2009年、広告主は何を意識し、実行すべきか
── 今年は、マーケティング予算の削減が進むと思いますが、その中で広告発注側の企業は、何を意識していくべきでしょうか。
当然、より少ない予算で販売の最大化を目指していかなければならないでしょうから、まずは、現在自社の商品・サービスを購買している人たちがどのような人たちなのかを理解することが大切です。それに加えて、新たなターゲットとしてどのような人たちを選ぶのかを、検討しなければならないでしょう。つまり、売りやすい人たちを理解することで、少しの広告費の増加で最大限の効果をあげるということです。A/Bテストなどの施策を行い、結果をより重視した、予算配分が必要になるでしょう。
── オンラインマーケティングの活用は、欧米の方が一歩進んでいると感じますが、欧米の広告主と日本の広告主では、何が違うのでしょうか。
組織と人材に大きな違いがあります。大手の欧米の広告主にはCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)というマーケティング活動全般を見ているトップが存在するケースが多いです。広告・PRから販促、場合によっては営業もCMOの管轄に入っており、マーケティング投資に対する効果を全体的に見ることができたり、広告キャンペーンと店頭での販促を統一させたりということに力を入れています。日本の組織では宣伝部と販促・営業が別々のケースが多く、販売傾向から広告キャンペーンを立案するなど、投資対効果が明確になっていない傾向があると思います。
また、欧米の広告主のマーケティング担当者、広告会社のスタッフ、マス/ネットメディアのスタッフのほとんどは、マーケティングスキルやメディア開発を自分のスキルとして考え、その業界の中で転職しながらキャリアを積んでいきます。それに対して日本の企業では、社内での異動が多く、必ずしも専門職としてキャリアを積めるわけではないと思います。これにより各業界での知見が、広告主になかなかたまらないということが起こっているようです。広告会社から広告主に転職するケースはよく見られますが、逆はほとんど見かけないですね。つまり、広告会社は商品販売についての知見は薄いということになります。今後、業界構造が変化していくことで、業界内での人材の流動が活発になる可能性はあると思います。
── 少ない予算で、最大の効果を出すにあたって、今年、広告主が注目すべき広告サービスは。
代表的な例を挙げると、mixiがmixiplatformを発表し自社サイトのオープン化を進めています。他のソーシャルメディアでも同様の流れがあり、これらの動きが加速すると現状のターゲティング広告よりも、よりターゲットを絞った広告掲載などが可能となるでしょう。また、海外では、様々な広告配信ネットワークが立ち上がり、普及しつつあります。日本においても、広告枠の購買の効率化や、様々な広告配信ネットワークを利用し、よりターゲティングを意識した広告出稿に注目が集まるのではないでしょうか。これらの動向については、9月にad:tech Tokyoが開催されるので、そこで、日米欧のオンライン広告環境の似た部分、違う部分などが議論されると思います。
2009年、広告代理店はどうすべきか
── 同様に、広告代理店にとっても厳しい1年になると思います。
そうですね。広告主のニーズは販売促進によりシフトするので、販促活動やダイレクトレスポンス、または商品やブランド認知がある人たちを購買行動に促す必要があります。つまり、ターゲットの関心・興味を高めるような企画を提案していく必要があるでしょう。また、予算が効率的に使われているかどうかを示す必要がますます出てくると思うので、効果を示す指標をクライアントに対して、継続的に提示していく必要性が高まると思います。
── その流れは、欧米においても同様だと思いますが、欧米の場合はどのような対策をとっているのでしょうか。
すでに、欧米の広告会社は、メディアコミッションを大きく下げ、時間フィーを加えたものになっています。それに加え、広告主の売上やサイトトラフィックの増加など、パフォーマンスをベースにした報酬制度を導入したり、場合によっては広告主と共同で商品開発を行いその売上・利益の一部を手にするという形態を取っているところもあります。
昔のように、広告予算がブラックボックスであった時代が終わります。広告会社が提供するサービスの価値を検討し、正当に評価する、という動きは加速するのではないでしょうか。
── メディア環境の変化に、不況が重なり、広告業界は試練の年になりそうですね。最後に、2009年度に業界全体に関わるよな、大きなトピックがあるとすれば、何があると思いますか。
米Yahoo!、AOLの行方が大きなニュースになるでしょう。ひょっとすると投資会社などが買収し、その中で検索や広告ネットワークの部門だけをマイクロソフトへ売却…という動きが出てくるかもしれません。また、マスメディア企業の倒産・統合、広告会社の統合など、業界再編の動きは加速すると思います。今後は、Googleも大きく成長することは難しく、他社を買収することで成長する戦略に切り替わるのではないでしょうか。
── ありがとうございました。