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MarkeZine Day 2026 Spring

MarkeZine Day 2026 Spring

花王のV字回復を支えた「組織変革」。戦略を絵に描いた餅にしない「共感と自走」のスクラムチーム体制とは

 長年の苦戦を脱し、鮮烈なV字回復を果たした花王のヘアケア事業。9年ぶりとなるシェア回復や数々のアワード受賞、そして変革の象徴である新ブランド「THE ANSWER」のヒットの背景には、「感情ニーズに基づく戦略」への転換があった。しかし、どれほど優れた戦略を描いても、それを実行する「組織」が変わらなければ成果は生まれない。本記事では、「MarkeZine Day 2026 Spring」に登壇した花王 山岡智弘氏の講演をレポート。戦略を「絵に描いた餅」に終わらせず、部署の垣根を超えた「スクラム組織」の組成や「サーバント・リーダー(支援型マネジメント)」を現場はどう実装したのか。「共感・自走・学習」をキーワードに、イノベーションを生み出すチームビルディングの全容を解き明かす。

花王ヘアケア事業の危機と、鮮烈なV字回復

 この10年、日本のヘアケア市場にはかつてない地殻変動が起きていた。新興ブランドが1,400円以上の「ハイプレミアム」商品を次々と市場に投入し、そのシェアを市場金額の40%にまで急拡大させたのである。対照的に、花王をはじめとする大手マスメーカーは、この変化の荒波に飲まれ、苦戦を強いられることとなった。

 苦戦の要因は、長年踏襲してきた「マス型」のビジネスモデルにあった。花王には、約70年の歴史を誇る「メリット」や、ブランドの柱である「エッセンシャル」といった強力なブランドが存在する。しかし、山岡氏は「歴史があるがゆえに変化に対応しきれなかった」と当時の状況を分析する。

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花王株式会社 ヘアケア事業部 ブランドマネジャー 山岡 智弘氏
2009年花王入社。「ヘルシア」・「めぐりズム」など、ヘルスケア領域ブランドで、国内外のマーケティングを担当した後、2022年より国内インバスヘアケアブランド(THE ANSWER、melt、MEMEME)のマーケティングに従事。

 同社のこれまでのヘアケア事業は、優れた機能や成分を前面に押し出す「シーズ発想」が中心だった。たとえば「メリット」はフケ・かゆみを防ぐ洗浄機能を、「エッセンシャル」はキューティクルをケアするダメージ補修を追求してきた。これらは心理学でいう「システム2(論理的・合理的)」に訴えかけるアプローチであり、理屈で理解して選んでもらうスタイルである。しかし、現代の消費者がパッと見て「かわいい」「良さそう」と直感的に感じる領域、すなわち「システム1(直感的・感情的)」のニーズを捉えきれていなかったのである。

 「機能やスペックでの差別化に偏っていたことが、お客様のシャープなニーズを捉えきれなかった原因です」(山岡氏)

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 年々シェアが縮小していくという深刻な危機を乗り越えるべく、花王は2024年に抜本的な事業変革をスタートさせた。変革の柱となったのは、以下の3点である。

花王ヘアケア事業変革のポイント
【1】新しい事業ビジョンの策定
【2】感情を軸にした「感性マーケティング」への転換
【3】全員で作り上げる「スクラム型の組織体制」の導入

 この挑戦は瞬く間に成果を生んだ。新ブランド「melt」や「THE ANSWER」の展開により、花王ヘアケア事業の売上シェアは9年ぶりに前年を回復。さらに「ベストコスメアワード」では、「THE ANSWER」がシャンプー・トリートメント部門で史上初となる総合大賞を受賞。同じく「melt」も同部門で2位にランクインしてワンツーフィニッシュを達成するなど、美容専門家や生活者から圧倒的な評価を獲得し、鮮烈なV字回復を果たした。

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新ビジョンと「感性マーケティング」でブランドの役割を再定義

 ここからは、この成果を生み出した変革のステップを紐解いていく。第一歩となったのは、個別ブランドの枠を超えた共通の「事業ビジョン」の策定であった。従来は、メリットはメリット、エッセンシャルはエッセンシャルといった具合に、ブランドごとに個別のアクションが取られていた。しかし、それでは事業全体としての力強い推進力は生まれない。

 そこで策定されたのが、「髪の生きる力を、人の生きる力へ。」という新事業ビジョンである。山岡氏はその真意を次のように明かす。

 「生活者にとっては髪の調子が良い時の気分と、悪い時の気分では全然違うのではないでしょうか。だからこそ、いかに髪の力を『人の生きる力』に変えていくか、というところに大きなチャレンジをしました」(山岡氏)

 このビジョンは、単なるスローガンに留まらない。全メンバーが向かうべき方向を一つにする「北極星」の役割を果たしたのである。その上で、人の感情を論理的に理解するための手法として「感性マーケティング」を導入。人の感情ニーズを「ハイエネルギー(解放)」から「ローエネルギー(快適さ)」、さらに「集団(つながり)」から「個人(社会的な向上)」までの軸で整理し、各ブランドの役割を再定義したのである。

 たとえば、新ブランドの「melt」は落ち着きたい時の「Comfort(優しさ・安心感)」を起点とし、一方の「THE ANSWER」は納得感を重視する「Balance(こだわり・調和)」を起点に据えた。

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 「『人それぞれのありたい髪を実現し、希望や活力に満たされた毎日へ』という役割をもとに、ブランドがどうワークするかにこだわりました」(山岡氏)

 このように感性を軸にブランドのポジションを再定義し、それをベースとして花王の技術力を掛け合わせることで、感情に働きかける「記憶に残る商品体験」と「本質的な髪の変化」を可能にする製品開発を進めていったのである。

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「バケツリレー型」から、共感と自走を生む「スクラム型組織」へ

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/03/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50514

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