埋まらない意識と行動のギャップ
今回の調査で改めて浮き彫りになったのは、「終活は必要」と思っている人が77.4%に達する一方で、「既に始めている」人は44.0%にとどまるという現実です。

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「いつかはやらなければ」と思いながらも、「まだ早い」「面倒そう」と後回しにする構造は依然として変わりません。生きかた上手研究所では、2年に1度「終活に関する意識と実態調査」を行っておりますが、2021年、2023年時の調査も同様に、後回しにする傾向が見られました。
年齢と意識のギャップから、「まだ私には早い」と先延ばしされがちな消費を「端境期消費」と呼んでおり、このギャップにこそビジネス機会があります(端境期消費については、拙著『消費の主役は60代 シニア市場最前線』の2章「は再定義すれば動かせる」で詳しく解説しています)。なぜなら、行動に移した人ほど「気持ちが軽くなった」「生活が整理され満足度が上がった」とポジティブな効果を実感しているからです。
この“意識と行動の間”には、大きなサポート需要があります。「これさえすれば大丈夫」と気軽に始められることをわかりやすく示したり、小さな一歩を前向きに踏み出せる仕組みを提供できたりすれば、終活市場は一気に拡大する余地を秘めているのです。
広がる“無意識終活” 年賀状じまい・口座整理の先に
「自分は終活していない」と言う人でも、実は無意識のうちに終活を進めています。その典型が「年賀状じまい」です。今回の調査でも「既にやり終えた終活」として最も多く、38.4%が実施済みでした。
年賀状のやりとりをやめることは、対人関係の棚卸しをする行為であり、終活の一部というわけです。そのほか「金融口座・金融商品の整理」「デジタルまわりの整理・消去」なども、“暮らしを軽くする手放し”の一部。「言われてみると知らず知らずのうちに行っていた」という類の終活です。
終活関連企業にとって重要なのは、この「無意識終活」を可視化し、価値に変えることです。気づきを与え、それを支援する商品やサービスを提供すれば、多くの人が自然に“終活の入口”へと進むのではないでしょうか。