リサーチャーに求められる「創造性」と「N1の掘り下げ力」
千原:だからこそ必要なのは、調査の目的や背景を丁寧に確認し、「今回、どんな答えを出す必要があるのか」を明確にすることです。その上で「その答えを得るには、どのような聞き方が最適なのか」を、目的に応じて考えていきます。米田さんは「この設計のプロセスこそが、クリエイティブな作業なのだ」と説明されていました。

米田:リサーチには基本の型がありますが、毎回同じ聞き方を繰り返すと、「本当に売れるか」を見極める精度が合わなくなることもあります。同じ「購入意向」でも聞き方次第でスコアが変わる経験をした人も多いでしょう。
だからこそ重要なのは、「どの聞き方が実際の市場に最も近かったか」を後から検証することです。調査後に実際の売上と照らし合わせ、どの聞き方が現実を反映していたかを振り返る。その積み重ねで「このケースではこの聞き方が当たりやすい」という知見が蓄積されます。
リサーチの創造性とは、白紙から何かを生み出すことではなく、蓄積された型と検証をもとに、「当たりやすい設計」へと磨き込んでいくことにある。私はそう考えています。
千原:三つ目の気づきは「インサイト」です。勉強会でインタビュー調査について議論した際、米田さんが繰り返し強調されたのは、「聞きたいテーマにいきなり踏み込むのではなく、まず対象者の背景や価値観をきちんと理解するところから始めるべきだ」という点でした。
インタビュー後に発言を読み解く段階で、その重要性がよく分かります。どんな価値観を持った人が、どんな背景の中でその言葉を発したのかを結びつけて考えることで、発言の裏側や、その人の思考のイメージが一気に立ち上がってくる感覚がありますね。
米田:私は、実在する一人の人、いわゆるN1のストーリーの中に、多くのヒントが詰まっていると思っています。
たとえば「雪印コーヒー」を飲んでいる人がいたとして、その人がそれまで何を飲んでいて、なぜある日突然これを選んだのかを丁寧に聞いていくと、多くの示唆が得られます。そうした話を積み重ねると、「このスイッチをもう少し意図的に提供できれば、もっと売れるかもしれない」といったヒントにつながります。
「ビジネスに使える調査」にするために
米田:鈴木さんとは今、「朝食調査」を一緒にデザインしていますが、これについて聞かせてください。
鈴木:はい。弊社は、牛乳、ヨーグルト、チーズなど、朝食シーンと親和性の高い商品を多数展開しています。なかでも、2024年に発売70周年を迎えた「6Pチーズ」では、商品がもたらす価値を最も実感いただけるシーンとして“朝食”に着目し、「朝ごはんに、愛チ~ズ!」を合言葉に提案を強化しています。
忙しい平日の親子の朝食では、時間の制約から品数が限られ、パンだけになるご家庭も少なくありません。6Pチーズは、そうした場面で手軽に一品を加えることができ、「栄養」や「彩り」を補うだけでなく、「おいしく栄養が摂れる朝食を用意できた」という安心感によって親子ともにハッピーな気持ちで一日を始められる状態を生み出すことを目指しています。
こうした体験を日々の朝食の中で積み重ねていただくことで、「朝食に6Pチーズ」という選択を自然なものにしていきたいと考えています。

鈴木:そんな中、朝食を食べていない方が増えているという社会現象や、それが問題になっていることに目を向けました。「朝食を食べていない人は、どんな生活をしているのだろう」と疑問に思ったんです。
まずは「朝食そのもの」を理解する必要があると感じました。
米田:勉強会でのディスカッションから、どんな気づきがありましたか?
鈴木:米田さんに相談した際、「朝食を食べない人が増えているという社会現象をビジネスにつなげる調査にしたいですね」と言われ、ハッとしました。そうだ、ただ単に現状把握するだけでなく、ビジネスチャンスを見つけようと。そこでまず、マーケティング部内で記録調査を実施しました。
