アクセスデータを元にして消費者行動を類推
本セッションで伊藤氏が紹介したのは、myRT mobileを使ったアクセス分析データ。5月と8月、平日と休日のそれぞれの時間帯別アクセスの推移を、ページビュー(PV)数、セッション数、滞在時間の4つの指標で示したものだ。
一般的な無料解析ツールと異なり、ロボットによるアクセスなどを除外し、実際の携帯ユーザーから取得した月間6.7億PV、来訪数1.6億セッションによる統計データの精度はかなり高いといえるだろう。

この実績データをつぶさに見ていくと、色々と面白い事実が浮かび上がる。例えば、モバイル関連の白書や公開調査データなどによれば、モバイル・インターネット利用率は朝夕の通勤帯、昼休み、就寝前に上がるとされている。ところが、実際のデータを見ると、休日はもちろん、5月の平日でもそのような特徴が表れていない。
さらにカテゴリーごとの解析データを見ると、「一般常識」とのズレがさらに明らかになる。例えば、ショッピングと商品・サービス紹介サイトでは、仕事や学校といった規制された時間のない夏休みの方が、昼過ぎのアクセス数の伸びは激しい。ニュース・天気・新聞サイトでは、平日の朝、昼の伸びは見られず、夜に向けて増えていく。書籍・コミックでは、平日と休日に大きな差が無い。
伊藤氏が最も興味深い事例として紹介したのが、「着うた・待ち受けサイトのアクセス状況」だ。分析データによれば、5月は平日よりも休日の滞在時間が圧倒的に高いのに対し、8月に入ると見事に逆転する。夏休み中は、実際に音を出してコンテンツを確認することができるためだと考えられる。
その他にも、クラブ・バー、宿・ビジネスホテルサイト、ローカル放送局とタウン誌サイト比較といったアクセス解析結果も、ユーザーの行動パターンや地域特性を類推できるものとして紹介された。
企業個々の持つ来訪者特性を見極めたWeb戦略立案を
有効なモバイルビジネスを構築するためには、アクセス解析データを元に、自分たちのビジネスがどのような顧客の行動傾向と結びついているのかを類推する必要がある。その上で、仮説に基づいたモバイル戦略の企画・政策立案を行うわけだ。
たとえば、サイトに引き込むためのメディアを探す場合には、彼らの行動パターンを分析するのが近道だろう。移動中にアプローチしたいのであれば交通広告が最適かもしれないし、テレビを見ている層に訴求したいのであれば、そこにターゲットを絞る。さらにQRコードや指定検索ワードのような接点の形態や、提供する機能について検討していく。
その過程で、まずは無償提供の「myRT mobile」を活用し、より踏み込んだ解析を迅速に行いたいのであれば「RTmetrics」導入を検討するのもいいだろう。
伊藤氏は「自社を的確に定義した上で、スピーディなデータ取得を意識すること。企業個々の持つ来訪者特性を見極めたWeb戦略立案を意識することが重要」と述べ、セッションを閉じた。