不景気に成長が期待できる分野
ジャシュ・ジェイムズ氏のセッションの後半に登場したのが、世界で5本の指に入る大手広告グループWPP GroupのChief Executiveであるマーティン・ソレル卿だ。世界的に不景気の風が吹き荒れる中、成長あるいは進化が期待できる領域は以下の3つだと説明した。

- BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)およびNext11(イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ)の国々でのオンラインビジネスの進化
- FacebookやMySpaceといった次世代コミュニケーションサービス
- ユーザーの行動理解とその活用を実現するカスタマーインサイト
「デジタルメディアは不況だからこそ進化が早くなる。アクセス解析ツールやサービスはその進化を測定し最適化していくために非常に重要である」と同氏は指摘する。
特にeコマースはまだ伸びており、英国では商品購入の23%はオンラインで行われているという事例や(ちなみに米国は16%、中国は8%)、また同国での広告売上もGoogleが、それまでの最大手であるテレビ会社ITVを抜くだろうという予測も紹介された。他の国々でも同様なトレンドが起きつつあるようだ。
デジタルメディアの進化はとまらない
一方で、同氏は既存メディアのCPMや売上が若干回復を見せる可能性がある点にも触れたが「不況による値下げ効果によるものだが、それは一時的で長い目で見るとデジタルメディアの伸びには追いつかない」と分析。
WPPでは「戦略的思考」「クリエイティブ」「メディアの種類」「テクノロジー」を重視しているが、特にテクノロジーに関しては、それらの影響と意味を理解し、動向をキャッチしていくことが重要とし、J&J、HSBC、Samsung、Vodafoneと共にさまざまなマーケティング施策を試している最中のようだ。
そして、予算削減の中広告最適化の実践を再度強調し、その実現方法として「ありきたりだが、広告主がお金を出すだけだったり、主従の関係で仕事を行ったりするのではなく一緒に問題を洗い出し、協力して解決していく必要がある」と指摘する。
最後に経済全体の動向について触れると、「米国は比較的リソースが豊富で2010年から回復の可能性もあるが、西ヨーロッパは厳しい。しかし米国以上にBRICsや日本が成長を見せることで、世界のパワーバランスは変わっていくかもしれない」と予想し、当分は、厳しい環境が続くことを示唆した。
