昨対約180%成長 眠れる獅子の夜明けは近い
日本EC市場を遙かに凌駕した成長を見せている中国EC市場。もはや日本のGDP(国内総生産)を抜くのも時間の問題と騒がれる中、中国EC市場の2009年は対前年比で約1.8倍の成長を遂げており、2012年には12兆円の規模にまで成長すると予測されている。
このように驚異的な成長を見せる中国のEC市場に、日本企業の関心も高まっている。その中で、いち早く中国市場に進出しているのがSBIベリトランスだ。
SBIベリトランスは2009年の1月に「販売店が商品と商品データを準備するだけで、中国向けのECサイトを作れる」ECショッピングモール『バイジェイドットコム(佰宜杰.com)』を開始している。バイジェイドットコムは、中国独自の決済方法、銀聯(ぎんれん)カードで決済できる中国人向けのECモールとして中国展開を図っている。中国展開を図りたいと考えている日本企業は、バイジェイドットコムを利用して出店をすれば、日本にいながら中国人向けの店舗を構えることができ、日本製品を中国人に向けて販売ができるというわけだ。
バイジェイドットコムは2009年1月26日にサービスを開始してから約1年3か月が経つ。出店店舗数は25店舗となり、利用会員数は12万人を超えている。出店店舗は、SBIベリトランスのサービスを利用している加盟店を中心に、今後もオープン予定の店舗が20社以上あるとのことだ。
バイジェイドットコムの運営元であるSBIベリトランスの事業開発部シニアマネージャーである矢井知章氏(写真左)にまず、中国EC市場の成長要因について聞いたところ「インターネットの普及と中国自体の経済成長がEC市場伸長の背景にある」という答えが返ってきた。
また、近年中国から日本への観光客が増大し、日本製品を知った(または実際に購入した)ユーザーが本国でも日本製品や海外ブランドものを購入したいという欲求が出てきているという。
中国におけるEC市場のシェアはアリババグループが運営するオークションサイト『タオバオ(淘宝)』が多く(約7割)を占めているが、商品の中には偽物が混じっている場合も多いようだ。「中国人の本物に対する欲求、ブランドものに対する欲求は高いです。弊社の場合は、日本企業が運営元となっておりますので、安心、安全に買い物ができます、とアピールできます。これは大きなメリットとなっています」と説明した。
タオバオ頼みの特異な環境
オンラインでモノを売ることを考えた場合、日本では楽天やYahoo!ショッピングといったモールに出店すると同時に、独自ドメインを取得し、自社運営のEC店舗を展開ケースが多くなってきている。それに対して中国では、独自ドメインを取得しての店舗運用はまだあまりないようだ。
矢井氏は独自ドメインショップがあまり存在しない理由として「信頼のおけるECサイト(モール)でないと中国人消費者はモノを購入しない、という背景があります」と語った。つまり、中国EC市場のシェアの多くを占めるタオバオが最も古く、かつ最も信頼できるオンラインショップと中国人は認識しているようだ。中国におけるECサイトの成功はサイト自体のブランド力が重要視されているのだろう。
一例としては、中国進出を果たしたユニクロがタオバオに出店をしていることが挙げられる。
しかし、タオバオ一辺倒でのEC展開だけではなく「日本と同じく独自ドメインを使ったEC店舗展開が今後は増えていくだろう」と矢井氏は予想。自社ブランドを確立した(できた)企業ほどその傾向は強くなっていくことは間違いないだろう。