トピック4:「配管」をめぐる動き:Google是正措置、標準化、そして再編
ここからは、広告取引の「配管」つまりインフラ基盤をめぐる動向をまとめる。一度確立すると、数年単位で業界の土台に継続的な影響を与え続けるため、マーケターとしても押さえておくべき重要な動きだ。
Googleアドテク訴訟の是正措置
Google、アドテク事業の分割回避。ブリンケマ判事が是正措置は行動的救済に
— 杉原剛@デジタル広告最新ニュースを毎日最速要約『プラットフォームの思考回路』 (@sugiharg) September 2, 2026
9月2日、米連邦地裁のブリンケマ判事は、Googleのアドエクスチェンジ AdXの売却を求めない判断を示した。16日に公開された意見書では、その代わりの行動的な是正措置が具体化された。主な内容は次のとおりだ。
- AdXとGoogle Ad Manager(DFP)を、オープンソースのヘッダービディング基盤Prebidに接続するAPIの構築
- AdXの入札を、他社のパブリッシャー向け広告サーバーにもGoogle Ad Managerと「機能的に同等」の条件で提出すること
- 全パブリッシャーへの入札データ(勝敗)のリアルタイム共有
- 自社アドテクの優遇の禁止と、6年間の技術監視
是正措置は米国内に限らずグローバルに適用される。Google Ad Managerへの依存度が高い日本のパブリッシャーにとっても、広告サーバーの選択を見直す根拠ができたことになる。ただし「機能的に同等」をどう検証するかは運用次第で、Googleは控訴するとみられる。
エージェンティック広告の標準化
エージェンティック広告の標準化競争についてIAB Tech LabのShailley Singh氏が整理
— 杉原剛@デジタル広告最新ニュースを毎日最速要約『プラットフォームの思考回路』 (@sugiharg) August 20, 2026
エージェンティック広告の標準化も、具体的な形を取り始めた。IAB Tech Labは9月、エージェンティック広告の取引手順を定めるAAMP(Agentic Advertising Management Protocols)3.0を発表した。
中核の新仕様「OpenProposal」は、これまでメールと表計算に頼ってきたブリーフ(RFP)から購入確約までの提案・比較・交渉の工程を、AIエージェントが扱える形に定義している(10月22日までパブリックコメントを受け付けるドラフト段階)。
一方、Scope3から社名を変えたApostraは、AdCP(Ad Context Protocol)で一度つなげば40社の媒体に出稿できるという「Ad Gateway」を発表し、手数料ゼロを掲げた。AdCPの策定を担う業界団体AgenticAdvertising.orgも9月に初の理事会を発足させ、WPP MediaのCEOが名を連ねている。
8月にはIAB Tech LabのShailley Singh氏が「AAMPとAdCPは別レイヤーの補完関係ではなく、同じ業務を扱う競合する枠組みだ」と整理しており、エージェンティック広告の標準は1本にまとまるより先に、陣営ごとの実装競争に入った。
もっとも、現場の実装はこれからだ。IAB Europeの調査では、広告幹部の58%が1年以内にエージェントによる広告購入の本格稼働を予想する一方、77%はまだ本番で稼働していないと答えている。
「中立な仲介者」の再編
独立系アドテクの再編も進んだ。7月にはPE(プライベートエクイティ)2社によるCriteoへの買収提案が報じられ、Nielsenは計測・検証のDoubleVerifyを21.5億ドルで買収、PublicisによるLiveRampの22億ドルでの買収は株主に承認された。
The Trade DeskはQ2決算で売上の伸びが3%にとどまり、株価は25%下落した。8月末には米連邦取引委員会(FTC)がAmazonを提訴し、広告オークションの「操作」で200億ドル超を不当に得たと主張している。
検証や計測を担ってきた「中立な仲介者」が、プラットフォーム、調査会社、代理店グループの中に取り込まれつつある。広告主は、自社が使う検証・計測ベンダーの資本関係が1年後にどう変わっているかを、契約更新時の確認項目に加えておきたい。
まとめ・次四半期で注目する3つのポイント
Q2の問いは「主導権は誰の手に」だった。Q3を経て見えてきたのは、主導権が「誰が話すか」と「誰が運用画面を持つか」を握る側に移りつつあるということだ。最後に、Q4(10~12月)で注目したい3つのポイントを挙げておく。
- ホリデー商戦で「AI経由の購買」がどう計上されるか:Adobeは米国のホリデー期に、小売サイトへのAI経由の流入が前年比130%増えると予測している。ChatGPT広告が25億ドルの年間目標にどこまで近づくか、そしてその成果がどのチャネルに計上されるかが、計測設計の試金石になる。
- ブランドエージェント広告の課金単位と成果指標:クリック、会話、販売のどれに課金するのか。会話ログをブランドにどこまで返すのか。「クリックに代わる指標」が示されない限り、本格的な予算は動きにくい。
- Google是正措置の最終判決と、標準の実装:最終判決案は10月2日に提出され、正式命令の署名から60日後に是正措置が発効する。Prebid接続の実装と、AdCPやAAMPなどエージェント間の取引ルールが、どこまで実際の取引に使われるかに注目したい。
