多様なデータ収集が可能な「Signals Gateway」とは?
――サイバーエースは、Metaのソリューション「Signals Gateway」を国内で初めて本格導入し、活用事例を創出しました。まずはどのようなソリューションなのか教えてください。
桑原:Meta広告でより効果的に広告配信を行うために、広告主は自社のデータをMetaに送信するために「コンバージョンAPI(Conversions API)」を設定する必要があります。企業や代理店が直接開発を行いコードベースでつなぐこともできますが、開発リソースや細かい仕様確認が必要になることから、実装期間が長期化する恐れがあります。そこで、コンバージョンAPIを簡単に設定するためのソリューション「コンバージョンAPIゲートウェイ(Conversions API Gateway)」を提供しています。それにアドオンする形で提供を始めたのが、Signals Gatewayです。

コンバージョンAPIゲートウェイは、カート追加や購入など、Webで発生した行動データの送信がメインの機能です。一方Signals Gatewayでは、Webだけでなく、オフラインやアプリのデータ、企業のファーストパーティデータなどを送れます。送り先も、Metaだけでなく、カスタムで目的地を設定できます。
また、Signals Gatewayより「Signals Gateway Pixel」という新しいピクセルを発行できるようになったことで、より豊富なデータ収集が可能になりました。

――海外では既に多くの成果が出ているのですか?
桑原:はい、多くの企業で活用されています。MetaピクセルとコンバージョンAPI連携に加えて、Signals Gateway Pixelを実装した広告主企業では、MetaピクセルとコンバージョンAPI連携のみを使用した場合と比べて、獲得単価(CPA)が平均23%低減しています。

サイバーエースがSignals Gateway活用を決めた理由
――サイバーエースは、Signals Gatewayのメリットをどのように見ていますか?
本多:コンバージョンAPIの実装方法はたくさんありますが、実装ツールによって精度がまちまちで、データ収集のクオリティが下がる可能性があります。コンバージョンAPIゲートウェイは実装のクオリティを担保できる一方、柔軟性の面ではまだ課題がありました。
その拡張版とも言えるSignals Gatewayは、「Signals Gateway Pixel」でよりリッチなデータを取得できることに加え、活用の幅を大きく広げるオプション機能が強みです。たとえば、ファーストパーティデータの本格的な連携やオフラインでのコンバージョン計測、BigQueryをはじめとする外部ツールとの高度な連携などが可能になります。
――今回、サイバーエースが国内で初めてSignals Gatewayを導入すると決めた理由を教えてください。
本多:Signals Gatewayを導入する理由は、まず現在のコンバージョンAPI計測をよりリッチなものにし、これまで取得しきれなかったデータまで捉えることで媒体の計測精度を向上させる、という直接的なメリットがあるからです。それに加え、将来的にはファーストパーティデータを活用した高度な計測環境を整えることも可能になります。
また、私たちのチームのミッションは計測の導入から活用までを支援することですが、特にファーストパーティデータの活用は、多くの企業にとってデータ基盤の構築など、依然としてハードルが高い領域です。その点、Signals GatewayはMetaが環境を提供することでそのハードルを下げてくれるため、私たちのミッションを推進する上で非常に強力なソリューションだと考えました。
国内でもCPAは44%の低下、CVRは20%改善を確認!
――サイバーエースが支援した国内での活用事例はどのようなものですか?
宍倉:2025年5月に単品通販業のお客様にSignals Gatewayを導入しました。この企業は元々コンバージョンAPIゲートウェイを導入し、計測の最適化を進めていました。驚くべきことに、その状態からSignals Gatewayを追加したことで、さらにCPMは30%低下、CVRは20%改善、CPAは 44%も低下するという結果になりました。

――Signals Gateway導入の手順についても教えてください。
本多:コンバージョンAPIゲートウェイを既に導入している企業であれば、追加でSignals Gatewayを設定します。未導入の場合はSignals Gatewayを設定することでコンバージョンAPIゲートウェイも導入できるイメージです。
手順としては、まず当社でSignals Gatewayのアカウントを作成します。クライアント側でご対応いただく作業は、Metaのサーバと連携するためのサブドメインを発行していただくだけです。媒体の連携や計測設計といった専門的な設定は、すべて当社にお任せください。
企業がデータ活用に向き合う際、必要なこととは?
――広告主の作業としてはサブドメインを発行すればいいのですね。とはいえ、Signals Gatewayを用いて成果を出すためには、ツール環境を整える以外のことも必要かと思います。広告主が対応すべきことはありますか?
本多:広告主の皆様に行っていただきたいのは、自社のファーストパーティデータの活用方針やプライバシーポリシーをしっかりと策定することです。Signals Gatewayの最大の強みは、このファーストパーティデータを活用した計測環境を構築できる点にあります。そのため、広告主企業にしかできないこの部分を整えていただくことが、成果を出す上で非常に重要になります。
また、生成AIの進化によって、データの取得や整理を自動化できるようになりましたが、そのデータを明確に説明できる形で保持していなければ、活用は難しくなります。自分たちがどのようなデータを持っているのかを、しっかりと理解しておくことが第一歩です。
ただ、データは活用しなければ意味がありません。どのようなデータがあり、それをどう広告成果につなげていくかという戦略設計を、当社も一緒に考えさせていただきたいですね。

――データへの向き合い方や活用方法を模索している企業もあると思います。
本多:プラットフォームから新しいプロダクトが出た際、その価値をいち早く見極めるのが代理店の介在価値です。特に近年は、「デジタル広告」と「ネットワーク」両方のドメイン知識、そしてそれを形にする「実行体制」が揃っていなければ、新機能を使いこなすことは困難です。このすべてを備え、スピーディに成功事例まで落とし込んで企業様にご提案できるのが、私たちの強みだと考えています。
宍倉:Cookieレス対策について課題を抱える企業は多いです。しかし「具体的にどのようなソリューションを活用すると解決できるか?」を説明できる企業は限られているように思います。一方、プラットフォーム各社は様々なソリューションを提供しています。この中で、支援企業がいち早く活用方法を設計し、クライアントに提案していくことが重要だと考えています。
データ専門チームがクリエイティブ偏重を防ぐ
――では、広告代理店として、サイバーエースの強みは何ですか?
本多:データを扱う専門チームがあることです。Meta広告は特に運用の自動化が進んでおり、クリエイティブ制作にリソースの重きを置いている代理店が多い印象です。しかし、当社はデータ活用にも力を入れ、独自の体制を作っています。社内の各部署が連携し、広告配信へのデータ活用をスムーズに実行できるのです。また、Metaとは以前から連携してクライアント支援に取り組んでいるため、そのリレーションとナレッジがあることも強みですね。
桑原:実行力とコミットメントの高さも、サイバーエースの特徴だと思います。Signals Gatewayの導入の際は、本多さんを中心に、Googleタグマネージャーの設定などを丁寧に対応してくれました。実は、細かい部分にも手が回る代理店は、そんなに多くありません。難しいことでも数日以内にキャッチアップしてくださいますし、実行力が抜群だと感じます。
また、チャレンジ精神も旺盛だと思います。新しいプロダクトは、正直「やってみないと分からない」部分があります。この点をリスクと考え、導入に二の足を踏んでしまう代理店やクライアントも少なくありません。サイバーエースは「まずはやってみよう」と取り組んでいます。そのフットワークの軽さは大きな強みだと思います。
宍倉:それはサイバーエースのお客様の素晴らしさでもあります。当社は成長企業・スタートアップ企業のお客様が多く、新しいことへの挑戦に意欲的な方も多いからこそ取り組めています。
データの量と質を高めることが今後の鍵
――今後、国内でもSignals Gatewayが普及すると、マーケティングはどう変わっていくとお考えですか?
本多:Signals Gatewayは業種・業界問わず成果を出せるソリューションだと考えています。活用が広がることで、Cookie規制によるデータ欠損をどう埋めていくか、という基盤固めだけでなく、収集したデータをファーストパーティデータと掛け合わせて価値を高めていくことが可能になるでしょう。
また、オフラインデータの統合・分析など、様々な機能があるので、従来はエンジニア任せだった作業も、アナリストやデータサイエンティスト、マーケターが担える時代になると考えています。サイバーエースはそのような環境を提供できるように、様々な事例をお客様と一緒に作っていきたいですね。
桑原:日本の広告主企業は海外と異なり、インハウスでデータ活用できる体制があまり整っていません。サイバーエースのように、データの重要性を理解し、啓蒙できる代理店が間に入ると、より高度なデータ活用もできるようになるのではないかと思います。
――最後に、Signals Gatewayの活用に興味を持った読者にメッセージをいただけますか。
本多:データ活用は、プラットフォーム企業と代理店の2者でできることではなく、お客様を巻き込みながら3者で進めていく必要があります。お客様の事業フェーズに合わせてサポートできる体制を構築し、実装までできるようにしています。お客様が思い描く未来を、一緒に実現していきたいと考えています。
桑原:自社のファーストパーティデータを活用するために、テクニカルなリソースがハードルになっているのであれば、Signals Gatewayの導入によってマーケティング効果の最大化を図れるようになるのではないでしょうか。たとえるなら、エンジンを回すためのガソリンがデータです。データの量と質を高めることが、広告パフォーマンスを高める鍵になると思います。