生活者はパーソナライズコミュニケーションを求めているのか?
続いて設問を少し変え、10のカテゴリを提示し「以下のカテゴリの企業から、WEBサイトやアプリ・会員サービスを通じて、自分に合った情報やおすすめを受け取りたいか」と尋ねました。上位から順に、「教育サービス」(64.7%)、「小売業/モール系EC」(61.0%)、「外食サービス」(57.0%)という結果でした。
さらに、これらのカテゴリにおけるパーソナライズコミュニケーションの十分性について尋ねると、「十分に提供されている」「ある程度提供されている」という回答者が最も多かったカテゴリは「小売業/モール系EC」で、次いで「教育サービス」でした(図3)。

注目すべきは、パーソナライズ意向と十分性のギャップです。商品やコンテンツの選択肢が多く、パーソナライズコミュニケーションが当たり前のように行われている「小売業/モール系EC」や「エンターテインメント」ではギャップが小さい傾向にあります。一方、「教育サービス」「インフラサービス」「飲料/食品」「日用品/生活雑貨」「外食サービス」では、そのギャップが大きく出ています。
続いて「教育サービス」や「インフラサービス」において、どのようなパーソナライズコミュニケーション施策を受けたことがあるか尋ねました。「教育サービス」では「登録した興味関心や趣味に基づいた提案」(15.7%)が最多で、「WEBやアプリの閲覧・利用履歴に基づいたレコメンド」は12.7%にとどまりました。
この結果は、学習者一人ひとりの理解度や習熟度に応じて、問題の難易度や学習内容をリアルタイムで最適化する「アダプティブ・ラーニング」が求められている現在において、生活者の期待に十分応えられていない可能性を示唆しています。
「インフラサービス」では「登録した家族構成やライフスタイルに基づいた提案」(10.1%)が最多でしたが、全体的に1桁台の回答が並び、パーソナライズコミュニケーション自体があまり行われていないことが明らかになりました。
このようなパーソナライズ意向と十分性の間にギャップのあるカテゴリにおいて、パーソナライズコミュニケーションを導入・強化すると、顧客に何かしらのポジティブな変化や影響を与えられると考えられます。ここからは、一体どのような変化や影響を与えられるのか?を考えます。
パーソナライズの光と影
生活者が自分に合ったパーソナライズコミュニケーションを受けると、どのカテゴリでも「新たな商品やサービスを知るきっかけ」「興味・関心を持つようになった」が高く評価される傾向が見られました。
中でも、「ファッション/美容」カテゴリでは「新たな商品やサービスの購入・利用したいと思うようになった」が高く(図4)、「教育サービス」カテゴリでは「利用中の商品やサービスを継続したいと思うようになった」が高い結果となりました(図5)。パーソナライズコミュニケーションは、企業視点ではクロスセルやサービス継続といったCRM/CX施策の目的の達成に寄与していると言えるでしょう。


一方で、生活者は、どのようなパーソナライズコミュニケーションを受けた際に不快に感じるのでしょうか。手法別に「不快に感じる」から「全く気にならない」の5段階で尋ね、ワースト2(不快に感じる、やや不快に感じるの合計)の合算を比較しました(図6)。

「一度だけ見た商品・サービスが繰り返し表示される」が最も不快度が高く、次いで「購入済み、もしくは返品した商品やサービスが何度もおすすめされる」「自分のライフスタイルと合っていない商品・サービスが提案される」と続きました。
一度見た、あるいは購入済み商品・サービスの度重なるレコメンドは、サイト訪問履歴や購買履歴をもとに実施するリターゲティング広告に起因する問題と考えられます。自分のライフスタイルと合っていないレコメンドについては、商品購入者をリストから定期的に除外するなど、細やかな運用によって防げた可能性があります。
また、ライフスタイルやライフイベントを誤認した提案は、企業がせっかくパーソナライズコミュニケーションを試みたにもかかわらず、データが最新でなかったことや、類似拡張(Look-Alike)精度が低かったことなどが原因で起きている可能性があり、大変もったいなく感じます。
「不快に感じる」「やや不快に感じる」と回答した人は10項目中7項目で半数を超えており、生活者が“失敗したパーソナライズコミュニケーション”に対して厳しい目を持っていることが明らかになりました。パーソナライズを行うのであれば、表示内容や頻度の最適化は必須条件と言えるでしょう。
では、生活者が望むパーソナライズコミュニケーションのあり方と、その実現方法はどのようなものでしょうか?