10兆円を超えていくEC市場
2008年度のBtoC EC市場(以下、EC市場)は、5兆6000億円を超えた。金融恐慌の影響は受けたものの、前年に対して15.5%拡大している。日本の消費経済は約280兆円を超える規模を誇り、EC化率は2%に過ぎない。これまでのような急激な拡大は見込めないものの、今後も10%程度のスピードで堅調に拡大することが見込まれる。
野村総合研究所(以下、NRI)の予測では、2014年度末には12兆円弱に拡大する見込みである(図表4)。この予測値は、ECサイトという媒体が消費者の消費にどれほど影響を与えたのか、その規模を推計したものである。
推計方法は、NRIで毎年実施している消費者アンケートによる利用状況を基に割り出している。前述のように、ECサイト上で購入したものについても、約半分についてはリアルの店舗に足を運んでいる利用状況がある。ということは当然ながら、ECサイト上で、価格比較やクチコミ情報をチェックし、商品の画像などで購入を決めたものについて、実は最後の支払いはリアル店舗に足を運んでものの1分で処理をしている場合も多々あるだろう。
ECサイトの存在意義は、サイトそのものがその後の消費行動にどの程度影響を及ぼしたのか、という観点で図る必要がある。消費者側から見た場合、前述のような商品の価格比較やデザインの精査などをパソコン画面上で何時間もかけて行い、リアル店舗に足を運んで1分で決済を処理するような消費行動のことを、ECサイトで購入を決めた、と判断している(記憶している)状況が非常に多い。
ECサイトを通じた決済手段すらも複雑化している。海外の、英語で書かれたサイトにアクセスして、Paypalなどの決済代行サービスを活用し、商品を個人輸入する場合もある。個人が運営しているサイト(月額3000円程度のECサイト代行サービスを活用)を通して、商品を取り寄せるような草の根的な取引もある。
サイトで購入を決めて申し込み、決済は商品の配達先のコンビニ店舗で行う場合もある。はたまた、ノートPCにおサイフケータイの情報を読み取るためのリーダーをUSB接続しておき、そこに携帯電話をかざして決済を行う人もいるだろう。
店舗を運営している事業者にとっては、最後の支払いが店舗で行われるのか、サイトで行われるのかには大きな違いがある。しかし、消費者がある商品の購入を決める際には、ECサイト、ポータルサイト、ブログなどのクチコミ、店舗での店員との会話、友人との会話、テレビ広告、ブランドイメージなど、様々な情報を総合的に考慮して、決める。そして、最後の決済、つまりどこでどうお金を支払うのかは、その時々の利便性と都合で決まる。
ECサイトの情報は、あらゆる場面の消費に影響を及ぼしている。たとえ実際の店舗で代金を支払ったとしても、消費者がその商品の購入をECサイトで決めたと捉えられれば、それらをEC市場規模ととらえるべきではないだろうか。ECは消費者の生活の基本的な部分にまで浸透してきているのである。