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「加速し続ける電車にいち早く乗った人が勝者になる」 ― 世界トップレベルのWeb Analystが語るオンラインマーケティングの真髄


サイトへの訪問目的が必ずしもコンバージョンと結びつくわけではない

── ウェブやデジタルマーケティングが持つ可能性に対しての理解の低さが、ウェブサイトやオンラインビジネスのパフォーマンスに対する期待を下げているということでしょうか?

 そうだと思います。まずウェブで何ができるのか、特にコンバージョンなどに対する期待が低いですね。例えば、私はMuji(無印良品)の商品が好きで旅先でも見かけると店に入るのですが、米国市場向けのオンラインショップを試した時、店舗での快適さに比べ、その使いづらさにびっくりしました。サイトを訪れた顧客が取る行動をよく考えないでサイトをデザインしてしまう会社が多いのは問題ですね。

 また、サイトのデザインや運営において、役に立つツールやサービスを提供する会社を利用しない人が多いのも問題です。先日訪れたあるサイトで、小さな[フィードバック]というボタンを目にしました。そのリンクをクリックすると、「この商品を探したけど見つけられなかった」とか「比較エンジンは役に立ったけど、色の他にサイズでも結果を絞れるようにして欲しい」といった私の感想や希望を、サイトオーナーに伝える画面に移動しました。

 99%のサイトは、サイトの訪問者が感想を残してくれるための機能を備えていません。利用者の感想や希望は、サイトを改善する上でとても役に立つ情報です。顧客や利用客の意見を聞くのは、改善を考える時に最も大切な最初のステップです。TVや雑誌など他のチャンネルでは、直接意見や感想を聞くのは簡単ではありませんが、ウェブでは簡単に行なえます。私はサイトで簡単なアンケートを行うのが大好きです。訪問者がサイトを離れる前に感想を聞きます。このフィードバックを真剣に受け止めるとサイトの弱点や問題点が見え、問題を改善すればコンバージョン率が上がります。ここで改善する問題は、会社が考えるポイントではなく、利用者から直接聞いたポイントだからです。

 多種多様の便利なツールがあり、中には無料で提供されている物もあることを知らない人も多いようです。これらのツールを使うと、新しいアイデアやウェブサイトを簡単に試すことができます。オバマ大統領が選挙活動に使ったウェブサイトが、この一番良い例でしょう。最適なウェブサイトを作成するためにグーグルのウェブサイト・オプティマイザーツールを利用しました。1ページだけのシンプルなサイトで、ページの内容も「オバマ氏の写真」「連絡先の電子メールが表示された欄」「登録する欄」の3つだけでしたが、掲載する写真や欄の位置、色、サイズなどをツールで試しながら改善した結果、コンバージョンが43%も向上しました。

公開当初のページ
公開当初のページ
テストに使った画像
テストに使った画像
テストに使ったボタン
テストに使ったボタン
テスト後に改善されたページ
テスト後に改善されたページ

 最初から素晴らしいサイトは少なく、グーグルのオプティマイザーやOmnitureのテスト&ターゲットなどのツールを活用して、サイト利用客の声を聞きデザインや機能をテストすれば、どのサイトも多いに改善でき、コンバージョンを上げることができます。

 出版したばかりの「Web Analytics 2.0」では、「コンバージョンは大切だけれども、サイトを訪問する目的はコンバージョンとは繋がらない場合が多い」というポイントについて述べています。例えば私がMujiサイトにアクセスしたのは、オンラインで商品を買うのが目的ではなく、次に店舗に入った時のために新しい商品をチェックしておきたいからでした。サイトでは、商品やサービスの検索のしやすさが特に大切です。メルマガやニュースレターで利用者とコミュニケーションしたいのであれば、利用者がメルマガなどに登録しやすいようにサイトをデザインすべきです。カスタマイズできる商品であれば、それをサイト上で試せるような機能も大切でしょう。「購入」などの大きなコンバージョンポイントだけでなく、このような小さなコンバージョンポイントにより注目しよう、というのがこの本のメッセージでもあります。これらの行動ポイントは購入以外の行動ですが、サイトを訪れた人々を100%満足させるためには大切なポイントです。

── オンライン、店舗、広報などなど、会社が大きいほど社内各部間のコミュニケーションが途切れがちですよね。オンラインが繁盛すると店舗での売り上げが下がるという心配や、予算の取り合いなど、まるで競合しているような場合も見られます。

 まさにそのとおりです。先日、某日系自動車会社の米国CMOと話す機会があったのですが、彼の「社内のデジタル業務はそれぞれ担当部署が決められ、組織化されている」という話を興味深く聞きました。「社内のディーラーが、ウェブサイトが成績を上げると儲けが減ると心配している」とも話していました。この会社では、オンラインマーケティング、ウェブサイトのデザイン、電子メールマーケティングなどは、それぞれ別々の部課が担当しています。ウェブサイトだけでも場所やサービスなどによってメッセージがバラバラで、とてもまとまっているとは言えないものでした。

 残念なことに、これは稀なケースではありません。多くの会社が似た様な状態にあります。ハイテク、ヘルスケア、製造などビジネスの分野に関係なく、どの会社も似た問題を抱えています。一番の問題は組織の構造にあります。ブログにも書きましたが「誰がウェブを管理すべきか」という点で、中央と地方を巧く組み合わせたパターンが1番だと思っています。ウェブサイトの所有者は中央にあるべきで、できればマーケティング機能を持った部署に所属すべきです。社内に複数のサービスや商品ブランドチャンネルがある場合には、それぞれのブランドが中央に報告しながらも独自に動ける形が望ましいと思います。この組織構造をいかにうまく設定するかが、サイトやビジネスの成功にとって非常に大切です。組織の構造が最適化されていないと、間違った行動や変更を成功と勘違いしてしまう可能性が多いにあります。そのために、会社や社員が受ける心理的悪影響を十分に考える必要があります。

── 先ほどのCMOのように、いろいろな会社のCレベルと話をする機会が多いと思いますが、ウェブについての知識や理解度、オンラインマーケティングに対しての一般的な考えとは、どのようなものでしょうか?

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この記事の著者

ハント肇子(ハントモトコ)

 1998年にAJPRを設立以来、世界各地の企業に対してインターネットをベースとした日本市場向けマーケティングを指導。日本及びアジア各地の知識を活かしたサーチマーケティング・コンサルティングサービスは、世界的に有名な企業のサーチマーケティング・キャンペーンを成功へと導いている。また、世界各地のカンファレンスで講演し...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2010/02/12 12:43 https://markezine.jp/article/detail/9555

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