“ターゲット間の関係性を解明する”商品間ネットワーク
“ターゲット間の関係性の解明”におけるデータマイ二ングの活用方法の説明には、『HMVジャパン』の事例が紹介された。この事例では、100万点を超えるCD・DVDの閲覧および購買データから、他の商品をお勧め(レコメンデーション)し、クリック率や、コンバージョン率を向上させることが目的だった。
この際、ある商品に関連する商品をリスト化する「商品間ネットワーク」をブレインパッド独自開発の技術で構築し、相関関係の高い商品、気づき起こさせる商品をサイト内で表示してレコメンデーションしたところ、クリック率が140%向上したという。ユーザーは多様な傾向を持っているため、画一的なサイト構成では、ミスマッチが発生しがちだ。いかにユーザーとのミスマッチを減らすかがサイト構築の基本になり、ユーザーに対してパーソナライズ化した構成を持つサイトを実現するということが理想と考えられる。
佐藤氏は「まず顧客に気付きを与え、次に利便性を向上させる。そして、顧客のステージに合わせたコンテンツ構成を取る。こうした顧客育成とビジネス成長の両方が実現可能なPDCサイクルを回し、イベントベース型のCRMを実践できるレコメンデーションが理想だと考えています。Amazonのように『この商品を買った人はこの商品も買っています』というレコメンデーションは多いですが、弊社の場合『メルマガに登録していない方には登録を促進し、登録済みの方にはさらに特典をつける』といった顧客のステージに合わせたソリューションを作ってきました」と、同社が自社開発したツール『Rtoaster』の特徴を話した。
Rtoasterは、データマイニング的発想で2種類のレコメンデーションを実現している。1つは顧客をセグメンテーションし、セグメントごとに行うルールベースのレコメンド。もう1つは先に挙げた商品間ネットワークを用いたレコメンドだ。既に、化粧品のORBIS、書籍やDVDの販売を行うヴィレッジヴァンガード、オフィス用品販売のアスクルなどが導入している。
例えば、ORBISではRtoaster導入前は人気スキンケア商品に対して、アップセルのレコメンドや同じ化粧品シリーズの前のバージョンなど、人が思いつく範囲でのレコメンドを実施していた。しかし、ブレインパッドのツールを使うことで、『意外だけど関係性のある商品(ヘアケアシリーズとファンデーションの関係性など)』などの発見につながった。これにより開始から1週間で、サイト売り上げの約2%を自動レコメンドだけ売り上げることに成功したという。また、運用していくにつれてアルゴリズムが発展し、開始から1ヶ月で3%まで改善、開始2~4ヶ月で3.5%まで上がっている。
加えてブレインパッドでは、商品間ネットワークのほかに「ユーザー間ネットワーク」への対応も進めている。顧客間ネットワークでは、例えばAさんが訪問してきた時に、Aさんが過去に閲覧した商品の傾向から他に閲覧する確率の高い商品を自動的にレコメンドする。現在、実装に向けて動いており、実際にビレッジバンガードやアスクルでは本格的に稼働する段階に入ってきているという。
Rtoasterで取得したサイト内の行動データを、KXENにインポートして顧客を分析し、セグメンテーションをすることも可能だ。Rtoasterでサイトの訪問者を識別し、KXENで分析されたデータとの照合を行って、『この人にはこれを出したらいい』というレコメンデーションをリアルタイムに行う。この機能は、既にORBISのサイトで実装を勧めており、年末には実際に稼働するよていだという。
データマイニングツールを各種ツールに統合して利用する

データマイニングそのものや、その結果抽出された施策を正しいタイミングで実施する際、施策の数が増えれば増えるほど、その管理は困難になる。同じ顧客に同じオファーを誤って送ったり、反応のない顧客に複数のオファーを出したいが履歴管理が面倒になるといった問題が起こりがちだ。そこで佐藤氏は、キャンペーン管理ツール『smartFOCUS』を紹介し、キャンペーン管理の前段階であるターゲット抽出の実演を行った。
実演は、PCに顧客の65万人分のマスターデータ、そして1000万件のトランザクションデータが入っている環境から、優良な顧客を抽出するというという想定で行われた。まず、RFM分析(購買行動や購買履歴からセグメンテーションを行う分析手法)を実施。smartFOCUSでは、ドラッグ&ドロップの操作で瞬時にクロス集計表が完成する。他にも、複数の集合の関係を示すベン図の作成を行って、優良な顧客30万人を絞り込んだ。さらに、その中から20歳未満でメールを受信できる人を抽出するという手順でターゲティングが行われた。このほかにも、同ツールにはキャンペーン管理やレポーティング機能があり、smartFOCUSとKXENを連携させることで、さらに効果が高まるという。
まず、KEXNを使って、顧客別に各アイテム閲覧確率を算出し、ある人がコンテンツAはどれくらいの確率で見るのか、コンテンツBはどれくらいの確率で見るのかといったリスト化を行い、smartFOCUSにインポートする。インポートしたリストをそのままキャンペーンに使うのではなく、さらに“確率が上位”“DMを拒否しない”“男性”“年齢”といった複合条件をベン図などを用いて抽出し、そのリストをキャンペーンやDMの送付に活用することで、開封率やコンテンツへのアクセス率を向上させることも可能だ。佐藤氏は、「この両ツールは専門知識は不要なので、多くのマーケッターに施策を可能にします」と製品の利便性と使いやすさを説明した。
最後に佐藤氏は、冒頭で紹介した数理的なマーケティングのための5つのステップを振り返り、「データマイニングというものは言葉が先行し、何でもやってくれるイメージがあります。しかし、ただ単にデータから宝を採掘しても利用しなければ意味がありません」とメッセージを送った。
