ソーシャルメディアマーケティングの実践に向けて ― 実行プランの重要性
ここまで、ソーシャルメディアマーケティング戦略における、考え方や方法論を中心に解説をしてきた。最後に、企業がソーシャルメディアを実践して行く上で重要となる実行プランについて触れておきたい。
昨今、ソーシャルメディアマーケティングの実行について、まずは予算をかけずに、特定ブランド等の限定的な領域において、スモールスタートで行うことの重要性が強調されている。この背景には、多くの企業の経営・マネジメント層がソーシャルメディアのビジネスにおける重要性にまだ気付いていないことがある。そのため、現場レベルでソーシャルメディアマーケティングの重要性に気付いている意識の高い担当者が、企業にとってはローリスクと言える程度の低予算で取組みを開始することが多い。
スモールスタートから社内の主流な取組みに発展させていくために、最終的には経営層のコミットメントが欠かせない。中でも、予算の最適化と人員の再配置といった経営リソースの再配分に関する意思決定が経営層には求められる。
そのため、スモールスタートで開始する上で、意識しておくべきポイントとしては、素早く成果を示すための指標を、実現可能なレベルであらかじめ設定しておくことである。その目標を短期で達成することで、その「プチ」成功事例を武器に、経営層に対して報告し、ソーシャルメディアマーケティングの可能性を理解してもらうことが重要になる。
そうした指標を設計してスモールスタートで達成し、NPSのような中長期視点のストラテジックKPIをベースとしたロードマップの設計を経営層レベルに理解してもらうことで、全社的な取組み発展させていく。そのようなステップを踏んでいくことで、ソーシャルメディアマーケティングを次のステージに進めることができる。
結びに変えて
これまで6回にわたり、ソーシャルメディアマーケティングを実践していく上でポイントとなる要素を、ソーシャルメディアマーケティング先進国であるアメリカの最新トレンドを踏まえて紹介してきた。
連載開始時(2009年12月)と比べると、日本においても、ソーシャルメディアマーケティングに関する書籍や記事等も増えており、考察も深まっているように思う。それはそれで望ましい話である一方、ソーシャルメディアマーケティングがビジネスにどのように寄与するかという観点での、本質的な議論はまだまだ十分ではなく、これからさらに議論を重ねていく必要があると考える(この点については、アメリカにおいても現在議論の最中である)。
本連載で紹介した戦略や方法論をもとに、読者の皆さんが「地に足の着いた」ソーシャルメディアマーケティングを展開できるようになることを心より祈念し、全6回の連載の締め括りの言葉とさせていただきたい。