「ユーザビリティ」を勘違いしていませんか?
ここには、ひとつ大きな落とし穴があります。「ユーザビリティのよさ=サイトの使いやすさ」と考えがちですが、実は、ユーザビリティに関する国際規格であるISO9241-11に基づく定義では、
ユーザビリティとは、『特定の利用状況において、特定のユーザーによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザーの満足度の度合い』
とされています。
まず、後半部分に注目してみると
- 有効さ…使えるかどうか?(ユーザーが目的を果たすための機能、情報を持っているのか?)
- 効率…使いやすいかどうか?
- ユーザーの満足度の度合い…満足感を得ることができるかどうか?
とありますので、使いやすさとはユーザビリティの中の一部分に過ぎません。さらに、重要なのが「特定の利用状況において、特定のユーザーによって、指定された目標を達成するために用いられる…」という部分です。
つまり、大前提としてどんなユーザーをターゲットとして、何を目的として利用してもらうためのWebサイトなのか? が明確になっていなければ、そもそもユーザビリティについて考えることができないということになります。
一部ではなく、全体を捉えてみる
さらに、Webユーザビリティについて知るためには、ISO9241-11と同じく、ユーザビリティに関する国際規格である、“ISO13407"Human-centred design processes for interactive systems”(インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス)が役立つといえます。

この人間中心設計プロセスは、図のように循環プロセスとなっており、Web設計に当てはめてみると、はじめにWebサイトのコンセプトを「人間中心設計の必要性の特定」で決定したあとは、最終的に「システム(Webサイト)がユーザーと組織の要求を満たす」ところまで、
- 利用の状況の把握と明示(ユーザー調査)
- ユーザーと組織の要求事項の明示(ユーザー要求の分析)
- 設計による解決案の作成(情報設計・プロトタイプの作成)
- 要求事項に対する設計の評価(ユーザビリティ評価)
の4つのプロセスを繰り返していきます。
このプロセス図の中で考えると、はじめに例に挙げた「ボタンの変更」など、効率問題を意識したユーザビリティ改善は、「設計による解決案の作成」部分のみに注目した一部の改善であるといえます。