日本のモバイルシフトをリード、約9年前から進めてきたAIファースト
田中:岩村さんがGoogleにジョインされた2007年といえば、AppleがiPhoneを発売した年に当たります。またGoogleがITC業界で確かなプレゼンスを示し始めた頃でもありますね。
岩村:その頃は、PCを立ち上げた後、ポータルサイトからスタートしていて、Googleで検索するのはまだ一般的ではありませんでした。ユーザーにフォーカスグループインタビューをすると、「なぜGoogleのトップページはこんなに白いのですか?」「工事中ですか?」と言われたりしましたね(笑)。
しばらくして、モバイルシフトが来ました。日本のユーザーは新しいものを取り入れるという点ですごいんです。モバイル検索がデスクトップ検索を超えたのは、世界で日本が最初でした。モバイルシフトで、日本が世界のイノベーションをリードするという気持ちで邁進していた時代がありました。モバイルシフトを経て、現在はAIシフトの時代です。
田中:2025年5月にGoogle I/O 2025(年次開発者向け会議)が開催されて、Geminiの進化と新しい機能が発表されました。そのGeminiにGoogleのAI戦略をまとめてもらったのが以下のサマリーです。
GoogleのAI戦略は、マルチモーダルな基盤モデルであるGeminiを中心に据え、その機能をGoogleの広範な製品エコシステムに深く統合することに焦点を当てています。同社は、検索、ワークスペース、Android、クラウドサービスといった主要な事業領域全体でAIの能力を最大限に引き出し、ユーザーと企業の生産性、創造性、問題解決能力を向上させることを目指しています。特に、責任あるAIの開発と展開に対する揺るぎないコミットメントは、Googleの差別化要因の一つとして機能しています。Microsoft、Meta、Apple、Amazonといった他の主要なITC企業がそれぞれ異なるAI戦略を追求する中で、Googleは包括的かつ統合的なアプローチ、長年の検索技術の蓄積、そして膨大なデータ資源を活用することで、独自の強みを発揮しています。
私が読んだ限りでは、GoogleのAI戦略のポイントの1つはマルチモーダル、つまり言語はもちろん、音声、画像、動画なども含めて、統合するという考え方にあります。もう1つはそれらをGoogleが持っている資源と有機的に結合させることと読めます。
岩村:AIシフトは、この2年ぐらいで起こったと思われているかもしれませんが、Googleは2016年から「AIファースト」を掲げてきました。その根っこにあるのは、検索体験の向上です。
ユーザーの検索意図を理解して、無数にあるネット上の情報の中から1番合うものを提供したい――そのために、Googleではずっと前からAIを活用してきました。近年は、さらにドラスティックに「検索」の在り方が変化しています。