構築フェーズについて
ステップ2では、ロフトワーク代表取締役の林千晶氏が「CMSプロジェクトにおける成否の分水嶺~変更管理とコミュニケーション」と題し、CMSサイト構築の手順が語られた。
CMS構築を成功に導く4つのポイント
ロフトワークはディレクター集団であり、クリエイターのコミュニティを運営することで、制作作業は外部に発注する形になっている。林氏はそのトップとして、年間約100件のプロジェクトを見るプロデューサーの立場から、CMS構築を成功に導く4つのポイントを分析した。
- 時間配分(計画がすべての要)
構築フェーズは、さらに「計画」「実装」「移行&検証」の3段階に分けられる。それぞれにかける時間は、1:1:1が黄金律。コストの「Sカーブ」では、計画にはあまりお金がかからないが、実装になると関わる人数もコストも増加する。計画が甘いと、コストが膨れ上がる。計画の段階では、「プロジェクトマネジメント計画書」「全ページリスト」「WBS・マイルストーンスケジュール」の3点を用意する。全ページリストでは、移行の有無や、新URL、テンプレート、担当などを一覧にしておく
- 設計視点(一軒家からビルの建設へ)
通常のサイト制作を一軒家とすると、CMS導入はビルの建設のようなもので、規模がまったく違う。設計においては、情報ブロックの関連が重要で、テンプレートマップで情報ブロックのマップを作り、細部まで詰めていく
- プロジェクトマネジメント(前提条件と品質)
実装の際に発生する問題のほとんどが、制作とクライアントの前提条件の違いに起因する。制作の考える作業範囲とクライアントの考える範囲にはたいていズレがあり、ほとんどで制作のほうが小さい。この「グレーゾーン」に注意する。よくあるズレとしては、有料のストックフォトの費用、Flash作成が新規提案されたときの費用、デザイン調整、CMSに登録しないページの処理、原稿のリライトや画像の作成など
- コミュニケーション(統合変更管理)
ウェブプロジェクトは継続的に変更がつきもの。よりよい結果のためなら積極的に変更すべき。変更を承認・実行するプロセスを明確にし、却下した要望も含めて一元管理する。制作が判断することなく「言われたらすぐにやる」のはNG
運用フェーズとパネルディスカッション
最後の締めくくりである運用フェーズでは、ロフトワークがCMSによるリニューアルを手がけたアイ・オー・データ機器、大阪ガス、朝日新聞社(社内ポータル)の3社からそれぞれ担当者自身が登壇し、発注側からの視点で具体的な注意点などを語った。さらに、設計フェーズのセッションでCMSによるサイト構築途中の進行経過を紹介したZ会を含めた4者で、パネルディスカッションが行われた。

構築期間中の「差分コンテンツ」の扱い、機密データの移行の難しさといった想定外の問題点や、逆に更新サイクルが早まったことで経営層が積極的になるといった予想外の効果など、具体的なエピソードも数多く飛び出していた。
※朝日新聞社は社内ポータルのため、またZ会は構築中のためURLは紹介できません。
オススメCMSベスト5
最後に、設計フェーズで諏訪氏が挙げたお薦めのCMS製品とその特徴をまとめておこう。
- TeamSite(インターウォーブン)
世界企業4,600社で採用実績/超大規模サイトも管理可能/レコメンド機能などウェブマーケティング対応/構築事例:avex network
- WebRelease2(フレームワークスソフトウェア)
コストパフォーマンスが極めて高い(ライセンス価格:50万円~)/国内トップシェア/操作が簡単で導入が容易/自由度の高いデザイン/構築事例:Aヒューマン
- Movable Type 4(シックスアパート)
開発者が豊富/スモールスタートが可能(ライセンス価格:5万円~)/プラグインによる機能拡張/コミュニティなどソーシャルメディア対応/構築事例:異国の風(ミキ・ツーリスト)
- NOREN5(アシスト)
WYSIWIGでだれでも入力できる/強力なワークフロー管理/導入実績が豊富/構築事例:タイトー
- SDL Tridion R5(SDL)
多言語展開/米国フォレスターからWCM製品で2回連続ナンバー1の評価/構築事例:リコー