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【西口一希氏特別連載】マーケティングは何のため?仕事に活きる“OS”を学ぶ

やみくもに「売上」を追うと赤字になる? 財務視点で解き明かす「良い売上、悪い売上」

短期KPIがマーケターの視野を狭くする?

MZ:シェア拡大のために、赤字でもユーザー獲得に集中することもあるのではないですか?

西口:もちろん、戦略として意図的にそうする局面もあります。ただし、それは「将来、利益として回収できる」という前提があってこそです。回収の目処が立たない投資は、ただの「浪費」です。新任者だけでなく、ベテランの方や経営者でも、この誤解に気づかずに短期の売上に執心することは少なくありません。

MZ:なぜ、ベテランや経営者でも、短期的な視点になってしまうのですか?

西口:それは、組織の評価期間が短すぎるからです。月次や四半期の目標達成だけを評価の軸にすると、どうしても「今すぐ数字が出る施策」に走らざるを得なくなります。これは組織の構造的な問題であり、現場のマーケターだけの責任ではありません。

MZ:ただ、組織の中で、新任者が「中長期」を主張するのは難しいと思います。何か策はありますか?

西口:データを使って、論理的に「悪い売上」のリスクを示すことです。「今回の安売りで獲得した層の継続率は〇%しかありません。このままだと半年後には赤字が累積します」といった客観的な事実を提示するのです。

MZ:数字で示すわけですね。

西口:そうです。短期的な売上を作ることは否定しませんが、「中長期の利益」を損なっていたら意味がありません。時間軸の視点を持つだけで、提案の質は劇的に変わります。

MZ:「今の数字」と「未来の資産」を両立させる、バランス感覚が必要なんですね。

西口:はい。上司に「数字を上げろ」と言われたとき、それが将来の利益を毀損していないか、財務的な裏付けを持って考える。たとえば「今回の施策で獲得した顧客のLTVを追跡させてください」という提案を添えるだけでも、プロとしての評価は変わります。

「売上」ではなく「利益」を見据えたマーケティング

MZ:マーケティングというとクリエイティブなイメージがありましたが、お話をうかがうと、財務とのつながりが非常に深いと感じました。

西口:そうですね。宣伝予算をいくら使ったか、というコストの視点ではなく、その投資がどれだけの「将来利益」を生み出すか、資産運用の視点を持ってください。そう考えると、私が常々申し上げている「マーケティングは『経営』そのもの」という意味合いも、少し実感いただけるかと思います。

MZ:新任者でも、マーケティング費用をコストではなく「投資」と考えると、仕事への意識は変わりますか?

西口:もちろんです。私はよく「マーケターはPL(損益計算書)だけでなく、BS(貸借対照表)とキャッシュフローも意識すべきだ」と話しています。ブランドの信頼や顧客の継続性という「目に見えない資産」を積み上げた結果、財務諸表が健全になる。これがビジネスの本来の姿です。

 マーケティングの目的は、派手な広告を打って短期的な売上を立てることではなく、より多くのお客様に価値を受け入れていただき、長く顧客でい続けていただくことです。

MZ:そのような視点を持つと、自分の役割の捉え方も大きく変わりそうです。

西口:特に中小企業で経営者と距離が近いなら、経営者と同じ言語で話せるようになると、予算獲得の交渉もスムーズになります。クリエイティブなひらめきも重要ですが、それを「いかに持続的な利益に変換するか」という思考こそ、一流のマーケターへの道に欠かせないことだと思います。

MZ:ありがとうございます。次回は、その「良い売上」をもたらす顧客をどう可視化するのか、顧客分類のフレームワークを詳しくうかがいます。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/12 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50677

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