「町田を世界へ」地域密着型のサッカークラブ
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、プロサッカークラブ「FC町田ゼルビア」の概要についてお教えください。
文岡:FC町田ゼルビアは、1989年に社会人リーグからスタートし、2024年に日本のプロサッカーリーグ(Jリーグ)のトップカテゴリーであるJ1リーグへ初参入しました。ホームタウンである町田市は、もともと少年サッカーが盛んな地域です。クラブとしても地域に根ざした活動を続けてきた結果、子どもの頃からクラブを応援していた方が、今では家族でスタジアムに足を運ぶ光景が実現できています。そうした、地域密着型のクラブであることが大きな特徴ですね。
現在は、この地域密着の姿勢を大切にしながらも、「町田を世界へ」をスローガンに町田市外のファンにも裾野を広げることに注力しています。その一環として、ホームスタジアム以外での試合開催、具体的にはMUFGスタジアム(国立競技場)での試合開催などにも取り組んでいます。
FC町田ゼルビアのマーケティング部として、試合日のスタジアム集客やファンエンゲージメント向上を担当する。
MZ:クラブのマーケティングについてもお聞かせください。具体的には、SNS活用についてどのように取り組まれていますか。
文岡:SNSは、ほぼすべての国内主要チャネルを活用しています。たとえばInstagramやTikTokは選手のプライベートな一面を伝え、若年層を中心に「推し選手」を見つけてもらうツールとして活用しています。
一方XやLINEは、公式Webサイトと同じく試合情報やキャンペーンなどお知らせの発信がメインの役割となります。中でもWebサイトやXは、情報を欲しい層が目的を持って能動的に訪れるプラットフォームです。反対に、LINEはユーザーが受動的にコンテンツを受け取る場。それぞれのチャネルの特性を活かしながら、コンテンツや使い方を分けていますね。
認知はあっても接点がない……大規模集客後の継続的なコミュニケーションが課題に
MZ:まず、今回の取り組みに至った背景をお話しください。
文岡:クラブのLINE公式アカウントの友だち数が伸び悩んでいるという課題がありました。たとえばMUFGスタジアムでの試合では、大規模なプロモーションを行うことで多くの来場者を集めることができます。ただ、その後の継続的なコミュニケーションという点では、十分な接点を持てていませんでした。
Jリーグの試合を見るためのチケット発行には「JリーグID」が必要なため、来場者とつながる手段自体はありましたが、クラブとしてのコミュニケーションはメールマガジンが中心でした。しかし、メールは他の情報に埋もれやすく開封されないケースも少なくありません。もう少し、ファンにとって気軽に見やすい形で情報を届けられるチャネルでつながっていく必要があると考えていました。そこで、LINEに着目したのです。
MZ:そうした課題に対して、ユニークビジョンからどのような提案を行いましたか。
宮川:当社では、LINEを活用してユーザーが友だちへのシェアや招待を行うとインセンティブを得られる「LINEシェアキャンペーン」を複数の企業で実施する中で、成果につながっている実績が増えています。FC町田ゼルビア様の「LINE公式アカウントの友だちを増やしたい」という目的に対してもこのキャンペーン設計が効果的と考え、成果が高かった他業界の事例をもとに、施策を提案しました。
既存ファンの“お誘い”を起点に、新規層へリーチ!被招待者からも輪が広がる施策設計とは
MZ:実際に行ったキャンペーン設計について教えてください。
桑原:今回のキャンペーンは、既存ファンが友人や知人に試合観戦の“お誘いメッセージ”を送る仕組みで実施しました。ユニークビジョンが提供する「Belugaキャンペーン for LINE」を活用し、LINE上でのシェアから即時抽選(インスタントウィン)まで完結できる設計にしています。
具体的には、すでにFC町田ゼルビア様のLINE公式アカウントを友だち追加しているユーザーがキャンペーンサイトにアクセスし、LINE上で招待したい相手を選択します。すると、招待された側にメッセージが届き、送られたリンクから参加すると招待した側・された側の双方にすぐに抽選結果が表示されます。
桑原:なお、キャンペーンへの参加条件は、両者ともにLINE公式アカウントを友だち追加していることです。そのため、被招待者もキャンペーン参加にあたり、新たに友だちになっていただけます。
クライアントパートナーのチームに所属し、情報発信サービスや小売業界のクライアントを担当。今回は事業部を横断する形でプロジェクトに参加し、LINEシェアキャンペーンの実運用を担う。
宮川:このキャンペーン施策を2025年の8月と10月のホームスタジアム開催で2回、そしてMUFGスタジアムでの開催に合わせた1回の計3回、それぞれ約1週間の期間で展開しました。
このスキームの特徴は、被招待者としてだけでなく、招待者側も含めると、1人につき最大2回抽選のチャンスが得られる点です。既存ファンが友人や知人を誘う動機付けになることに加え、新たに友だち登録したユーザーが、抽選のチャンスを得るべく別の友だちを招待することを後押しできるのです。被招待者として抽選に外れてしまった場合でも、別の友だちを招待すればもう一度チャンスが生まれるため、結果的に友だちの輪が広がる仕組みになっています。
エンタメ領域を担当するクライアントパートナーのチームと事業企画チームに所属。SNSマーケティングソリューション「Belugaキャンペーン」の新たな機能の企画や取り組みを担当し、今回のプロジェクトではソリューションの企画提案などを行った。
宮川:キャンペーンの認知については、FC町田ゼルビア様側でLINE公式アカウントのトーク配信やメールマガジン、チャット内のバナー表示なども取り組んでいただきました。こうした周知施策を合わせて行うことで、既存ファンへのリーチを高め、キャンペーンへの参加と拡散を後押ししています。
LINE友だち数が1.5倍に増加!被招待者は約6割が新規友だちに
MZ:キャンペーンの成果を紹介いただけますか。
宮川:計3回実施した中で特に反響が大きかったのが、MUFGスタジアム開催に合わせて実施した回となり、5,000組を超える応募がありました。また初回の実施から回を重ねるごとに、応募数は右肩上がりで伸びていきました。
そして被招待者のうち、今回のキャンペーンをきっかけに新規でLINE公式アカウントに登録した方の割合は50~65%に達しています。一方、招待者側も30%前後が新規で友だち登録してくれました。JリーグIDは持っているものの、これまでクラブのLINE公式アカウントの友だち登録はしていなかった既存ファンとの接点を強められた意味でも、想定以上の成果だったと感じています。
先ほど、今回のキャンペーンでは招待する側・される側で1回ずつ抽選に参加できる設計と説明いたしましたが、被招待者として誘われて参加した方が、自身も招待する側になってキャンペーンに参加する割合も30%ほどありました。
MZ:クラブ側としては、どのような手応えを感じましたか。
文岡:LINE公式アカウントの友だち数は、前シーズン比で年間約1.5倍に増えました。今回の取り組みを通じて友だち数を大きく伸ばせたことで、LINE公式アカウントからの発信で一定のインパクトを出せる土台が整ったと感じています。
さらに、今回「お誘いキャンペーン」という伝え方でプロモーションをできた点は、クラブとしても重要だと感じています。一般的に、「観戦チケットが当たる」というインセンティブを前面に出した施策は、既にチケットを通常の手法で購入している既存ファンに不満を抱かせてしまう可能性があります。しかし今回は「ぜひ、親しい方を観戦にお誘いください」というメッセージ性を持たせることで、既存ファンにも「招待券のばらまき」ではなく「意図ある施策」として展開できました。
なぜLINEなのか?One to Oneプラットフォームが育む参加意欲と安心感
MZ:これらの成果につながった要因は、どこにあったとお考えですか。
桑原:Xなど、他のSNSでもシェア型のキャンペーンは実施できますが、今回はLINEで行った点が大きかったと感じています。LINEはクローズドなOne to Oneプラットフォームとなり、友だち同士のやり取りにユーザーは信頼感を抱きます。信頼している相手から招待が届くことで、「この人が誘ってくれたのだから、せっかくなら行ってみよう」と行動変容を起こしやすいことが、LINEならではの強みだと思いますね。
宮川:近しい関係性だからこそ「伝えたい」「誘いたい」という気持ちが自然に生まれます。この心理的な安心感は、LINEというプラットフォームの特性だと感じます。
また、従来のLINE施策は、友だち追加を条件に商品が当たるなど、どちらかといえば一方通行の設計が多くありました。今回のLINEシェアキャンペーンは、友だち同士のつながりを起点に拡散されていきます。友だちを増やしながら施策自体の認知も広がり、被招待者が次は招待側に回る。そうした循環が生まれる、新しいスキームだと捉えています。
文岡:一般的なインセンティブキャンペーンでは、どうしてもブロック率が高くなる傾向があります。その点、今回のLINEシェアキャンペーンでは、ブロック率の大きな上昇は見られませんでした。紹介してくれた相手が、もともと信頼関係のある友だちだったことが、定着につながった要因の一つだと見ています。
LINEを通じて、ホームタウン内外へクラブの熱量を発信
MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
文岡:今回の取り組みの結果、LINE公式アカウントの友だち数拡大という成果を達成できました。今後は、LINEを通して「誰に、何を届けるのか」をより細かく設計し、情報の出し分けをしていくことが求められます。
また、町田市内に向けたローカルマーケティングでは日常の中でFC町田ゼルビアに触れる機会を作りやすい一方、市外のファンに対してはまだまだ接点を持ちづらい面があります。だからこそ、LINEを活用しながら、FC町田ゼルビアの魅力や熱量をより広く、しっかり伝えていきたいです。
宮川:LINE公式アカウントの友だち数拡大においては、一層様々なお取り組みを今後もFC町田ゼルビア様と取り組んでいきたいと考えています。いずれは、JリーグクラブでLINE公式アカウントの友だち数トップを目指したいですね。
加えて、来場促進やユニフォームなどのグッズ販売、試合配信を行うDAZNの視聴チケットのクラブを経由した販売にも、当社が提供するキャンペーンの仕組みを役立てていければと思っています。
桑原:今回の取り組みを通じて、一人のファンの熱量が身近な誰かへと広がっていく可能性を実感しました。FC町田ゼルビア様は地域密着型のクラブ運営を大切にされているので、今後は地域限定の来場者向け企画など、スタジアムでのリアルな体験と連動したSNSキャンペーンにも挑戦できればと考えています。
ユニークビジョンとして、スポーツやJリーグ全体を盛り上げていけるよう、引き続き支援を続けてまいります。

