渋谷のトレセンから世界大会まで。スポーツとしての「場作り」
CX設計の柱となったのは、「スポーツ」という文脈に乗せることで初めて可能になる場とコンテンツの創出だ。アニメの主題歌、イベント、大会、デジタル施策まで、あらゆるタッチポイントで大人層の取り込みを狙った。
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その象徴的な取り組みが、渋谷で期間限定開設したトレーニングセンターだ。スポーツといえばトレーニングという文脈から着想し、ベイブレードが遊べる場所をスポーツ施設として展開した。
さらに、レスリング元日本代表・吉田沙保里氏を起用した「霊長類最強争奪戦」では、著名アスリートとのコラボという形でスポーツとしての文脈を強化した。
「スポーツという真ん中のアイデアがあるからこそ、『ベイブレードとして初となるトレーニングセンターを開設』というプレスリリースの見出しが作れました。スポーツだからこそ、吉田沙保里さんを起用したことに意味が生まれたのです」(小林氏)。
新シリーズは、グローバル展開も順調だ。玩具売り場での体験会や大会といった日常的なタッチポイントだけでなく、競技の頂点を示す世界大会も継続的に開催している。
2025年10月には「BEYBLADE X WORLD CHAMPIONSHIP 2025」を開催。本大会の予選には、世界21地域から総勢1万5,000名がエントリー。各地域の予選を勝ち抜いたプレイヤーが東京に集結した。子どもたちが憧れるスター選手を生み出すという、スポーツとしての生態系がここにも貫かれている。
「どこを切り取っても、ちゃんとベイブレードはスポーツになってるんだという文脈が世の中に回っていくことを意識してやっていました。タッチポイントを増やしても、切り取られた時に一貫したメッセージが届くことが大事です」(篠永氏)。
大人の割合が劇的変化!ブランドタグラインが子どもの「売り言葉」になった日
継続的な取り組みは、数字として確かな結果をもたらした。ローンチ時(第1世代)の大人と子どもの比率は、前シリーズの「7対93」から、BEYBLADE Xでは「70対30」へと劇的に変化。1年目には前シリーズ対比約3倍の売上増を達成し、2年目には出荷数10万個でヒットとされる玩具業界で500万個を突破。世界累計出荷は4,000万個(2025年9月後半時点)に達した。
数字だけではない。施策が最も浸透したことを実感したエピソードとして、篠永氏が紹介したのは玩具売り場での光景だ。子どもが親に向かって「これはもう遊びじゃないんだよ」と熱弁する声が聞かれるようになったというのだ。
「ブランドのタグラインが、子どもが親を説得するためのセールスワードとして機能していました。ブランドの言葉が生活者の言葉になるというのは、なかなか起きることではないですよね」(小林氏)。
今後の展望として篠永氏が語るのは、ベイブレードを「日本発の世界に誇るカルチャー」にするという構想だ。その一環として現在推進しているのが「BEYBLADE GO OUT PROJECT」。公園や施設でベイブレードを貸し出し、誰もが気軽に遊べる場所を全国に広げていく取り組みだ。代々木公園内のスポーツ施設でのスタジアム設置を皮切りに、全国各地への展開を進めている。
「オンラインでつながる時代に、オフラインでぶつかる喜びを。年齢、性別、国や地域を超えて届けていきたい」(篠永氏)
おもちゃをスポーツに、スポーツをカルチャーに。その挑戦は、まだ続いている。
