「朝食」は食べていないと言いながらエナジードリンクは飲んでいる?
鈴木:当初は「朝食を食べたか食べなかったか」「食べた日は何時に何をどんなふうに食べたか」という調査を考えていましたが、米田さんから「ご本人が「朝食」と認識しているか否かにかかわらず、起床してから正午までに胃袋に入れたものをすべて記録してもらうのが良いと思うよ」というアドバイスをもらいました。その方法も、行動の記録として写真を撮ってもらい、そのときの気持ちも書いてもらう。そしてそれを、1日だけではなく1週間続けて記録してもらうというのをやってもらおうと。
そんな大変な調査はしたことなかったですが、まずは部内メンバーにお願いして、写真付きの行動記録を提出してもらったところ、私の中にあった「朝食」のイメージは、ガラッと変わりました。

千原:私自身もこの大変な写真付き行動記録調査に協力したのですが、自分の行動を記録する中で気づきがありました。無意識のうちの習慣として月曜の朝は通勤途中の駅で栄養ドリンクを飲んでいたことがわかったのですが、この記録を振り返って「自分って、月曜の朝は、気持ちを切り替えるために駅で栄養ドリンクを飲むんだなぁ」という自己分析が進みました。行動記録をしていなければ自分でも気づいていない習慣でしたし、これは仮にインタビューという形で言葉で質問されていたとしても出てこなかった話です。
米田:今回の鈴木さんの「朝食調査」のデザインは、私としてもクリーンヒットだったな、と思っています。「朝食を食べない人が増えている」という事象は、「朝食という習慣が失われている」「朝食という定義そのものの意義が薄れてきている」ということだと考え、それならば、調査をデザインする際に「朝食」という定義を外して考えることで新しい価値観が見えてくる、と仮説が立ちました。
たとえば「朝食は食べていません」と答える人でも、エナジードリンクは飲んでいたりする。その人の中では、テーブルできちんと食べるものだけが朝食なんでしょうね。こうした定義のズレを捕まえていくことで、新しい価値観を発見することができます。
「定義を疑う」「一度外してみる」というのは大事な視点です。よく「◯◯離れ」と言いますが、あのような現象の背景には、その定義がもう今の生活に合っていないということも多いものです。定義を少し広げてみると、新しいビジネスチャンスが見えてくることもあります。
もう一つ、鈴木さんのお話で重要なのは、「言葉で聞くこと」と「行動を記録すること」は必ずしも一致しないという点です。人は無意識で行動していますから、行動記録は本当におすすめです。
鈴木:実はこの記録調査、私自身も一緒にやりました。米田さんのアドバイスで、まず自分で1週間やってみて、書きやすさや続けられるかを確かめてから部内メンバーにもお願いしました。
また社内のN1飲食行動記録調査以外に、X(旧Twitter)も活用しました。「朝」「朝食」で検索すると、画像付きでリアルな行動が伝わってきますし、投稿時間から生活リズムも読み取れます。たとえば、朝に運動する人にも2つのタイプがあることがわかりました。空腹で運動してから食べる人(ダイエット志向)と、何か口にしてから運動する人(筋トレ志向)です。同じ「朝に運動する人」でも、目的・志向によって食事のタイミングや内容が異なる可能性が見え、非常におもしろかったです。
調査を生かして新たな提案へ
米田:お二人の今後の野望についてお聞かせいただけますか?
千原:社内に「消費者理解の大切さ」は浸透しつつあります。リサーチグループとしては、精度の高い情報を効率良く提供することを目指し、データの洞察や解釈の質を高めるための知識や技術を引き続き磨いていきたいと考えています。そうして社内の商品開発、事業部の方々と一緒にインサイトを掴み、新しい価値創造に繋げていきたいです。
鈴木:まずはこの朝食調査をやり切り、社会課題解決に繋がる新しいサービス提供につなげたいです。また、ブランドマネジメントを推進していく立場としてはやはり「お客様視点を捉えるプロフェッショナル」へと成長することも目標です。
AI活用の最新手法・技術も取り入れつつ、最終的な意思決定の拠り所としては「実在するお客様=N1」の行動にこだわり、“お客様ファースト”の視点をぶらさずに取り組みたいと思います。
米田:調査を基に、アクションまでつなげていきたいというお二人の思い、とても素晴らしいですね。今後の展開も楽しみにしています。千原さん、鈴木さん、今日はありがとうございました。
米田からの「インサイト活用」TIPS:リサーチの質を向上させるクリエイティブな捉え方
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調査前には必ず目的を明確化し成功基準(サクセスクライテリア)」を言語化する
――調査結果をどう判断し、どんなアクションにつなげるのかを最初に決める。 -
聞き方は一つではない。「現実に近いか」と「結果の使い道」で最適な測り方を選ぶ
――絶対評価・比較評価・棚想定など、目的に応じてクリエイティブに設計する。 -
当たり前の“定義”を疑う
――「朝食とは?」「◯◯離とは?」など、前提を一度外すことで新しい価値観と機会が見えてくる。 -
行動観察のススメ
――価値観・背景・行動の文脈を理解することで、言葉の裏側にあるインサイトが浮かび上がってくる。
