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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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ネットマーケを斬る!4大サイト編集長の辛口コラム

「木を見て森を見ず、儲からず」
ウェブ解析の間違った使い方


 このコラムは、「Markezine」と「Web担当者Forum」「日経ネットマーケティング」各サイトの編集長が、1つのテーマについて語るコーナーです。 他サイト編集長のコラムも併せてご覧ください。 ・人材を投入しPDCAを繰り返す 継続した取り組みが成功のカギ (日経ネットマーケティング) ・アクセス解析データなんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです (Web担当者Forum)

 (今回のお題は、ウェブのデータ活用。いろいろ考えたのですが、編集部のアクセス解析の使い方について、反省文的な内容をまとめることにしました。ご笑覧いただけましたら幸いです。。。)

反省文: MarkeZineのデータ活用について

 例えばMarkeZineのようなサイトは、ニュースや連載などのいろいろな記事が中心です。ウェブ解析のツールを導入することによって、過去の記事に関して、記事ごと、連載ごと、連載カテゴリごとの人気を、例えばページビュー数を手がかりに簡単に調べることができます。また、記事が多数あれば、公開の日時による人気の違いなどを知ることもできます。

 → 例えば昨日(3/29)、一番PVの多かった記事はこちら

 購入ほどは明快なものではありませんが、例えばニュースレターへの読者登録に対してコンバージョンを設定すれば、日ごとの登録数や、登録に貢献の大きな記事や連載を調べることもできます。コンテンツの成果を測る、という目線です。

 → 例えば今月(2009/3)、最も読者登録に貢献の大きかった記事はこちら

 ツールによっては、サイト内での足跡(パス)もわかります。このページのあとにどこに移動した人が多いか?このページへの入り口になったコンテンツは何か?などを知ることができます。ユーザー(読者)の行動を見る、という目線です。

 また、会員かどうかを判別するフラグを用意することで、個々の読者がどのくらいの頻度でサイトを訪問し、何の記事を読んだかを知ることもできます。

 ……とまぁ、タグやパラメータの設定を行うことで、いろいろなことがことがわかります。

 ただ、ご存知の通り、ここから先が難しい。。。

・いろんな数字を「見るだけ」で満足してしまう
・多数ある中の、どの指標が大切かが決められない
・ある指標に注目したとして、何を行えばそれが改善できるかがわからない

 センスがないと言ってしまえばそれだけなのですが、なかなか難しい。正直なところ、MarkeZineも御多分にもれず、「見るだけ君」の時代が長く続いておりまして、そこそこに値のはる某サービスの利用を開始してから1年ほどたっているのですが、ようやく、さすがにちょっと賢く使いますかね、というムードが醸成されつつあります。

 例えば、今、着手しているところですと(ホントにできるかわかりませんが)、

・登録時のアンケートデータとサイト内の閲覧行動を組み合わせて、精度の良いグループわけを行い、それぞれに対して適切なサービスを提供する
・PV、閲覧時間、読者登録への貢献など、複数の組み合わせからなる指標で記事のランキングを計算し、ナビゲーションやレコメンドに用いる

 ……こんなことができたらいいなぁと思っています。

 そんななか、気づいたというか、肝に命じたことがふたつあります。

・ひとつは「何をやりたいか」から逆算して指標を決め、計測・分析・改善を行うべきだということ
・もうひとつは、部分的に数字が見えすぎるので「局所最適解」に陥りがちなこと

(1)目指す結果から逆算すべし

 たいていのツールには、ダッシュボードのようなカタチで、一般的な指標をまとめたページが用意してあります。漠然と使っていると、ここに並んだ指標の改善を目標にしたくなるのですが、これが危険。例えば、

 広告収入の増加を目的に、1訪問あたりの閲覧数を改善してPVを伸ばしたけれど……

 → 訪問人数が伸びたわけではないので、広告からのコンバージョン数はほとんど改善されなかった

 → そもそも余り在庫が多かったので、比較的単価の低いネットワークADの分しか売上が伸びなかった

 こんなことがあります。

 この場合、ウェブ解析ツールの画面に向かう前に、「どの広告枠の売上を伸ばしたいのか?」「広告在庫の準備からその流通・販売にいたる、どの部分を強化すべきなのか?」こんなことの検討が必要ですよね。

 例えば売上増のためにメールの通数をふやしたいのならば、登録への導線を見直すためのデータ取得と分析が有効そうですが、一方、メール内の広告のクリック率、メールからのコンバージョン数の向上が目的ならば、ウェブ解析ツールで行う設定も必要です。

初歩的に過ぎるかもしれないので恐縮ですが、ホントに大事と思います。

 仮に、データの分析から何がしかの考察を得ることができても、それに対する打ち手がイメージできていなければ、すぐに有効なアクションを行うことはできません。常に、限られた時間の中で対策を講じなければいけないことがほとんどですから、得たい成果とそのために試したい改善案をイメージし、その実現に必要なデータを集め、必要最小限の分析を行う、という方向での取り組みが有効かと思います。

(2)部分的に数字が見えすぎて「局所最適解」に

 これまた当たり前のことですが、ウェブ解析のデータが教えてくれるのは、存在するページやリンクに関するイベントについての何か。つまり、持っていない商品やコンテンツについては何も語ってくれません。

 例えばMakreZineの過去のコンテンツをいろいろ検討して「SEO」に関する記事の人気が高い、とわかったとしたらどうするべきでしょうか。SEOの記事をもっと増やそう、というような意見が出てくるでしょうか。……しかし、このようなデータそのものが、SEOに関連する記事をどうすべきかを教えてくれるわけではありません。

 たくさん読まれる記事の特徴を抽出し、他への適用を試みることは大切かもしれませんが、どちらかというと、

・SEOよりも高いポテンシャルをもった記事ジャンルについて未着手かもしれない
・SEOに興味のある読者への考察を深めることで、お宝コンテンツが見つかるかも

 こんなことを考える方が、本質的な発展につながりそうです。

 ウェブ解析ツールのレポートは、自分達のサイトの内側をしっかり照らしてくれる便利なものですが「そこにしか判断のきっかけが存在しない」と勘違いしてしまうと、ものすごいスピードで局所最適解に落ちいってしまいます。サイトの外側にあるもの、サイトの内側にあっても良いが今はまだ姿の見えていないものへの意識が薄まってしまうことが、大きな弊害になりそうです。

ウェブ解析からわかるデータだけで考えない

 ……いずれの場合も、対策というかポイントは「ウェブ解析からわかるデータだけで考えない」ということにありそうです。

 先ほど例に出した広告収入の話ならば、各種広告商品のセルスルー率や商談の進捗度、コンテンツの話なら、記事の中核を構成する技術やサービスの市場規模や利用者数など。

 一般的なマーケティングやリサーチの素養のある方にとっては自明のことですが、分析的なアプローチになじみがなく、アクセス解析ではじめてデータを扱うようになったウェブ運営者にとっては、難しい部分が多いのかもしれません。

 もちろん、資料を読み込むこと、リサーチの実施、他部署が扱うデータの入手には、手間やお金やストレスがかかりますが、腰をすえて取り組むことで、得られるものは大きいのではないかと思います。もちろん、ウェブ解析のデータとその周辺のデータを動的に統合できればさらにステキですが、一足飛びにそこまで行かずとも、大きな改善の余地がのこっている場合がほとんどだと思います。

 『ウェブ解析ツールが集めてくれる数字だけをゴニョゴニョいじらず広く情報を集め、得たい結果・行いたい施策から逆算して指標や分析方法を考えること』

 ちょうど明日から新年度ですし、これをMarkeZineの目標のひとつとしたいと思います。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

【編集部よりお知らせ】
月1掲載で進めておりました当コラムですが、4月より四半期に1回の掲載とさせていただくことになりました。次回は6月掲載となりますので、今後ともよろしくお願いいたします!

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この記事の著者

ローレンス・渡辺・ピーター(ローレンス ワタナベ ピーター)

MarkeZine編集長(2008年4月~)。サイバーエージェント藤田氏、クレイフィッシュ松島氏らと同じ1973年世代。検索連動型広告とカレーが好き。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2009/04/06 11:45 https://markezine.jp/article/detail/6975

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