SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Autumn

データで読み解く

パーソナライズは求められている?サービスカテゴリごとに聞いた生活者の本音

生活者に望まれるパーソナライズコミュニケーションの実現方法

 生活者に、望ましいパーソナライズコミュニケーションを訪ねたところ、カテゴリによって結果は大きく異なることがわかりました。選択できる商品ラインナップが多い「小売業/モール系EC」や「ファッション/美容」では、「購入履歴に基づいた商品レコメンド」が最も高くなっています。他方で、こちらも選択できるコンテンツが多いはずの「エンターテインメント」カテゴリでは「登録した興味関心や趣味に基づいた提案」や「閲覧・利用履歴に基づいたレコメンド」が上位にあげられました(図7)。

【図7】生活者が望ましいと感じるパーソナライズコミュニケーション「エンターテインメント」カテゴリ(複数回答)
【図7】生活者が望ましいと感じるパーソナライズコミュニケーション(「エンターテインメント」カテゴリ・複数回答)

 各パーソナライズコミュニケーションを「何のデータ(行動データ/特殊な行動データ/登録情報/意識データ)を用いて最適化されているか」という観点で分類したところ、行動データによるパーソナライズを必ずしも求めているわけではないことがわかりました。「小売業/モール系EC」「日用品/日用雑貨」カテゴリでは行動データが優位でしたが、他のカテゴリでは登録情報によるパーソナライズを希望する声の方が多く見られたのです。

 さらに、「自分に合った情報や提案の実現のために企業に活用されてもよいデータ」について尋ねたところ、最も多かった回答は「どれも活用されたくない」で3割を超えました。次いで、「アンケートで回答した情報(=意識データ)」、「購入した商品履歴(=行動データ)」となり、上記の希望とは必ずしも一致しない結果となりました(図8)。

【図8】自分に合った情報や提案のために、企業に活用されてもよいデータ(複数回答)
【図8】自分に合った情報や提案のために、企業に活用されてもよいデータ(複数回答)

 パーソナライズしてほしいチャネルについては、「メール」や「WEBサイト・アプリ上でのレコメンド」といったデジタルチャネルへの期待が高いことがわかりました。電話や店舗、DMなどのアナログチャネルについては、パーソナライズを望む声は少ない傾向にあります。

 また、期待の高かったデジタルチャネルの中でも、パブリックなチャネル(サイト、アプリ、チャット、ソーシャルメディアなど)よりも、プライベートなチャネル(メール、メッセージ、アプリプッシュ通知など)の最適化を求める声が多く見られました(図9)。

画像を説明するテキストなくても可
【図9】生活者がパーソナライズを希望するチャネル(「小売業/モール系EC」カテゴリ・複数回答)

 これは、自身の興味関心に基づいた情報が、人に見られる可能性のある場で表示されることに抵抗を感じる生活者が一定数いることを示しています。今回の調査では尋ねていませんが、コミュニケーションを受け取るデバイス(スマートフォンあるいはPC)の違いも影響してくる可能性があるでしょう。

どのようなデータを用いてパーソナライズを実現するか?

 本調査をご覧になって、予期せぬ結果も多かったのではないでしょうか。日頃CRM/CXを担当されている方は、行動ログと向き合う機会が多いと思います。今回のアンケート結果を新鮮に感じていただけたなら幸いです。

 では、生活者が望むパーソナライズコミュニケーションは、一体どのようなデータに基づいて実現できるのでしょうか?多くの企業が活用している行動データだけでは、その期待に応えきれていないかもしれません。

 ファーストパーティデータである閲覧履歴や購買履歴などを統合・分析し、それらをもとに仮説を立て、パーソナライズコミュニケーションを実施し、その結果から最適化する。このプロセスを日々回している方も多いでしょう。

 理想を言えば、自社のファーストパーティデータ(主に登録情報と行動データ)だけでパーソナライズコミュニケーションを実現できることが望ましいですが、先進的な企業の取り組みを見ると、アプリやサイトを通じて蓄積された膨大な行動データに加え、人間のフィードバックを取り入れているケースが増えています

 たとえば、「Nike」アプリやファッションSNSアプリ「WEAR」では、サービス登録時にユーザーのファッション嗜好性をヒアリングし、レコメンドに反映しています。米国のパーソナルスタイリングD2Cサービス「StitchFix」でも、詳細かつ多くの質問を通じてユーザー理解を深めたうえで個別に最適化された提案をしていました。

 Googleの広告サービスでは、サイトやアプリから収集した行動データをもとにターゲティング広告を展開していますが、広告クリエイティブ単位やセグメント単位でユーザーからフィードバックを得る仕組みを提供し、それらを活用して最適化を図っています。

 「スシロー」アプリでは、来店客をジオフェンシングで識別し、来店後にアンケートを送信。店舗体験に関するフィードバックを適切なタイミングで取得し、商品開発や顧客体験の改善に活用しています。

 このように、パーソナライズの実現において、行動データだけに頼るのではなく、人間のフィードバックを取り入れるアプローチ(=バイオニック・アプローチ)が広がりつつあります。

 CRMは、顧客情報のデータベース化・システム化が始まりだったゆえに、行動データの活用に偏るのは自然な流れとも言えます。しかし、先進企業のバイオニック・アプローチには、今後のCRM/CX施策に活かせる多くのヒントがあると言えるのではないでしょうか。

調査概要

 調査主体:株式会社マクロミル

 調査方法:インターネットリサーチ

 調査対象:全国20~69歳の男女1,550人

 割付方法:人口構成比割付(令和2年国勢調査の性年代別人口比率に基づく)

 実施期間:2025年8月8日(金)~2025年8月10日(日)

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
データで読み解く連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

原田 俊(ハラダ シュン)

株式会社マクロミル
事業統括本部 事業企画部 CRM/CX事業ユニット長
2008年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社に入社し、広告配信システムのインフラシステムエンジニアとして開発・運用業務に携わった後、アドテクノロジーをはじめとする先端テクノロジーのマーケティングリサーチや、パーソナルデー...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/09/11 07:00 https://markezine.jp/article/detail/49776

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング