競合メッセージに情報を追加/ネガティブなメッセージを逆手に取る
事例2:競合のメッセージに追加情報を付け加えて対抗する
筆者がスーパーで歯磨き粉を買おうとした際、次のような2つのPOPを目にした。
- A「浸透殺菌 歯周病ゼロへ」
- B「問題は、殺菌後に残る歯周病性 破片殺菌+破片吸着力」
歯周病予防を強く意識している消費者であれば、明らかに後者の歯磨き粉を選択すると推測できる。メッセージが作成された順序はA→Bの順である。Aを競合、Bを自社と想定した場合、コンテクストは次のように分析できる。
- 協力者:メディア=POP 店内の売り場レイアウトや導線、商品陳列、品揃え等、インストアマーチャンダイジング(ISM)の状態に影響を受ける特性がある
- 競合:「殺菌で歯周病を予防できる」ということをアピール
- 顧客:殺菌効果がある歯磨き粉で歯周病予防が可能だと考える
- 自社:「殺菌だけでは歯周病は防げない」ということをアピールし、殺菌効果+αのメリットを提示する
このようなコンテキストによって、歯周病予防を強く意識する潜在顧客は「浸透殺菌 歯周病ゼロへ」というPOPを先に読んでも、「問題は、殺菌後に残る歯周病性破片 殺菌+破片吸着力」というPOPを先に読んでも、後者の方が予防効果が高そうだと解釈することが予測できる。
事例3:ネガティブなメッセージを逆手に取る
最後に検索結果画面の事例を挙げる。
Yahoo! JAPANで「安いエアコン」と検索すると、検索結果画面に「安いエアコンは壊れやすいですか? - Yahoo!知恵袋」という、Q&Aサイトのネガティブなタイトルが表示されていた(2009年11月19日の検索結果となるので、現在は別のタイトルが表示されている)。
ここで、例えば「どこよりも安い!エアコン」等のタイトルを作成しても、Q&Aサイトのネガティブなメッセージに掻き消され、あまり多くの流入数は見込めないと予測できる。そこで、「壊れにくくてどこよりも安い!エアコン」というタイトルを作成することで、ネガティブなメッセージに対抗することが可能になる。この場合、コンテキストは次のように分析できる。
- 協力者:メディア=Yahoo! JAPAN メディアが運営するサービスのページも検索結果に表示する特性がある。今回の場合は『Yahoo!知恵袋』
- 競合:メディアのYahoo!が運営する『Yahoo!知恵袋』のユーザーが投稿したネガティブな疑問
- 顧客:「安いと壊れやすいのでは?」というイメージを持つ
- 自社:「安くても壊れにくいエアコンを扱っている」ということをアピール
このようなコンテキストによって、「安さ」で訴求しようとする自社に対してネガティブなメッセージが存在していても、流入数を減少させずに済むと推測できる。
これらの事例のように、「自社」と「顧客」の関係性だけでなく、「競合」と「協力者」とが織りなすコンテキストをまず把握したうえで、それに対応(対抗)する形で、“後出し”でメッセージを作成することで、効果的に訴求することが可能になるのである。
