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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Autumn

マーケターのための「UXデザイン」基礎講座

なぜマーケターとデザイナーはすれ違ってしまうのか?共創のためのシンプルな第一歩

「届けること」と「使い続けてもらうこと」は違う

 少し想像してみてください。

 ある商品に興味を持ち、Web広告をクリックしたユーザーがいたとします。ページの内容に納得して、「いいかも」と思っている。でもその人が実際に購入ボタンを押すまでには、さまざまなハードルがあります。

 価格の妥当性は? 今買う必要はある? 家族の了承は必要? そもそも、自分の課題を本当に解決してくれる?

 こうした迷いや疑念を乗り越えて購入した後も、商品・サービスとのつながりは終わりません。期待通りだったか、生活環境が変わっても使い続けたいか。デザイナーはこうした購入後の体験まで意識しながら設計しています。

 逆に、どんなに魅力的な体験設計をしても、ユーザーにその存在を知られなければ意味がありません。広告、SNS、メルマガなど興味を持ってもらう「きっかけ」をどう作り、どのタイミングで届けるか。情報があふれている今、マーケターは、まさにこの「情報の届け方」に頭を悩ませていることでしょう。

 つまり、「届けること」と「使い続けてもらうこと」を達成するためには、別の視点と深さが求められます

 デザイナーがマーケティング的な「きっかけづくり」の発想を持ち、マーケターが「購入後の体験」や「背景にある日常」にも想像力を持っていたら、デザイナーとマーケターの間にある溝は埋められるはずです。そして、そのプロダクトやサービスは、きっともっと選ばれ、一度きりの購入ではなく、使い続けてもらえるものとなるでしょう。

 そんな視点の重なり合いが、持続的なビジネス成長につながるのではないでしょうか。

マーケティングにUXデザイン的思考を取り入れた飲料メーカーの例

 とある飲料メーカーは、サブスクリプションモデル商品のユーザー数成長の鈍化と、ユーザーの満足度に課題を感じ、グッドパッチにご相談をいただきました。

 グッドパッチでは、デザインリサーチによる顧客理解を通じ、「多くの顧客はその商品を身近であると感じるが故に、深い楽しみ方に気づけていない。一方でエクストリームユーザーはその商品の周辺や奥行きを知り、自ら探求することに喜びを感じている」というインサイトを導き出しました。

 そこで、マーケターとデザイナーでタッグを組み、「商品をどれだけ楽しんでいるか」を軸にユーザーを4つのセグメントに分類。それぞれのセグメントユーザーが一歩上の楽しみ方へと進むには、どのような「気づき」や「きっかけ」が必要なのかを設計しました。 

 具体的には、属性や購買履歴だけを見るのではなく、上位セグメントのリアルな声や行動をヒントに、ユーザーの“楽しむ余地”を広げる体験設計を組み上げていきました。

 そこからマーケターは、その視点をCRM戦略へと落とし込み、ユーザーに自然に届くコミュニケーションを設計。社内で用いていた「セグメント」という視点は、ユーザーに届ける際には4つの「プラン」という形に再構成し、より外部視点に立った伝え方へと変換しました。

 サービスサイトでも4つのプランを単に並列に並べるのではなく、それぞれの魅力が直感的に伝わるよう、構成・コピー・ビジュアルに丁寧に落とし込みました。ユーザーが「自分に合った楽しみ方を選ぶ」こと自体が楽しい体験となるよう、マーケティングにUXデザイン的な視点を取り入れたわけです。

次のページ
マーケティング×UXデザインの共創が持続可能なビジネスを可能にする

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この記事の著者

秋野 比彩美(アキノ ヒサミ)

旧ヤフー(現LINEヤフー)でUIデザイナーとしてキャリアをスタート。トップページやバーティカルメディアの事業責任者を経験したのち、大手通信企業グループ会社にてUXデザイナー兼組織マネージャーとして従事。クオリティ管理やデザイナーの採用・運営に取り組む。グッドパッチにはUXデザイナーとして入社し、これまでに複数のユーザーリサーチを...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/08/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49637

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