AIによってさらにデジタルマーケティングが加速する
━━まずはメディケア生命保険におけるデジタル広告の役割について教えてください。
石垣:ダイレクトな集客において、デジタル広告はメインチャネルとなっています。獲得チャネルのうちWebが8~9割を占めており、マス広告はほとんど行っていません。

入社時にWebマーケティング部門の立ち上げに携わり、5年前より現職。ダイレクト募集の件数増加をミッションとし、Webサイトを中心とした集客施策を統括
━━生命保険業界全体で、デジタル化の流れはいかがでしょうか?
石垣:ネット申し込みをする保険会社は、ここ5~6年で確実に増えてきました。一方で、「誰かに相談して納得してから入りたい」というニーズが圧倒的に多いのも事実です。そのため保険業界のEC化率はまだまだ少ないのが現状ですが、今後生成AIが普及すれば、AIに相談してそのままネットで申し込むという流れが増えてくると考えています。

笠原:検討されるお客様が徐々に、人に相談するより、Web上から積極的に情報を取得するように変わってきているなというのは広告業界にいても感じるところです。そのような中でデジタル広告を含め、デジタルのタッチポイントを通じたお客様へのリーチをどのように増やすかは改めて大事だと思います。

広告代理店で広告運用を担当した後、Shirofuneに入社。企業の広告運用内製化を専門的にサポートするコンサルティング業務に従事
自動化と社内教育の必要性を感じ、インハウス化を決断
━━2024年より運用体制の見直しを行い、インハウス化を進められたとのことですが、その背景を教えてください。
石垣:もともと6~7年前から、運用をお願いしていた代理店さんとの会話を通して、たとえばGoogleの機械学習によって広告運用成果を自動で上げられるようになるということなどを知識として得ていました。「将来的には内製化したい」とその当時から思っていたのです。2019年の展示会でShirofuneさんを知り、導入を検討しましたが、当時は社内の体制の都合で見送りとなりました。
その後、代理店さんの運用体制が変わったことを機に、改めてインハウス化を検討しました。単にコストを抑えたいというだけでなく、担当者2名がWeb業界出身ではないことから代理店さんとの月1回の打ち合わせだけでは知見が蓄積されづらいという課題もありました。内製化して経験を積ませた方が良いと判断し、本格的にインハウス化に動き始めました。
━━Shirofuneさんから見て、こうした課題は他の企業にも共通するものでしょうか?

新卒でWeb広告代理店に入社し、リスティング広告をはじめとする運用型広告のオペレーション組織立ち上げに従事。その後Shirofuneに創業メンバーとして参画し、現在は企業の広告運用内製化支援事業の責任者を務める
竹下:非常に多いですね。特にコロナ後から流れが変わってきたと感じています。デジタルマーケティングの重要性が高まり、自社内に知見やナレッジがほとんどない状態のままで、将来的に大丈夫なのかという課題感を持つ企業が増えています。デジタルマーケティングを自社でハンドリングでき、スピーディーに対応できる体制を整えるべく、インハウス化を検討されるケースが増えてきたと感じます。
あくまでインハウス化は手段の一つなので、各企業においてベストソリューションは異なります。ただ、業務の解像度を上げるという意味で一歩目を踏み出すことは良い選択肢になりうると思います。
「1日5分」でOK。インハウス化が急激に進んだ理由
━━実際に、広告運用自動化ツール「Shirofune」を活用したインハウス化はどのように進められたのでしょうか?
笠原:メディケア生命さんの場合、既に代理店さんが運用していた実績があったので、それを踏襲した形でスタートしました。まずは代理店さんの運用成果を超えることを第一目標に設定し、2つの商材でテストを実施。ある程度数字の改善が見られてきてからは、次のステップとして、予算内でどれだけ獲得数を増やすか、どの指標を改善していくかなど、一緒に目標値を決めさせていただきました。打ち手のご提案もするのですが、あくまでも石垣さんの方で舵を取っていただきながら支援する形式で取り組んできましたね。
初期設定や計測についてはしっかりとサポートさせていただきましたが、配信後は「Shirofune」の画面右側に出てくる「改善カード」の内容を見ながら、石垣さんとチームの皆さんでご対応いただくことがメインになっています。

笠原:これにより、代理店にお任せしていた業務をすべて引き受ける必要はなく、最終的な判断だけを行っていただく形にできました。
また、そもそも広告主様は、広告に使うキーワードに対して「このキーワードは、顧客にとって本当に良いキーワードとして機能した上でコンバージョンをしているのか」といったことを、代理店以上に理解できると思います。つまり、「改善カード」の提案に対しても、精度の高い判断ができるのです。これがCPA改善の要因の一つだと考えています。

石垣:毎日夕方にチーム3人で5分だけ集まって「改善カード」を見ながら「これをやろう」「これはやめよう」と話し合っています。代理店さんから月1回の報告を受けるだけだと前の月の話を忘れてしまいがちなのですが、毎日5分なら負担もかからず、全員が常に進捗を把握している状態も作れています。チームでコミットできる環境が作れたことで、継続していこうという判断になりました。
インハウス化がもたらしたCPAの改善
━━インハウス化にあたり、社内で反対はありませんでしたか?
石垣:「インハウス化すると忙しくなって業務が回らなくなるんじゃないか」と心配はされました。ただ、トライアル期間を経て本格運用の報告をする際も「5分でできるので問題ない」ことを強調しましたね。
━━インハウス化による成果はいかがでしたか?
石垣:Shirofune導入から4ヵ月ほど経った頃に、前代理店さん時代より良い数字が出始めました。CPAは以前の70%まで減少(30%削減)するなど改善し、その後さらに良いペースで配信できており、継続的に成果が向上しています。また、自社内のチームで運用することで、広告運用の「自分ごと化」ができていると感じます。
運用体制の改善に必要な“知識の解像度”
石垣:代理店さんに任せていた時は、効果が出なければ代理店さんのせいにできてしまう環境でしたが、インハウス化することで責任感がより強くなり、成果向上を目指してしっかりと取り組むようになりました。部下の2人についても自分から提案してくれることが多くなっています。

石垣:現状でも代理店さんにお任せしている領域もありますが、代理店さんとの定例ミーティングなどで話を聞く中でも、自分たちの運用経験があるからこそ、より質の高い学びを得られるようになりました。これまでは「そうなんだ」で終わっていたところを、自分の業務に生かせるものがないか、という視点で聞けるようになっています。
━━今回の運用体制変更を振り返って、同じような課題を抱える企業に向けてアドバイスがあればお願いします。
石垣:一般的なアドバイスになってしまいますが、小さく始めてみることをお勧めします。インハウス化は手間がかかりそうに思えますが、「Shirofune」を使えば1日5分程度で取り組めますし、思っているほど負担はかかりません。弊社では結果的にCPAがかなり改善したので、それだけを見てもやる意味があったと思います。
竹下:初期設定はそれなりに工数がかかりますが、そこさえ乗り切れれば負担にはならないと思います。社内においてデジタルマーケティング業務への解像度を上げることが重要で、その手段の一歩目を踏み出していただくのに「Shirofune」は良いソリューションです。
基本的にはセルフサーブ型でご利用いただけますが、代理店さんに依頼されている企業様がインハウス化を検討される場合は、最初の段階でつまずくと続けるのが大変になってくるので、今回のようにサポートプランで伴走させていただくケースが良いと考えています。

広告運用以外の領域もインハウス化を進めるために
━━今後の展望を教えてください。
石垣:広告運用のインハウス化に続いて、LP制作やホームページ運用のインハウス化も検討しています。ただし、LP制作などは手間がかかると思われるため、外部委託とのバランスを取りながら進めたいと考えています。
竹下:今後はクリエイティブのPDCAが広告運用の中心になってくると予想しています。「Shirofune」としても、パフォーマンスの結果を踏まえた次の施策提案なども機能として提供し始めており、そういった領域でも価値提供していきたいと考えています。
各企業にとってのベスト体制は、代理店との組み合わせも含めて様々です。たとえば部分的なインハウス化は最初のステップとして有効ですが、正解はそれ一つだけというわけではないのです。今後も企業ごとのベストな体制の構築や探索にうまく貢献していきたいと思っています。
笠原:キーワード選定や広告文作成、クリエイティブ制作など、本来人が時間を割くべきところに集中できる環境づくりにはやりがいがあります。広告主様が一番商品のことを知っているため、その点でインハウス化はやはり魅力的な選択肢の一つです。メディケア生命様のように、手間をかけずに成果を上げられる企業様が増えるように、今後もサポートをしていきたいです。
