JavaScriptを使ったアクセス解析の限界
JavaScriptを使ったアクセス解析が、サーバ側で解析を行うツールに比べて、より利用者寄りの解析を行うことができることを紹介しましたが、続いてはデメリットについて見て行きたいと思います。デメリットとして一番大きいのは、「全てのアクセスにおいて、きちんとJavaScriptが実行されるとは限らない」という点です。前回も解説していますが、例えば検索エンジンの巡回ロボットのほとんどは、JavaScriptを実行してはくれません。したがって、JavaScriptを利用したアクセス解析では、ロボットがどれくらいアクセスしてきているかを知ることができないのです。
また、記録できるのは「ページへのアクセス」であって、「ファイルへのアクセス」ではないので、例えば画像や配布しているPDFなどがどれくらいダウンロードされたのかといったことはわかりません。これはつまり、JavaScriptを利用して、クライアント側でアクセスを記録する方法は、「Webサイト全体でどれくらいのデータを配信しているのか」とか「サーバにどれくらいの負荷がかかっているのか」といった技術的な情報をチェックするのには向いていないということです。逆に言えば、サーバ側で記録したログを使って解析を行えば、利用者の行動はあまり追跡できない代わりに、サーバ全体の配信状況を確認できるわけです。
また、JavaScriptが利用できない環境として、携帯電話からのアクセスがあります。携帯電話からのアクセスでも、いわゆる「フルブラウザ」と呼ばれる、パソコンと同じようにWebページを見ることができる機能が搭載されたものであれば、JavaScriptも実行されることが多いのですが、それはあくまで一部で、多くの携帯電話では、いまだJavaScriptは実行されません。したがって、携帯電話向けのサイトでは、JavaScriptを利用したアクセス解析でも、ユーザーの行動を解析することはできないことになります。
また、中にはパソコンでWebページにアクセスしていても、JavaScriptの機能を停止させて利用している人もいます。そうした人の場合も、正しく記録することはできません。JavaScriptを利用したアクセス解析サービスの多くは、たとえJavaScriptが動作しない環境であっても、画像の読み込みさえ行える環境であれば、最低限のアクセス情報を記録できるようになっています。そうしたサービスなら、検索エンジンのロボットのように、画像ファイルにすらアクセスをあまりしないケースは捕捉できませんが、携帯電話やJavaScriptを切っているケースであれば、アクセスした時間やブラウザの名前、IPアドレス程度なら記録されます。ただ、すべてのサービスがそうなっているわけではなく、例えばGoogle Analyticsは、JavaScriptが動作しないブラウザではまったく記録は行われません。
JavaScriptのユーザ利用率は増加傾向
このように以前はセキュリティなどの問題からJavaScriptを危険視する声も多かったのですが、最近ではさまざまなサイトでJavaScriptをよく利用するようになってきていることや、インターネットの利用層が広がっていることなどから、JavaScriptを切っている人の割合は非常に減少してきています。W3Schoolsによれば、JavaScriptを利用できない人の割合は年々減ってきており、2007年1月の統計で、JavaScriptを利用できなくしている人の割合は6%、つまり94%の人はJavaScriptが利用できる状態になっているようです。

これまで本連載でも繰り返し述べていることですが、アクセス解析で知ることができるのはあくまで「傾向」であって、全てのアクセスを完璧に把握することはかなり困難です。JavaScriptを使った解析では、こういう限界がある、ということをきちんと把握して使うことで、そこから正しく情報を読み取ることができるようになるでしょう。
おわりに
今回は、JavaScriptを利用したアクセス解析で何が可能なのか、またそのデメリットは何か、ということを見てきました。JavaScriptを使えば、ユーザーの環境や行動をより詳しく解析できます。JavaScriptはWebサイト・Webサービスのユーザーインタフェイスを進歩させることに一役買っており、もはやなくてはならないものになりつつありますが、アクセス解析の世界でも、非常に重要な役割を担っているのです。