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【ニッセイ基礎研究所 解説】「共創」視点で再定義する「サステナブル・マーケティング」

数字で読み解く「ブランドの透明性の力」/社会貢献活動を報告・共有する時に求められるポイントとは

「誠実なブランド」という人柄の評価から得られるもの

 また、いずれの業種でも「誠実な」というブランドイメージが一貫して上昇している点は興味深い。

 「誠実さ」とは、企業の意図や姿勢、態度に対する印象であり、いわば人柄(パーソナリティ)のような評価である。マーケティング研究の第一人者フィリップ・コトラー氏は、ブランドイメージの中でも特に「誠実さや一貫性(Brand Integrity)」が、消費者の信頼や長期的なブランド忠誠を支える中核要素であると指摘している。

 さらに、誠実なイメージを持つブランドほど、顧客との長期的な取引やリピートへとつながりやすいとされる。先の経団連のデータが示すように、サステナビリティ経営を推進する上で、コーポレート・ブランディングが社会貢献活動の成果として位置づけられているのは、そのような事業上の成果を期待する側面もあると思われる。

透明性は「情報開示の量」ではなく「その姿勢」で変わる

 それではなぜ、社会貢献活動は、企業の「誠実さ」という印象を押し上げるのだろうか。その背景にあるキーワードが、ブランドの透明性(Perceived Brand Transparency)である。

 先行する研究によれば、ブランドの透明性とは「消費者が企業の情報を、自分の目で確かめられる構造」のこととされる。単なる情報開示ではなく「どのように見せるか」「どのように伝えるか」を含めたマーケティング上の設計思想であるとも言える。

 透明性を高める上で、次の3つの視点が挙げられている。

 このうち、最も重要なのが3つ目の「意図性」だ。たとえば、企業が単に情報を並べるだけでなく、「もっと知ってほしい」「きちんと説明したい」という姿勢を感じさせる時、生活者は情報そのものよりも「伝えようとする努力」に誠実さを感じる

 つまり、透明性とは「どれだけ情報を出したか」ではなく、「どのような意志で発信しているか」という、企業の姿勢の表れであると言えるだろう。

 たとえば、環境対応型の素材に切り替えたり、フェアトレード原料を採用したりすることは、必ずしもすぐに売上や利益を生むとは限らない。しかし、ブランド透明性の観点からすれば、それでも生活者がそこに誠実さを感じるのは、「自分たちに得にならないことでも社会のために行動している」という企業の「姿勢」を感じ取るからである、と読める。

 ここで注意したいのは、「誠実さ」という感情的な評価がそのままロイヤリティに繋がるわけではないということ。先の研究によれば、信頼は「誠実さ」だけでなく、その企業の「能力」や、その行動の「一貫性」が揃って成立すると言われる。誠実さが「この会社は正しいことをしている」という印象だとすれば、能力は「きちんとやり遂げられる力」、一貫性は「言動や方針にブレがない姿勢」を指すだろう。

 家電や金融など、もともと安全性や法規制遵守が前提となる業界では、すでに「能力としての信頼」がベースラインとして存在するため、社会貢献を訴求しても信頼が大きく上積みされにくい。一方、食品のように生活者の身近な商材では、企業の姿勢や日々の発信が安心感の源泉となりやすく、誠実さの向上が直接的に信頼形成へとつながっていく。

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この記事の著者

小口 裕(オグチ ユタカ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 准主任研究員

多摩美術大学 非常勤講師(消費者行動論)。消費者行動の専門家として、エシカル消費、サステナブル・マーケティング、地方創生を中心に研究・政策提言を行う。過去、20年以上にわたり、自動車、食品・飲料、デジタルコンテンツ、自治体などの多岐にわたる分野の消費者調査や研究に従事。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/12 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50070

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