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AIがフルファネル広告運用の“前提”になる日【Amazon unBoxed 2025】

 広告運用の前提が変わりつつある。2025年11月、ナッシュビルで開催された「Amazon Ads unBoxed 2025」では、広告プロダクトの刷新や新機能の追加だけでなく、「広告運用の構造そのものを変える」という明確な意思が示された。特にAIを軸にした運用の再設計が、今年のunBoxedを通して最も強く打ち出されたメッセージだった——。広告運用の実務と同領域の先端テクノロジーに精通するShirofuneの菊池満長氏が、Day 1/Day 2 の基調講演や主要セッションの内容を整理し、前後編に分けてレポート。前編となる本稿では、Amazon Adsがなぜ「AI × フルファネル」を強調するのか、そして日本の広告現場にどんな示唆を与えるのかを明らかにする。

Amazonが示す、フルファネル広告戦略

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Amazon Ads シニアバイスプレジデント Paul Kotas氏

 まず紹介したいのは「Day 1 Product Keynote(プロダクト基調講演)——AIが前提となる新しい広告運用の形」と銘打たれたセッション。ここでは、Amazon AdsのシニアバイスプレジデントであるPaul Kotas氏が登壇し、Amazonの広告事業全体を貫く「フルファネルを“誰でも扱える仕組み”へ変えていく」という方針が語られた。

 買い物・エンタメ・検索という広範な接点を持つAmazonだからこそ、このフルファネル全体をAIで統合し、広告主が抱える複雑さを取り除くことができるというのがメッセージの中心だった。

 Paul氏は、Amazonが保有するリーチ基盤の規模を改めて示した。広告付きPrime Videoは月間3億1,500万人以上にリーチし、認証ベースのIDにより米国の約9割の世帯を正確に認識できる。ここへストリーミングTV、オープンインターネット、Amazonストアでの購買行動データが結びつくことで、広告の上流から下流までを一貫して理解できる環境が整ったと説明した。

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Amazon Ads 米国代理店部門トップ Sarah Looss氏(左)

 そのうえで発表されたのが、「Full Funnel Campaigns」である。ブランド名とカテゴリ、予算といった最小限の情報を入力するだけで、AIがテレビ/動画/ディスプレイ/スポンサー広告まで含むフルファネル構造を自動生成し、継続的な最適化まで行う仕組みだ。従来、広告主は上流・中流・下流のプロダクトを自ら組み合わせて管理していたが、その複雑な作業をAIが肩代わりする。

 実際、βテストに参加したブランドでは、従来1時間以上かかっていたキャンペーンのセットアップが5分に短縮され、担当者が「もう終わりなのか」と驚くほどだったという。これは単なる作業効率化ではなく、広告運用の役割そのものを変える出来事だ。人間は「どのボタンを押すか」ではなく、「何を達成すべきか」という上位の判断に時間を使うべきだ、というメッセージがこのセッション全体を貫いていた。

広告主は「AIを使っているつもりになっている」

 続いて、「Streamlining campaigns for maximum impact(AIによる運用ワークフローの再設計)——統合コンソールとAds Agentが拓く新しいオペレーション」では、AIを活用した運用自動化とユーザー体験の刷新を担当するAmit Bhattacharyya氏(VP, Products)、およびMark Craig氏(Director, Demand Tech Experiences)が登壇。広告運用ワークフローの再定義を語った。両氏の説明は、広告主や代理店が日々直面する“作業過多”の課題をAIでどのように解消していくかに焦点が当てられていた。

 Amit氏は、現在多くの広告主が「AIを使っているつもりになっている」状況を指摘する。汎用AIでキーワード案を作ったり、軽微なクリエイティブ生成を試したりするだけでは、ブランド固有の成果改善にはつながらない。Amazon Adsが向かうのは“AI for everywhere”(誰でも同じAI)ではなく、ブランド固有のシグナルを読み込んだ“AI for you”であり、フルファネル運用全体をAIが理解して最適化する世界だと説明した。

次のページ
運用担当者の仕事は“作業”ではなく“設計”へ

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菊池 満長(キクチ ミツナガ)

大手ネット広告代理店に新卒で2006年に入社し、一貫して広告運用に従事。
緻密な広告運用をアルゴリズム化し、誰もが高い広告効果を得られるようShirofuneを2014年に立ち上げ。
2016年7月に国内No.1を獲得し、2022年までに国内シェア91%を獲得。
2023年から海外展開をスタートし、現...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/12/25 07:00 https://markezine.jp/article/detail/50266

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