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ブランドを「経営の核」に据えているか? レイ・イナモト氏から日本企業への問題提起

マーケターは経営の伴走役になれ

── 信頼構築が主軸になるとした場合、マーケターの役割はどう変わっていくのでしょうか。

 フライホイールを機能させるには、社内全員が同じ方向を向いている必要があります。ところが現実には、理念が経営層どまりで現場に届いていない企業が多い。だからこそ今後のマーケターには、CEOや社長の伴走役として、アルバイトのような従業員にまで理念を浸透させるインターナルコミュニケーションを担えるかどうかが重要になります。

画像を説明するテキストなくても可

 複雑な概念をシンプルに、わかりやすく伝える「どう言葉にするか」「どう浸透させるか」というマーケターの力が、まさにここで活きてくる。従来は人事の領域と思われていた部分ですが、マーケティングの視点でより上流から関われるはずです。

 以前、ある企業から採用難の相談を受けたことがあります。外部コミュニケーションの強化を求められましたが、ヒアリングを重ねると本質的な問題が見えてきました。「自分たちが何をしている会社か」が社内でさえ明文化されていなかったのです。採用担当者が候補者に説明しても「何をしている会社かわからない」と言われてしまう。何十年も続く大企業でも、こういったことが起きています。

 9〜12ヵ月かけてパーパス・ミッション・ビジョンを整理し直した結果、「採用がしやすくなった」という報告をいただきました。問題の本質は広報ではなく、存在意義が言語化されていないことにあったわけです。言語化はスタートラインに過ぎません。

 次に必要なのは、その言葉を組織全体に届け続ける「仕組み」です。ファーストリテイリングの社員育成プラットフォーム「FRフォワード(FR Forward)」はその一例です。世界中の店舗で生まれた知見、成功事例、店舗改善のアイデアを共有できるものであり、世界15万人以上の社員に理念を浸透させる仕組みです。

明日からできる一歩!開発部門とランチに行こう

── 最後に、現場のマーケターが経営目線や未来を見据えて、明日からできる小さな一歩を教えてください。

 1つ挙げるとしたら、部門を超えてプロダクト開発の方々とランチをすること。あくまでも例ですが、伝えたいのは、プロダクト開発に関わる部門の人との日常的なコミュニケーションが大切であるということです。

 以前、ある開発部の方が「電子レンジに入れると30秒で靴の形になる素材を開発した」と興奮気味に話してくれたことがあります。技術としてはおもしろい。しかし、それがお客さんにとって何を意味するのか、どう伝えるかという話になると、途端に難しくなる。ものが出来上がってから「これを売ってね」と渡されても、マーケターにできることには限界があります。

 日本はもの作りが得意でも、作る段階で「どういう文脈でエンドユーザーに届けるか」が考えられていないケースが多いものです。だから開発フェーズから関与して、最初から文脈設計ができればアウトプットは全然違ってくる。

 誰もがわかっていることですが、今後日本の市場は縮小していきます。大きな企業であればあるほど、グローバル市場で戦えなければ生き残れません。文化や言語を超えて伝えるには、プロダクト自体に文脈を宿らせる必要があります。文脈があって初めて、プロダクト自体がメディアとなって自ら魅力を語り始めるのです。──これが、ブランド構築の本質です。

 ブランド構築は経営課題であり、長期戦です。縦割りの壁を越えて隣の部門とランチに行く小さな変化が、やがて「ブランドのフライホイール」を力強く回す最初のきっかけになるのではないでしょうか。

『ブランド・シフト〜「信頼」で選ばれる時代の成長戦略〜』
レイ・イナモト氏の最新刊、『ブランド・シフト〜「信頼」で選ばれる時代の成長戦略〜』(東洋経済新報社)は、2026年5月19日発売予定です。

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この記事の著者

竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)

早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/04/16 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50319

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