「届けられない」もどかしさ。製薬マーケティングが抱える壁
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、シオノギヘルスケアの事業内容をお聞かせください。
吉田:シオノギヘルスケアは、医療用医薬品を中心に展開する塩野義製薬の子会社として、主にOTC医薬品(処方箋なしに購入できる市販薬)の開発・製造・販売をしています。製品の主軸は「スイッチOTC」と呼ばれるカテゴリーです。これは成分の安全性が確認された医療用医薬品を市販薬に転用したもので、具体的なブランドには皮膚疾患治療薬の「リンデロンVs」、かぜ薬の「パイロンPL」、鎮咳去たん薬の「メジコン」などがあります。
MZ:ドラッグストアやマスメディアで目にする機会の多い製品ばかりです。認知度も高そうですが、マーケティングにおいてどのような課題があったのでしょうか。
吉田:当社の製品、特に「スイッチOTC」は医療用医薬品をルーツにしているため、「名前は聞いたことがある」と思う生活者は多く、そもそもの認知度が非常に高いという特徴があります。そのため、各製品の発売当初はテレビCMなどを中心に「市販で買えるようになった」という事実を周知させることが最優先事項でした。一方、発売から数年経過した製品は、売り上げをさらに拡大していくために、「認知」の次のフェーズに進まなくてはなりません。単に広く知らせるだけでなく、その薬を本当に必要としているターゲットに絞って情報を届ける必要が出てきたのです。
打ち手として、2025年頃からデジタル広告の比率を高め、最適な出稿媒体を模索しています。ただ、医薬品のデジタル広告は、各プラットフォームや業界ガイドラインによって制限されている状況です。医薬品は人の身体に直接影響するため、広告が不正確だったり誇張されていたりすると、誤った自己判断から健康被害につながるリスクがあるためです。特定の症状に悩んでいるユーザーに対してピンポイントにアプローチしたいが、その手段がなかなかないというもどかしさを感じていました。
能動的な「検索」に応える。Ubie独自の「ターゲティング啓発」とは
MZ:前述の課題に対し、シオノギヘルスケアはUbieの「ユビーAdsタイアップ」を導入しました。症状検索エンジン「ユビー」および「ユビーAdsタイアップ」の概要を教えてください。
末次:症状検索エンジン「ユビー」は、ユーザーが自身の症状に関する質問に回答することで、関連する病気の可能性や適切な受診先を調べられるサービスです。そして「ユビーAdsタイアップ」は、昨今のセルフメディケーション需要の高まりを受け、疾患の啓発情報だけでなくOTC医薬品の情報も発信すべく生まれたサービスです。
「ユビーAdsタイアップ」は単なる宣伝ではなく、記事コンテンツを通じて製品の特性や正しい使い方を伝える「啓発」を第一の目的としています。そのため、誰にでもむやみに表示するような配信は行っておらず、症状がOTC製品の啓発対象に当てはまり、かつセルフメディケーションの選択肢提示も妥当と判断されたユーザーにのみ表示する「ターゲティング啓発」という手法を徹底しています。
MZ:非常に慎重に情報を届けるユーザーを絞り込まれているのですね。身体の悩みというデリケートな情報を扱うメディアとして、Ubieが大切にしている哲学はありますか。
末次:ユーザーの健康課題に対し、常に最適な解決策を提示することを基本思想としています。OTC医薬品はその選択肢の一つに過ぎません。「ユビー」では20問程度の症状やペインスケールなどの質問回答をもとに、ユーザーの状態を把握します。その結果、セルフメディケーションへの案内も妥当な場合にはOTC医薬品を選択肢の1つとして提示する、という振り分けを徹底しています。

他の医療系メディアでは、Webの閲覧履歴などからの「類推」でターゲティングを行うケースも少なくありません。しかし「ユビー」は、あくまでユーザーの能動的な回答や既往歴に基づくマッチングを行います。この「確かな根拠に基づく提案」こそが、私たちのこだわりであり独自性です。

