SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

新着記事一覧を見る

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Autumn

今どきシニアの消費行動大解剖

終活にかかる総額は平均約503万円!シニア世代の嗜み「終活」市場の可能性を読み解く

 ハルメク生きかた上手研究所所長の梅津順江氏が、「今どきシニアの消費行動」を読み解き、マーケティングのヒントを示す本連載。今回のテーマは「終活」です。77%が必要と感じながら、実際に始めているのは44%――。多くのシニアが「いつかは」と思いながらも、一歩を踏み出せずにいます。しかし、その中身は「死の準備」から「より良く生きるための投資」へと大きく変化しており、異業種参入のチャンスがあります。同研究所の最新調査から、シニアの意識と行動のギャップに潜む、新たな市場の可能性を解説します。

データが示す市場の変容――「死への備え」から「生への投資」へ

 エンディングノートや遺言書、相続対策、墓の準備など、死に備える行為を推奨する言葉として生まれた「終活」は、2009年に『週刊朝日』の連載から生まれ、2010年に「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされ、広く認知されていきました。日本の総人口の約3分の1が60歳以上となった社会構造の変化を背景に、今や誰もが知る言葉として定着しました。 

 しかし現在、その意味合いは当初の“死に備える行為”というイメージから大きく変化しつつあり、これからの“生きかたを再設計する行為”として捉えられるようになっています。その結果、「終活」はもはや人の心構えや家庭内の課題にとどまらず、一大市場として存在感を増しているのです。

終活にかかる総額は平均約503万円、その内訳は?

 生きかた上手研究所が2025年2月に実施した「終活に関する意識と実態調査」では、終活にかかる総額は、平均約503万円にのぼりました。この内訳は、葬儀や墓石といった従来型の支出だけでなく、家のリフォーム、不動産処分、資産運用の開始など、生活そのものを再設計する消費が大きな割合を占めました。

画像を説明するテキストなくても可
全体の平均支出額は、約320万円(2021年)から、約503万円へと増加。特に「お墓の準備」(約147万円→約88万円)といった従来型の支出が減少傾向にある一方、「投資信託など資産運用」(約947万円→約1,258万円)、「自宅のリフォーム」(約707万円→約758万円)、「不動産の整理・処分」(約284万円→約471万円)と、「生活の再設計」に関連する支出が大幅に増加した
※クリックすると拡大します

 かつて終活と言えば、「エンディングノートを書く」「遺言を残す」「お墓を用意する」といった、死に備える行為が中心でした。その動機となるのは、「遺された家族に迷惑をかけたくない」という意識でした。

 ところが近年は、「資産形成を始める」「家のバリアフリーに改修する」「健康習慣を見直す」といった、むしろ“これからの人生を良くするための行動”が終活に含まれるようになっています。

 これは、「遺された家族のために整える」から「自分の人生を充実させる」へのパラダイムシフトと言えるでしょう。終活は消極的な整理ではなく、積極的な生活投資へと変容しています。そう捉えると、終活関連のビジネスはエンディング領域だけではなく、健康、金融、住まい、趣味など幅広い業種が参入できるテーマであることが見えてきます。

次のページ
埋まらない意識と行動のギャップ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
今どきシニアの消費行動大解剖連載記事一覧
この記事の著者

梅津 順江(ウメヅ ユキエ)

ハルメク 生きかた上手研究所 所長

2016年3月から現職。主に年間約900人のシニアを対象にインタビューや取材、ワークショップを行い、誌面づくり・商品開発・広告制作の糧になるインサイトをつかんでいる。時代や世代も捉えて、半歩先の未来も予測している。著書に「消費の主役は60代 シニア市場最前線」(同文舘出版)な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/09/19 07:30 https://markezine.jp/article/detail/49686

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング