若手のモチベーションや能力を壊さない業界・組織であってほしい
藤平:最後に、この業界で働く20~30代へのメッセージをいただけると嬉しいです。
菅野:この業界で出会う人たちは、年齢問わず、「いい仕事をしたい」「手元の案件をもっとよくしたい」というモチベーションで、誰に言われるからではなく自分で努力を重ねる人が多い。虎ノ門広告祭なんて、仕事に関する勉強の場に高いチケット代を喜んで出してみんな来るわけですから。だからこそ、虎ノ門広告祭は、仕事を心底楽しんでいて、意欲の高い人のために意味がある場にしたい気持ちが強いです。

一方で、個々のモチベーションが高いだけに、時代に合わせた能力の伸ばし方については悩みも深いんだろうなとも感じています。たとえば、昔より、若手向けのコンペとか多いじゃないですか。なんだか受験勉強みたいになってきたな、大変そうだなと思って見ています。実務では、優れたアイデアを出すことは大前提ながら、それを適切に社会に実装していくことが一番難しく大事だったりする。アイデアコンペにはそこがないですし。若手の限られた大事な時間をどう意味あることに割くように導いてあげられるか、も問われていますよね。
だから、若手に対して期待するというより、彼らのモチベーションや能力を壊さないようにしてほしいなと思います。これは、あらゆるステークホルダーに対してですね。「どうかいい仕事をできるようになりたい」と祈るような気持ちで頑張っている人たちの力をちゃんと活かせる業界や組織であってほしいという気持ちのほうが強いです。そのモチベーションにこたえることが、結果、将来経済がよくなることに貢献し、社会が良くなっていくことに繋がると信じています。
藤平:ありがとうございます。「広告産業のパーパス」というお題でしたが、私個人のCDとしての悩みにオーバーラップする部分も多く、大変貴重な時間でした。今年は現地に伺いたいと思っているので、虎ノ門広告祭、楽しみにしています!
菅野:藤平さんもまだ30代でしょ。クライアントと対峙することに徹底しているうちは大丈夫ですよ。クライアントのために、社会のために、目の前のすべての仕事を全力でいいものにしていく——今はそれに集中できる時期じゃないですか。これから先どんなキャリアを選ぶにしても、今はめちゃくちゃいい仕事をするしかないし、それが一番楽しいでしょう。
藤平:10年以上前の新人研修で習った「キャリアドリフト(環境や偶然のチャンスに身を任せ(漂流し)、しなやかにキャリアを形成する考え方)」を思い出しました。外部環境も産業もドリフトする中で、変に主語を大きくし過ぎずに、明日のプレゼンをまずは頑張って、まだ見えない新しい景色がある場所にドリフトしていきたいです。今日はありがとうございました。
広告産業のパーパス:藤平の仮説キーワード(2026年5月時点)
1%の「ブレイブな非合理さ」
- 非合理な1%を味方にする
- 企業・生活者・社会が「喜ぶこと」
- 衰えゆくタンパク質のクリエイティブな生存戦略
- 話して考えてドリフトする
