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10年選手のデータ基盤を刷新!WOWOWが目指したのは「仕組み」「ガバナンス」「人」の進化

 DXの加速にともない、データ活用は企業の競争力を左右する生命線となっています。しかし、早期に取り組みを始めた先進企業ほど、過去に構築したデータ基盤の経年劣化がボトルネックとなっているようです。WOWOWもまたこの課題に直面し、約10年運用したデータ基盤の刷新に踏み切りました。MarkeZineでは、同社のデータ基盤刷新プロジェクトを率いたWOWOWの稲垣氏とDataCurrentの古田氏を取材。データマネジメントの考え方を取り入れた新基盤の構築・活用プロセスに迫りました。

10年選手のデータ基盤に生じた綻び

──WOWOWではデータ活用においてどのような課題が見えていましたか?

稲垣:データ基盤の経年劣化が課題でした。有料放送事業と配信事業を展開する当社では、2000年代半ばから会員データを活用した事業活動を行っています。2010年代半ばに構築したデータ基盤では、ユースケースの数に対して時間的・技術的な制約が多く、もどかしさを感じていました。

WOWOW デジタル戦略局 データマネジメント・ユニット ユニット長 稲垣 幸俊氏
WOWOW デジタル戦略局 データマネジメント・ユニット ユニット長 稲垣 幸俊氏

稲垣:旧基盤を更新するか、新しいデータ基盤を立ち上げるか。社内で検討した結果「事業貢献のためのデータ活用」を実現するためには後者が最善だと判断しました。

──旧基盤の問題点をもう少し詳しく教えてください。

稲垣:いくつかありますが、大きかったのは「データマネジメント」の考え方をシステムや運用に反映しきれていなかった点です。旧基盤の構築から約10年間、中長期的な見通しやガバナンスの意識が希薄なまま、都度発生する活用ニーズに応じてデータ基盤の機能を増やしてきました。その結果、構造が煩雑化・複雑化してしまい、ほとんどのメンバーが理解できない状態になっていたのです。

 新しいことを試そうにも、複雑な構造を紐解くところからスタートしなければならず、中にはせっかく紐解けても今の基盤では実現が難しいことが判明して終わるケースもしばしばありました。また、複数のBIツールが社内に乱立していたことも、データ活用の煩雑さを助長していたように思います。

古田:過去に構築したデータ基盤に、様々な機能をつぎはぎで追加した結果、使い勝手が損なわれてしまうケースはよくあります。システムだけでなく、組織文化など様々な要因が絡み合って生じる課題です。

DataCurrent 取締役COO 古田 誠氏
DataCurrent 取締役COO 古田 誠氏

目的ドリブンの進め方が成功の鍵

──今うかがった課題を解決するため、データ基盤の刷新に踏み切ったとのことですが、改革のパートナーとしてDataCurrentを選んだ理由について教えてください。

稲垣:大きく二つあります。第一に実績です。データ基盤の構築実績や、構築後の支援実績が豊富な点は魅力でした。基盤の構築実績だけを見ると、同じくらい豊富な企業さんもいらっしゃいましたが、その中でもGoogle Cloudの認定技術者が複数名在籍するなど、技術的な裏付けも決め手の一つとなりました。

 良好なパートナー関係を築けそうだと感じた点も、決め手の一つです。古田さんのお人柄やチームの機動力はもちろんですが、驚いたのは当社が提示したRFP(提案依頼書)の読み込みの深さです。当社にとってのベストを念頭に置きながら、我々の仮説に囚われることなく、違うものは「違う」と提案していただけました。我々の課題を深く理解いただいている安心感がありましたし、パートナーとして長期に亘って伴走いただきたいと感じられた点が最も大きかったと思います。

──データ基盤の刷新プロジェクトをどのように進められたのでしょうか? 流れを教えてください。

稲垣:2024年8月にプロジェクトがスタートしました。新しいデータ基盤のリリースは2025年6月25日です。DataCurrentさんのお力添えもあり、予定していたタイミングでリリースすることができました。

 最も時間をかけたプロセスは「新しいデータ基盤で何をしたいのか」を具体的にする工程です。我々の部門が中心となり、各部門のキーパーソンをアサインした上でデータ活用のユースケースを洗い出しました。やりたいことを実現するためには、膨大な数のシステムを連携しなければなりません。限られた期間の中で、DataCurrentさんには我々と同じ目線に立ってもらいながら、基盤の構築を進めました。

古田:ユースケースを抽出する際、10近い部門とのヒアリングに立ち会わせていただきました。通常は「どんなデータがあるか」「それをどう組み合わせていくか」という発想になりがちですが、WOWOW様の場合はユースケース起点で「何をしたいのか」を深掘りされていて。そのおかげで当社がWOWOW様のビジネスを深く理解することができたため、非常に良い導入だったと振り返ります。

DataCurrentだけがクラウド基盤の見直しを提案したワケ

稲垣:パートナー企業を決める際、ほとんどの企業からAWSベースで新基盤を構築するご提案をいただいていました。当社でもその方向で考えていたのですが、DataCurrentさんだけは「Google Cloudがベストアンサー」とおっしゃったんです。当社のやりたいことを踏まえて提案いただいたため、迷った末にGoogle Cloudを活用してリプレイスするジャッジに至りました。

古田:当社はAWSのパートナーでもあるため、クラウドやシステムの選定にあたってはあくまでフラットな立場であることをお伝えしておきます。WOWOW様の場合は、生成AIの活用を含めた長期的なロードマップを描いていらっしゃったほか、エンジニアのリソースを踏まえると基盤の開発・運用・保守を効率的に回す必要がありました。そこで、Google Cloudを活用したシステム構成が最適だと考えた次第です。

──プロジェクトを進めるにあたり、工夫したポイントはありますか?

稲垣:データ基盤を構築したことに満足して、活用や高度化が進まないケースは往々にしてあります。「基盤の刷新はゴールではなくスタート」と意識的に発信していました。

 また、旧基盤の課題として「データマネジメントの不在」を挙げたとおり、我々の部門が中心となってガバナンスを利かせる必要がありました。ただ、ガバナンスを利かせすぎると、やりづらさも出てきます。全体のバランスを見ながら「このリスクは許容できないから、前よりも使いづらさを感じるかもしれないけど、飲み込んでほしい」という具合にデザインしていきました。

構築後の成果を生み出す三つの活動

──一連のプロジェクトにおいて、DataCurrentが担った役割を教えてください。

古田:基盤を選定した上で、開発のところをお手伝いしました。各システムから基盤へのデータのつなぎ込みや、データの整形とBIツール/マーケティングツールへの接続などが我々の担った役割です。基盤の構築後は、データを実際に使う部門の伴走支援に加え、基盤の高度化を見据えたプロジェクトマネジメントという立場で関わっています。

──データ基盤の構築後も、成果創出のための仕組みづくりをDataCurrentが支援しているとうかがいました。具体的な活動内容をお話しいただけますか?

古田:「データマネジメントを推進する活動」「データを活用する部門の伴走支援」「データ基盤の高度化」これら三つを現在進行形で進めているところです。データマネジメントの推進については、基盤構築後の活用状況をモニタリングするとともに、活用がもたらす価値を可視化。トップラインの拡大や業務効率化によるコスト削減など、指標の設定から計測、アクションプランの策定を我々が支援しています。

 伴走支援に関しては、対象の部門を絞ってデータ活用のスピードを加速する活動をスタートしました。データ基盤を高度化する第一歩として、BIツールのダッシュボードに生成AIを実装しています。分析のスピードアップはもちろん、示唆出しの自動化などにもチャレンジするつもりです。将来的には機械学習を使って会員にフラグを立てるなど、今あるデータのリッチ化にも取り組みたいと考えています。

──データのリッチ化とは、たとえばどのような活動でしょうか?

稲垣:過去の視聴履歴から会員の趣味趣向をスコア化するような活動をイメージしています。

コスト半減!新サービスの会員データもスムーズに連携

──DataCurrentの支援について、特に「ここが助かった」「ありがたかった」と感じた点があれば教えてください。

稲垣:何もかもありがたかったですが、特筆すべきは人材のトレーニングにも力を割いていただけたことですね。事業貢献のためのデータ活用を実現するためには、データを活用する際の業務プロセスまで見直す必要があります。業務プロセスの見直しにあたっては「仕組み」「ガバナンス」「人」を三位一体で進化させる視点が不可欠です。

 DataCurrentさんとは、この三位一体の視点を揃えることができました。その上で、優先度が下がりがちな人のトレーニングにもリソースを割いていただき、トレーニング体系を一緒に検討しました。当社の目標を踏まえて「まずはこういうメンバーのこういうスキルを高めることによって、成果を創出するキーパーソンになってもらおう」という設計図を描けたのはありがたかったです。

──新データ基盤の構築から約半年が経ちました。現時点で見えている成果や変化はありますか?

稲垣:クラウドのコストはほぼ半減しました。乱立していた複数のBIツールを一つに集約したことで、こちらのコストも4~5割ほど削減しています。

 2025年度は新サービスをいくつか立ち上げたタイミングでもあったのですが、新サービスの会員データと既存サービスの会員データの連携もスムーズに実行できています。この点は非常に大きな成果です。

全社プロジェクトの旗振り役に求められる姿勢

──WOWOWにおけるプロジェクトの成功要因はどのような点にあったのでしょうか?

古田:稲垣さんが率いるデータマネジメント・ユニットの皆様が、強い責任感を持って推進されていたことが大きかったと思います。何せ全社のデータ基盤ですから、社内外のステークホルダーが多く、十数個のシステムと新データ基盤をつなぎ込む際は調整が大変でした。そんな中でも目的を見失わず、本質的な課題に目を向けていらっしゃったからこそ、プロジェクトがうまく運んだのだと思います。

古田:プロジェクトがうまくいかないケースでは、旗振り役を担う部門が自身の担当範囲を決めつけて、線引きしてしまうことがあります。しかし稲垣さんのチームでは、各部門の業務を理解するプロセスをしっかりと踏んでいらっしゃいました。全社プロジェクトをリードするお立場として、非常に理想的な姿勢を示されていたと思います。

──最後に、展望をお聞かせください。

稲垣:今年の6月に新データ基盤をリリースしてから、数多くの成果を生み出せているかというと、まだそこまでは至っていません。人材の育成には引き続き力を入れていきたいです。加えて、生成AIの活用も不可欠だと考えています。プロンプトを入力すれば、データの集計結果が出せたり、無秩序な数字から読み取れる示唆を要約できたり。そのようにして基盤を高度化し、データに苦手意識を感じる現場のメンバーにもファクトベースで業務に臨んでもらえる環境を整えたいです。

古田:伴走パートナーとして関わらせていただく以上、生成AIを含む最新の技術トレンドを常にキャッチアップし、クライアントに合った形で提供することが我々の使命だと考えています。今回構築したデータ基盤をWOWOW様が長く使えるものにするためには、ナレッジの蓄積が不可欠です。得られた成果や成功事例を全社に展開することで、特定の部門に閉じないデータ活用の推進をサポートしていきたいと思います。

「作って終わり」ではなく「継続的に活用される」データ活用を伴走支援!

DataCurrentは、CDP構築やデータマネジメントといった基盤整備にとどまらず、活用・運用・マーケティング展開までを見据えた“コンサル×技術”の統合支援を行っています。「データ活用をさらに前進させたい」「次の打ち手を相談したい」など、DataCurrentのサイトよりお気軽にご相談ください。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社DataCurrent

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/12/25 10:00 https://markezine.jp/article/detail/50187