マーケティング×UXデザインの共創が持続可能なビジネスを可能にする
マーケターが日々追っているのは、コンバージョン率やクリック単価、リード獲得数など、短期的な成果が中心でしょう。これらもビジネスの即効性を担う、欠かせない指標です。
一方、デザイナーが注視するのは、ユーザーとサービスとの関係性の質、そしてそのサービスがユーザーに継続的に利用され、愛着を持たれることです。その成果は、LTV(顧客生涯価値)やブランドロイヤルティといった、中長期的な指標に結びつきます。
短期の成果と長期の成果は、本来つながっているものです。ですが、どちらか一方に偏ると、持続的な成長は難しくなります。体験の質を犠牲にして得た一時的な成果は、いずれ限界を迎えます。一方で、どんなに美しく綿密に組み上げたデザインであっても、ビジネスとして成立し、サービスが持続しなければ、その価値をユーザーに届け続けることはできません。
プロダクトは、売上という燃料がなければ止まってしまう――これは私が駆け出しのUXデザイナーだった時にデザインをよく理解している事業責任者だった上司にかけられた言葉です。私は今でもこの言葉が、マーケターとデザイナーの「交差点」になるポイントだと思っています。
これはデザイナーに限った話ではありませんが、物事を協力して進めるには、両者がやりたいことを否定せず、ともに目指すべきポイントを提示することが大切です。今回の話で言えば、「サービスがユーザーに継続的に利用され、愛着を持たれるという価値を否定しない」ことがコミュニケーションのキモになります。
マーケターとデザイナーに必要な「認識合わせ」。それは、「サービスを持続、拡大させるためには、(対価を払うほど)サービスを支持するユーザーを増やしていくことが大切」という事実を互いに確認することです。
ユーザーに愛されるサービスを「長く」提供し続けること。この共通のゴールをお互いがもっているという認識合わせがもしできたなら、この共通のゴールをお互いが持てたなら、デザイナーは自身の仕事がユーザーの満足度だけでなく、収益性という形でビジネスに直結していることを実感し、より戦略的な視点でデザインに取り組めるようになるはずです。
ユーザーとビジネス、その両輪を回す共通認識こそが、マーケターとデザイナーの間に存在した「共創の溝」を埋め、真のパートナーシップを築き、未来のビジネスを切り拓く最強の原動力となるでしょう。