CMSについて様々な視点から検証
このイベントでは、CMS導入のステップが「設計」「構築」「運用」の3つのフェーズに分けて論じられた。単にCMS製品を購入してサイト構築するだけでなく、その前後の準備や運用の段階も同じだけの時間を割いて解説していたのは、企業担当者にとってかなり有益だっただろう。また、設計フェーズでは導入を決めたウェブ担当者と制作サイドがそれぞれの立場から、構築フェーズでは制作担当者による解説、運用フェーズでは導入事例の紹介と、段階に応じてプログラム構成も工夫されていた。3時間強ながら、設計および構築のノウハウだけでなく、事例やパネルディスカッションまで密度の濃い導入セミナーとなった。
設計フェーズについて
ステップ1では「設計フェーズ」として、CMS導入を検討し発注する過程が議論された。
設計フェーズで行うべき5項目
CMS導入について書籍やウェブでの執筆活動も行っている清水誠氏(楽天株式会社編成部)が「CMS発注のコツ」と題して、設計フェーズで行うべき5つの事項を以下のように解説した。
- 目的とスコープを明確化
CMS導入の目的には「コスト削減」「品質向上」などあるが、相反することも多い。正しく意志決定できるように優先順位付けが必要
- 包括的なIT戦略に組み込む
CMSに機能が「あるから使う」という考えを改めて、どういう機能が必要なのかをIT戦略として包括的に考える。すべての機能を使わなくてもかまわない
- 関係者(社内外)を特定する
社内のマーケティング、制作、IT担当のクロスファンクショナルチームを結成する。重要なことは発注側が主体的に推進することで、丸投げは失敗の元
- プロジェクト化とキックオフ
プロジェクトは可能な限り小さく区切る(選定だけのプロジェクトなど)。まだ枯れてない技術なので、プロセス変更も多々ある。ネガティブにとらえず、柔軟にポジティブに受け入れていく
- 導入・移行・運用の詳細プラン
発注側が移行について意識していないことが多い。過去のデータ(コンテンツ)は、遺産ではなく資産。コンテンツの移行には十分なお金と時間をかける
選定前の3つの準備/選定する際の5つのTIPS
続いて、ロフトワークの諏訪光洋氏からは「CMS製品選定の秘訣」が伝授された。CMSは「魔法のツール」ではなく、万能のCMSはないことを前提に、目的に合わせてCMSを選定する準備として次の3点が挙げられた。
選定前の3つの準備
- 目的を明確に
CMSに求めるすべての実現は難しいので、2つ程度の「真実の目的」を設定する
- RFPをつくる
要件をドキュメントにして、明確にする。とくにページ数を正確に把握することが、プロジェクトの規模や製品の性能を試算するうえで重要
- 品質・予算・スケジュール
この3つはバランス関係にある。予算は「ページ数×1万円+CMSのライセンス料」で概算できる
選定する際の5つのTIPS
上記の3点を踏まえた上で、実際にCMS製品を選定する際に役に立つ「5つのTIPS」が紹介された。
- 「極力」静的CMSを選ぶ
低コスト、低リスク、高SEO性、変化への対応が容易などの理由による。静的CMSで弱いとされてきたXML連携も可能になってきたため
- 組織に合ったCMSを選ぶ
構築時よりも運用時を考える(更新する人数やリテラシー)。専門的なCMS製品よりブログツールが良いこともあるため
- あらゆる機能を1つのCMSに求めない
いろいろな機能が必要なら、他のシステムとの連携で実現することもできるため
- 50以上の日本語サイト構築事例があるCMSを選ぶ
海外からそのまま持ってきたばかりのものや開発してすぐのものはバグが残っている可能性が高いため
- 日本で10以上の制作パートナーを持つCMSを選ぶ
制作会社を変えてもリニューアル、運用ができる