一般企業にも浸透してきたサイトでの動画利用
ユーザーにストレスなくサイトを使ってもらうには、重い画像や動画はご法度――。現在も読み込み速度は重視すべきポイントだが、ブロードバンド環境が整った結果、許容範囲はずいぶんと広がってきた。一昔前までは動画を掲載しているのは、専門の動画サイトくらいだったが、YouTubeなどの動画共有サイトも普通に使われるようになり、個人ブログでも当たり前のように動画が埋め込まれるようになっている。
米国ではそんな変化を受け、CVR(コンバージョン率)向上などの目的で動画を導入する一般企業が増え始めているという。動画配信プラットフォームをSaaS(Software as a Service)で提供するBrightcove(ブライトコーブ)によると、以前の同社顧客層は放送・出版・音楽などのコンテンツ業界が中心だったが、ここ1年半ほどで一般企業の利用が増えてきている。今ではコンテンツ業界との取引よりも、一般企業との取引の方が多いのだとか。同社の業界シェアは60%程度に及ぶというから、これは同社に限った話ではなく、Webサイト全般の動向と考えても大きな問題はないだろう。
同社のマーケティング担当シニアバイスプレジデントのジェフ・ワトコット氏(写真左)は、動画利用が広まってきた理由として「物語を語れる」ことを挙げる。
「アメリカには、“a picture is worth a thousand words(百聞は一見に如かず)”ということわざがあります。“a video is worth a million words”。テキストや画像よりも、動画を使った方が短い時間で豊かなメッセージを伝えることができます」
実際に同社顧客の導入事例には、ブランディングのためにTVCMをサイト上で流す、テキストや画像だけでは説明しづらい内容を動画で伝えるといったケースが多いという。
業種を問わず、企業がWebサイトを持っていることが当たり前になってきた現在、Web担当者にとって「どんな新しい技術・手法を使って競合他社を出し抜くか」は悩みの種。動画に関する先行事例が増えるに連れて、米国では動画を使わないと競合に置いていかれるのではないかというプレッシャーが大きくなり、さらに動画の導入が進むというサイクルが生まれているそうだ。
「10年前にWebが登場したころから、Webサイトにテキストは付きものでした。今では画像の無いサイトは考えられません。同じように、これからは動画の無いサイトも考えられなくなると思います」(ワトコット氏)