「予算の財布」は2つ持つ?
肥田(ライフネット生命):月次で業績を開示する当社では、営業責任者として「今月の数字」を最大化できる施策に予算を投じたくなる──そんな誘惑に駆られるのも、正直なところです。短期の業績責任を果たしつつ、将来の成長を支えるブランド構築をどう両立させるか。その狭間で、常に健全な葛藤を抱えながら投資判断を心がけています。
リクルートさんは、こういった短期と中長期の予算配分のバランスをどのように捉えていますか。
仁賀田(リクルート):当社の考え方として、「予算の財布」を2つ持って運用しています。
1つ目は短期の売上目標にコミットするための予算です。年間計画を厳密に策定し、四半期・月次で進捗を管理しており、ROIなど効率指標を重視した媒体配分を行います。
2つ目は中長期の市場作りに向けた予算で、多年度の戦略を描き、必要となる投資アイテムを作成します。各事業から上がってきた投資候補を月次で審査し、有望なものに投資する仕組みです。こちらはROIで厳密に縛るのではなく、まず試してみて、効果が出たものを短期計画側に組み込んで売上目標を引き上げるというサイクルを回しています。
肥田(ライフネット生命):短期の売上にコミットする財布と、中長期のブランドや市場作りに投資する財布をそれぞれ設け、それぞれに最適な媒体配分を考えるということですね。これは事業問わず参考になる運用法です。
2026年度の予算配分、3社の展望は
肥田(ライフネット生命):ここからは、いよいよ2026年度はどのメディアにどうやって予算を振り分けていくか、というテーマに入っていきたいと思います。
当社の結論としては、「担当者の熱量」を重視したいと考えています。背景には私自身の経験があります。以前テレビCMの放映枠1本ずつの数値を徹底検証し、深く向き合うことで成果を出した実体験があるからです。
こうした傾向は、最近内製化したWeb広告でも好事例として見受けられます。かつては数値が振るわなかった媒体でも、熱意ある担当者が介在することで劇的に改善するケースは、以前も今も確かに存在すると感じています。数値以上に、その媒体にどれだけ真剣に向き合える人がいるか。それが最終的な成果を左右するカギを握っているのかもしれません。少しアナログな結論ですが、データや仕組みだけではどうしても再現しきれない領域が、どこかにあるのではないかと考えています。
仁賀田(リクルート):2026年は、これまでの様々な取り組みをいったん見直し、より多くのお客様との接点を効率的に持つための再構築に着手していきたいです。これは、これまで自分たちで築き上げてきたマーケティングプロセス自体を一度壊すことでもあります。
数年先を見据えながら、どのようなフローで動かすのか、どんな人材で回すのか、そして何を内製化し何を外部に委ねるのか。2026年はそれを見極める1年にしていきたいです。
村田(ネスレ日本):引き続き2025年の基本方針を踏襲しつつ、新しいチャレンジを意識的に取り入れていきます。媒体環境や消費者行動は半年~1年でも大きく変わるため、前年の施策をそのまま継続するだけでは不十分だからです。
たとえば、昨年から本格的に取り組みを始めているリテールメディア施策は今期もホットトピックになると考えています。当社では、リクルートさんのように財布を厳密に分けているわけではありませんが、チャレンジ枠の予算を社内合意のもとで確保しています。熱量を持って提案し、結果をしっかり共有することで、継続的な新規チャレンジをしていきたいです。
