市場が縮小のコミック業界での「コミックナタリー」のチャレンジ
ナタリーを運営する株式会社ナターシャの大山卓也社長によると、これまでインターネット上のコミック情報サイトは、個人サイトベースのものが多く、企業サイトはなかったのではないかという。つまり、企業が、事業として、刊行元の出版社と情報提供などで連携した形で運営されるコミック情報サイトとして、これまでにないチャレンジになる。
これは、コミック市場全体が1990年代半ばまで長期にわたって順調に右肩上がりを続けていたため、メディアに対してプロモーションやパブリシティの労をかけるという手法そのものが業界になかったこと。また、音楽の世界ならば、例えばオリコンのように、紙媒体がベースとなってネットの情報サイトが運営されるケースがあるが、コミックでは連載されるコミック誌そのものがメディアであり、ベースとなるコミック情報誌が音楽情報誌のようには存在しなかったこともあるという。
しかしコミック業界は、単行本こそ持ち直しているものの、コミック誌は1995年をピークに売上を減らし続けており、従来のコミック誌の連載で存在を広く知らしめて、単行本の売り上げで回収するというビジネスモデルが成り立たなくなってきている。一方で、新規参入の版元もあり、情報量そのものは増加する傾向がある。
そこで、拡散するコミック情報のハブとして「コミックナタリー」が期待される。期待されるのだが、これまでに前例がないだけに、果たして出版社と良好な関係を築いていくことができるか、どのような記事が読者に必要とされているのか、そして何よりコミック読者そのものが情報サイトを利用してくれるのかどうか、などなどすべての面がチャレンジとなる。
ビジネスモデスは二次配信と広告掲載
ビジネスモデルとしては音楽ニュースサイト「ナタリー」と同様に、ポータルサイトなどに記事の二次配信と広告掲載となる。担当取締役の唐木元氏は「おもしろくなる気はするが、回る気はしない(笑)」とビジネスにやや不安をのぞかせつつ、「音楽はモデルがあったが、コミックは未知数だ。明確な勝算がないからこそ、開拓していく必要がある」と前向きに語っている。
「コミックナタリー」では、日本国内で発売されるコミック(マンガ)の新刊情報、イベント、メディアミックス情報などを、ニュースとして毎平日に発信する。ファン目線でニュースを自社配信してユーザーの支持を得ている音楽版ナタリーの経験を活かして、コミックファンが必要としている情報を、ナタリー社内でニュース記事化してタイムリーに届けるとしている。