AEOへの対策、自社は時期尚早?それとも手遅れ?
本連載の第3回では、AEOの具体的な施策イメージとして、自社サイト内部のテクニカルな改修だけでなく、外部サイト上の言及をコントロールする重要性や闇雲な着手を避けて課題ベースで取り組むべきである点を解説しました。
第4回となる本記事では、多くの責任者・マーケターが頭を悩ませる「投資対効果(ROI)」と「取り組みの段階(フェーズ)」に焦点を当てます。
「AEOが中長期的に重要なのはわかった。しかし、まだ売上の柱になっていないチャネルに、どこまで本気で予算とリソースを割くべきなのか?」「時期尚早ではないか? あるいは、もう手遅れなのか?」こうした経営層や現場の迷いを払拭し、トレンドに流されずに自社の状況に合わせて着実にAEOを進めるためのステップを紹介します。
AEO投資の前提整理:まだ売上寄与度が大きいわけではない
具体的なステップに入る前に、AEO投資における「期待値」と「リスク」の考え方を整理しておきましょう。
結論から申し上げますと、足元での圧倒的な磨き込みは「先行投資」にあたり、短期的な売上リターンに必ずしも直結するとは言い切れません。
AEO推奨率向上と売上のタイムラグ
仮に今、AEO施策を完璧に実行し、ChatGPTなどの対話型AIからの「推奨率(自社がおすすめされる確率)」が劇的に向上したとします。しかし、それが即座に売上の急増につながるかというと、そうではありません。なぜなら、消費者の行動変容には時間がかかるからです。
比較軸の整理や実際の商品の比較検討を対話型AIとの会話で完了させる「AI型購買行動」(詳細は本連載の第1回を参照)をとる消費者数はまだごく少数で、これから時間をかけて増加していくことが予想されます。そのため、推奨率を高めても、実際の売上として数字に反映されるまでにはタイムラグが発生するのです。
また、現状のツールでは「対話型AIでどのような内容がどのくらい会話されているのか」という、SEOでいうところの「検索ボリューム」を正確に取得する方法が存在せず、かつAIで認知を獲得した後の「指名検索」などの間接効果の計測も難しい状況です(詳細は第2回を参照)。そのため、厳密なROIを算出することが極めて困難な状況にあります。

ブランドセーフティの毀損によるマイナス影響
「ROIが見えないなら、まだ着手しなくていいのでは?」そう考えるのは、攻めの投資(アップサイド)の観点では合理的だという考え方もあるでしょう。しかし、AEOにはもう一つ、「対話型AIに誤った情報や不本意な文脈で紹介されることによる、実害とブランド毀損」を防ぐ「ブランドセーフティ(守り)」という非常に重要な観点があります。
誤情報による「実害」とマーケティングフローの崩壊
AIは、事前学習した知識やWeb検索などで取得した外部情報をもとに、確率的に文章を生成する仕組みのため、悪意なく「嘘」をつくことがあります(ハルシネーション)。たとえば、以下のようなケースが実際に起こり得ます。
- 連絡先の誤り:カスタマーサポートの電話番号が誤って表示され、今すぐ相談したいHOTユーザーが連絡できずに離脱する。
- 古い情報の提示:既に終了したキャンペーンや旧プランの価格が表示され、問い合わせ後にトラブルになる。
これらはマーケティングフローの「穴」となり、本来獲得できたはずの顧客を逃すだけでなく、現場の対応コストを増大させます。
「不本意回答」によるブランド毀損
さらに怖いのが、自社のブランドイメージが歪められるリスクです。「高機能・高品質」を売りにしているのに、AIがWeb上の安易な比較記事を参照し、「とにかく安いのが特徴」と紹介してしまったらどうでしょうか。自社の思想とは異なる見解が、あたかも「客観的な正解」であるかのようにAIによって語られることで、築き上げてきたブランドイメージが損なわれる可能性があります。
つまり、AEOに取り組む本来の意義は、売上アップ以前に「AIという新しいインフラ上で、自社の情報が正しく管理されている状態(ブランドセーフティ)を保つこと」にあります。 これはマーケティング投資というより、広報やリスク管理に近い「衛生要因」として捉えるべきでしょう。
