海外からの越境利用者数増加 ― 日本からでも海外市場は狙える
急成長を続ける中国。GDPで日本を抜き、銀座や秋葉原で大量に買物をする中国人観光客の姿が報じられるなど、その勢いを感じられる場面も増えてきたのではないだろうか。
実はWebの世界、特にECの分野では日本でも中国人ユーザーの存在を無視できなくなり始めている。経済産業省が実施した「平成21年度 電子商取引に関する市場調査」によると、中国人回答者の32.7%が日本のサイトで物を買ったことがあるというのだ。この数字を見ると、リアルに中国進出せずとも、Webを整備すれば日本に居ながら中国人に物を売れる可能性があることに気付かされる。
中国ではECサイトで買物をする際、チャットで質問をしたり料金を値切ったりという独特の商習慣が広まっている。だが、チャットだけ気にすれば良いというものではない。顧客に向けメールを配信してキャンペーンなどの情報を知らせる、といった日本でも一般的な施策は中国でも当然有効だ。
ただ、日本から中国へメールを配信しようと考えた場合、主要なメール配信システムが中国語での配信に対応していないという問題に直面する。そうした状況を受け、エイケア・システムズは、同社のメール配信システムMailPublisherに、中国語をはじめ、韓国語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語など多言語での配信機能を実装した。MailPublisherが多言語対応を発表したのは2011年に入ってからの話だが、既に「海外の会員向けにメール配信をしたい」という企業からの問い合わせが非常に多く集まっているという。
母国語でのコミュニケーションが必要に
新たな市場を求めて中国などに進出する日本企業は、ECに限らず増加傾向にある。リアル店舗を持つ小売企業、来日観光客向けのサービス業、さらにはメーカーなど、さまざまな企業が海外マーケットを狙っている。
中国のECでチャットが浸透しているように、海外でのメールマーケティング事情も日本と異なるところが多い。“用途”という点に着目しても違いがある。エイケア・システムズの北村伊弘氏によると、「例えば、メーカーによるブランディング目的のメール活用なども、海外の方が日本よりも積極的だ」という。日本の企業にとってみれば、海外市場では、国内よりも広い用途でメール配信をマーケティングに活用できる。その分、海外向けのメール配信は、急速に活用が進む可能性があるのでは。北村氏はそのように予測している。
実際、MailPublisherを利用して海外に向けてメールを配信している企業の1つに、電子部品メーカーの村田製作所がある。同社はこれまで、大手セットメーカー等を対象に自社製品を売り込んできた。しかし、それらの企業が中国企業に設計を任せるケースが増え、中国国内に向けて製品を開発する中国メーカーも台頭し始めている。新たに中国企業も同社のターゲットに加わってきたのだ。
中国と諸外国との接点と言えば、上海などの沿岸部が中心という印象がある。しかし、最近になって沿岸部では労働者不足やストライキなどによって賃金が上昇。中国政府の政策もあり、内陸部への進出に熱い視線が注がれるようになってきている。その一方で、内陸部にはまだまだ中国語しか話せない人も多く、母国語によるコミュニケーションや情報提供が必要になってきている。
村田製作所では、2008年からメール配信を行ってきたが、会員数の増加に伴い管理が煩雑になってきていた。また前述の市況の変化から、中国語で大量のメールを一斉配信する必要性を感じるようになったため、従来利用していたメール配信の仕組みではセキュリティや使い勝手の面で不安があり、新たな配信システムを探していた。そうしたタイミングに、MailPublisherの海外向け配信対応が重なり、採用に至ったわけだ。
本稿でも触れている、村田製作所の詳細な事例をまとめたPDF資料を公開中! 下記のリンク先よりダウンロードが可能です。
また、エイケア・システムズのWebサイトでは、今回の内容に関連したホワイトペーパー『海外向けメール配信を行うには -導入編-』も、公開中です。
- 各国の法規制に基づく配信ルール
- 各エリア・国・ISPによるメール到達率
- 海外配信を実現するためのベストプラクティス
など、海外向けメール配信を行う際に参考になる情報が、まとめてあります。ダウンロードはこちらからどうぞ。
メールを使ったリード・ナーチャリングの取り組みを強化する村田製作所
村田製作所は、営業活動の中でコンタクトを取った中国人技術者の連絡先をリスト化。新製品に関する情報などをメールで配信し、それをフックに効率的な営業活動を展開してきた。
MailPublisherを採用してからは、メールに掲載するWebサイトへのリンクは、クリックカウント機能を利用。誰がどのページを見たかを追跡し、メールへの反応を参考に営業担当者がフォローするリード・ナーチャリングの取り組みをさらに行っていきたい考えだ。
2008年から開始し、既に成果として、メールからの引き合いも出始めた。効果を実感した営業部門が積極的にメールの活用を進めた結果、ここ2年半で配信先リストに登録されたメールアドレスの件数は約2倍にまで増加。最近では、専用のランディングページを設け、メールからダイレクトに問い合わせできるようにするなど、さらに本格的な活用を進めている。
村田製作所がMailPublisherを導入した大きな理由の一つは中国語に対応しているからだが、検討を進める中で決定を後押しした、MailPublisherならではの特徴もある。それは、1つの契約でデータベースを複数保有でき、さらに各データベースへのアクセス権を簡単に設定できるところ。中国語以外の韓国語やヨーロッパ言語にも対応していることから、日本国内向け、中国向け、ヨーロッパ向けといったように、国ごとに切り分けて運用することが可能なのだ。
他社の配信システムでは1契約で1つのデータベースが割り当てられるものが多い。同じような運用を実現できるシステムも一部にはあるということだが、どうしても権限の設定が複雑になって手間が掛かり、ミスの発生によって予期せぬ事態が起こらないとも限らない。
本社が用意した日本語の原稿を、各国の顧客に向けて現地の言語に翻訳して配信したいが、配信先の追加や退会処理、翻訳や配信など実際の運用は、現地の支社に任せたい――。そう考えていた村田製作所にとっては、MailPublisherのシステムや操作性は理想的だったそうだ。
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海外でのメール到達率は平均80%台 ― 日本とは異なる法律・フィルタリング対策が必須
村田製作所にとって、MailPublisherを導入した成果は中国語でメールを送れるようになっただけではない。メールの到達率が83%程度だったものが90%強にまで改善した。離職した技術者のアドレスを判別し、自動的にリストのクリーニングができるようになったことが到達率向上の要因だ。
「メール到達率は国によって異なりますが、おおよそ80%台と言われています。国内ではメール到達率のアップが重要な課題となりつつありますが、海外でも重要な課題となっているんです」とエイケア・システムズの北村氏。国が違えば関連法規の違いが存在するし、ISPなどの通信事業者が違えば迷惑メール対策にも違いがある。例えば、ISPごとに「一度に何通以上送られてきたら遮断する」といった閾値の設定も違ってくるという。
また、日本に「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特電法)」があるように、各国にも独自のルールがある。例えば企業からプロモーションのメールを送る場合、中国では件名に「AD」と付けることが義務付けられている。あるいは韓国では夜間から早朝に掛けての時間帯でメールを送るには、通常のオプトインとは別の承諾が必要になるといった具合だ。
これら、国別のシステムやルールといった違いを自社で逐一把握し、配信先の国ごとに対応していくことは極めて困難。膨大な労力が掛かってしまうため、事実上不可能だ。さらに、国内のメール配信システム各社にとっても、“海外向け”となると経験値も少なく、未知数の部分が多い。こうした点を、エイケア・システムズでは、業務・資本提携を結んでいるエクスペリアンとの協力によりカバーしていくという。世界各国でデータ分析・マーケティング支援関連の事業を展開するエクスペリアンは、50カ国・25以上の言語でExperian CheetahMailというメール配信システムを提供しており、そこで蓄えたノウハウをエイケア・システムズと共有しているのだ。
「エクスペリアンは中国やヨーロッパなど、世界中のかなりの地域を網羅してサービス展開しています。そこで得た各国の技術情報を、ミーティングなどを通じて当社と共有し、積極的に活用をし始めているところです」(北村氏)
エイケア・システムズでは、技術面での支援だけでなく、さらに各国の迷惑メール関連の法律についても必要な情報を提供していくという。海外でのメールマーケティングに本腰を入れていくのなら、システムだけでなくサポートも充実している点は、評価できるポイントなのではないだろうか。
多言語対応は標準サービス内で利用可能。今後も海外向け配信の機能強化に注力
ここまでに取り上げてきたMailPublisherの外国語対応の機能/サポートは、オプションサービスではなく、標準サービスの中で利用できる。特に難しい操作は必要なく、通常の管理画面から本文作成時にプルダウンで言語を選択するだけ。同じ画面内でプレビューもできるため、ユーザーに届くメール内容を確認してから送ることができる。
さらにエイケア・システムズは、MailPublisherの海外向けメール配信の機能を強化。既に送信ドメイン認証技術「DKIM」に対応し、通常のメールが迷惑メールに振り分けられてしまうリスクを低減した。「DKIM」は日本ではまだそれほど普及していないが、世界標準技術として海外で広まっている。これも無料のオプションとして利用することが可能だ。
エイケア・システムズの北村氏は、海外向けメール配信の動向について「メールは安価で効果測定もしやすい。そういう点では、進出して間もない海外において、まずはメール配信から取り組もうと考える企業は今後ますます増えるのではないか」と見る。提携先であるエクスペリアンと知見を共有しながら、企業からの正規のメールを必要とするユーザーにきちんと届けられるよう、「到達率の向上は飽くなき追求。妥協せずに高めていきたい」と語る。
本稿でも触れている、村田製作所の詳細な事例をまとめたPDF資料を公開中! 下記のリンク先よりダウンロードが可能です。
また、エイケア・システムズのWebサイトでは、今回の内容に関連したホワイトペーパー『海外向けメール配信を行うには -導入編-』も、公開中です。
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