事例です。2023年にLidlは、自社のDIYブランド「Parkside」のCM動画に、ハリウッドスターのアーノルド・シュワルツェネッガーを起用しました。

画像を説明するテキストなくても可
LidlのCMより

 CMでは「成功のためには正しい道具が必要だ」と説き、「自分の手に力を持つ」重要性について力強く語ります。ただ舞台はハリウッドのアクション映画ではなく、平和でのどかな郊外。周りの薄い反応は気にも止めず、周囲に熱く語りかけ続け、最後にはParksideのチェーンソーで筋肉質な彫刻を削り上げて満足そうなシュワちゃん、といったコメディータッチな内容。シュワルツェネッガーのような大物を採用することで、安価ブランドのイメージを効果的に向上させた好事例となっています。

 以上の三つの事例から、低価格ブランドは様々な手法で、ターゲット層の感情的な部分に訴えるようなコミュニケーションを行っていることがわかります。物語を織り交ぜることで奥行きのある共感を生んだり(Lidl)、ユーモアを通してロイヤリティプログラムの利点を巧妙に伝えたり(Tesco)、安価イメージとは裏腹に大物有名人を登用することでブランドの信頼感を創出したり(Lidl)。

 これらの多角的なアプローチは、コミュニケーションを通して、特定のブランドポジショニングを構築/獲得していこう、という送り手側の意図も感じ取れます。一般的なブランド同様に、戦略的なアプローチを取り、そこに低価格という価値が乗ることで、非常に強力なコミュニケーションになっています

新しいビジネスモデルの導入(1)Miniso - Miniso Land

 低価格ブランドの近年の顕著な動きとして、ビジネスのスケールを活用し、様々な新しいサービスを開始しています。ここでもいくつかの事例を紹介したく思います。

 まずは中国雑貨大手のMiniso(メイソウ)の事例です。同社は、2024年に上海に「Miniso Land」をオープンし話題となりました。テーマパークのような色彩と賑やかな設えの大型店になり、展示されている70%がライセンスキャラクターの商品になります。

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Minisoの公式Webサイトより

 サンリオ、スヌーピー、ディズニーなどの各キャラクター専用コーナーを配置し、クレーンゲーム機や、ブラインドボックスの販売など、訪問客を楽しませる仕掛けが散りばめられています。キャラクターライセンスを通してブランドの強化を図るMinisoの戦略の下、ショッピング体験がエンタメ化された新たな店舗業態として注目されています。

新しいビジネスモデルの導入(2)Amazon – Rufas

 2024年、Amazonは新しいAIショッピングアシスタント「ルーファス」を導入しました。利用者はチャットボックスで、ルーファスとの対話することで、商品詳細や商品比較の情報を得られます。

画像を説明するテキストなくても可
Amazon公式Youtubeチャンネルの動画より

 またルーファスは過去のやりとりに応じて、ユーザーの好みや要望を理解し予測。Amazonの幅広いラインアップから、より精度高く商品を推奨してくれます。これは、利用者が既に認知している商品を探す従来のコマースではなく、検索やお勧めを通して欲しいものに出会っていくショッピング体験「発見型コマース」を強化するツールとして注目されています。

新しいビジネスモデルの導入(3)Zara – Pre-Owned

 ファストファッションブランドとして知られるZaraは、中古衣類サービス「Zara Pre-Owned」を開始しました。

画像を説明するテキストなくても可
Zara Pre-Ownedの公式Webサイトより

 同サービスでは、Zara商品を対象として、中古衣料品の売買プラットフォームや、お気に入りの洋服を長持ちさせることができる専門お直しサービス、また着なくなった洋服の再利用/リサイクルなど、より環境配慮したプログラムを提供しています。

 繊維廃棄物の問題が指摘される中、サーキュラーファッション(再利用やリサイクルを促進することで環境への負荷を軽減すること)の仕組みを開始したことで、大きな評価を得た事例となっています。2025年現在は欧州14カ国にサービスを拡大しています。

次のページ
新しいビジネスモデルの導入(4)Walmart - On-Demand Early Morning Delivery

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この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/05/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/48977

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