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生活者データバンク

Jリーグのファンはどこで「熱狂」に変わるのか? 1万人調査×定性分析で解明する「没入の法則」

ファンの「文脈」を掘り起こす:コグニティブ・インタビュー×グラレコ

 今回の調査では、コグニティブ・インタビューに加えて「グラフィックレコーディング」という手法も組み合わせてコアファンになるプロセスを可視化した。

 コグニティブ・インタビューとは、警察が事件や事故の目撃者を尋問する際に、正確な証言をできるだけ多く引き出すためにアメリカで開発された手法である。「購入やブランドと接触した“経験”だけを切り離すのではなく、“文脈”も絡めて理解できる」「生活者自身の視点で、その“経験”がどう捉えられたのかを理解できる」という点で、効果的にマーケティングを行うためのカスタマージャーニーを捉える上で有効な手法と言われている。

 コグニティブ・インタビューは手法上、どうしても文字情報が多くなりがちであるため、「グラフィックレコーディング(絵として記録する)」との相性が非常に良い。グラフィックレコーディングとは、対象者が話をしている温度感(表情やジェスチャー)をグラフィックで書き起こし、話し手の空気感を含め記録できる手法である。

 絵があることで記憶に残りやすく、後日振り返る際にも「あの時のあれ」「そう、それ」の話でメンバーが同じものを想起するのに役立つ。

 絵として可視化されているため、「議論しやすい」「参加者の認識や理解度を揃えやすい」「全体像をつかみやすい」といった良さもある。

 2つの手法の良さを組み合わせて「Jリーグ接点~コアファン化」のプロセスを詳細に紐解きつつも、わかりやすいアウトプットで可視化した。

コアファンのジャーニー(共通項にみるファン化のプロセス)

 インタビュー対象となった3名は、それぞれ異なるJリーグクラブの熱いファンである。

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【図表3】対象者3名の温度感(表情やジェスチャー)も含め、インタビュー結果をグラフィックレコーディングで可視化。図の縦軸はクラブに対する気持ちの強さ、横軸はライフステージ(年代)、その変遷を曲線で示している。
調査実施:2025年10~12月
(クリックすると拡大します)

 彼らの幼少期から現在までの観戦・応援体験を詳細にコグニティブ・インタビューで紐解いていった結果、共通するプロセスが浮かび上がった。

 それは、「認知」「他者誘因」「感動体験」「定着」の4段階である。

1.認知

 幼少期からサッカーやクラブチームに接触することで、基礎的な好意が形成される。

 サッカースクールへの通学、学校でのW杯の話題、ゲームや選手名鑑を通じた情報接触などにより、「クラブを知っている」「なんとなく好き」という段階が構築される。この段階では熱量は弱いが、ルールや選手に自然と親しみ、サッカーを生活の中の話題として扱えるようになる(家で家族と、学校で友達と共通の話題にできる)ことが大事であり、将来的なコアファン化につながる第一歩となるはずだ。

2.他者誘因

 3名とも、初めての現地観戦は「誰かに誘われたこと」がきっかけだった。

 2名は親に、1名は友達に誘われてスタジアムへ足を運んでいる。いきなり1人で現地観戦に行くことは心理的ハードルが高く、「誰かと一緒に行く」ことが行動を後押しする重要な要因となっている。そして、この誘いが起点となり、スタジアムの臨場感や応援の一体感を体験することにつながり、その結果クラブへの熱量が一気に高まっている。つまり、「自分以外の他者が体験のきっかけを作る」ことで、ファン化のスイッチが入ったと言える。そういった構造を踏まえると、友人や家族・同僚を誘いやすくする仕掛けとして、招待券やペア企画は「最初の一歩」を後押しする有力な手段となるだろう。

3.感動体験

 コアファン化する直前に“強烈な感情を伴う体験”が存在する。

 裏を返すと、「強烈な感情が伴う体験」がファンからコアファンへ深化するタイミングなのかもしれない。鹿島アントラーズのリーグ優勝・ACL優勝、コンサドーレ札幌のルヴァンカップ決勝での敗北、浦和レッズの天皇杯優勝やACL制覇など、各自の経験は異なるものの、共通して「自分ごと化」が進む。「一緒に戦っている気持ちになる」「応援している人数が少ない時ほど応援にチカラが入る」「観客も含めて試合を作る」「相手にアウェイを感じさせる」「自分たちが願っていた選手が願っていたタイミングで得点し、奇跡的な勝利の瞬間に立ち会う」。自分の応援がクラブや選手のチカラになると実感することで、そのクラブに対する「自分ごと化」が生まれる。

4.定着

 観戦体験が生活の中に定着し、趣味を超えて日常・ライフワークとなる。

 「1日の中で何度もクラブや選手のSNSをチェックする」「クラブのホームページも1日1回チェックする」「サッカーメディアの記事もチェックする」「観戦に行けない時は動画配信での試合チェックを欠かさない」、こうした行動が試合の有無に関わらず習慣化されていくことで、クラブが生活の中心に組み込まれ、応援が“自分の一部”として確立されていく。そうした様子がインタビューを通してうかがえた。

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観戦頻度が高いほど、動機は「応援」一点に収束する

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この記事の著者

中川 大輔(ナカガワ ダイスケ)

株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 企画営業2部

2017年インテージに入社。家電業界を中心に耐久財メーカーのリサーチを支援。現在は、スポーツ・サービス・流通業界のリサーチを担当。専門統計調査士。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/01/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50302

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