Yahoo!は「人間関係を反映した検索結果」へ
日本国内を対象としたマーケティング担当者であれば「検索シェアNo.1のYahoo!はどうするんだ?」というところに関心があるだろう。Yahoo!はパーソナライズド検索というアプローチではなく「ソーシャル検索」の道を歩もうとしている。
Yahoo!が掲げる検索のビジョンは「ユーザの人間関係、所属集団を反映させるソーシャル検索」だ。つまり、検索結果が周りの人間の影響を受けて変化をする。例えば、化粧品会社で働いている人が多く集まるコミュニティに参加してソーシャル検索を利用すると、化粧品関連のキーワード検索時に検索結果が変わり、その集団が良いと判断したページ、おすすめするページが検索上位に表示されるようになる。他の例を出してもう少しわかりやすく言うと、mixiの「ソフトウェア開発者が集まるコミュニティ」に参加した上で検索した場合には、そのコミュニティの人々の趣味嗜好が反映された検索結果に変わるというわけだ。

これはYahoo!がまだ研究・開発中の技術で最終的にどんな姿になるかわからないが、すでに米国では、「Yahoo! MyWeb2.0(ベータ版)」が登場しており、つながりのある人間がブックマークしたページが検索結果に表示されるようになっている。例えば、私は試験的に数人の社内の人と相互にコンタクトリストに登録をしているが、MyWebでキーワード検索するとコンタクトリストのユーザがブックマークしたページや、「Yahoo! MyWeb」参加ユーザが登録したページを検索対象とした結果を閲覧できる。
このようにGoogleやYahoo!は、個々の興味・関心や人間関係のつながりを利用して検索品質を向上させ、検索体験を高めようとしている。こうしたパーソナライズ化は、ユーザが自分が意図した検索結果を得ようとするためのクエリ(検索キーワード)に対する工夫が不要になる。例えば、渋谷区内のラーメン店を探すために「渋谷 ラーメン」と地域を指定しなくても、「ラーメン」と入力するだけでそのユーザの位置周辺の情報を表示するのだ。また、検索エンジンスパムへの耐性を強めるなどの利点もある。
しかしSEOマーケッターにとって大事なポイントは冒頭で触れた、「同じキーワードであれば誰が検索しても同じ検索結果」ではなくなるということだ。そう、これは例えば「キャッシング」というキーワードで、“あなたのサイト”が1位に表示されていても、他のユーザが検索した時には、あなたのサイトではなく別のどこかのサイトが1位に表示されているかも知れないということを示唆する。検索ユーザによって検索結果が変わってくるのであれば「順位」を基準にしたSEOの判定の意義が薄れてしまう。
誤解しないでいただきたいのは、私はSEOそのものが不要になると言っているわけではない。検索エンジンから見つけやすくする(ファインダビリティ)ための施策、検索ユーザのトラフィックを顧客に転換する(コンバージョン)のためのマーケティング施策全般は今後も必要であることは変わりがない。
ただ、SEOの良し悪しのものさしとして順位を使う―それは世界中のSEOマーケッターが最も好むものさしだが―ことの意味がなくなってしまうということだ。至極当たり前のことであるが、「検索経由でどの程度のトラフィックを獲得できているのか」「そのSEOに投資している予算はコストパフォーマンスが適当なのか」「きちんと企業の収益に結び付けられる施策が行われているか」など、本来ビジネスを評価すべき指標をきちんと用いて判断する時代がもうすぐSEOの世界にも到来しつつあるということを認識する必要があるのだ。