モバイル領域への拡大
ラオ氏が3番目のポイントとして言及したのは、マルチスクリーン/マルチデバイス展開についてだ。リッチなブランド体験を複数のプラットフォームに展開する重要性を強調する。
「朝起きて新聞を読み、通勤中はタブレットやスマートフォンなどでスポーツのスコアを見る。職場に着いたらデスクトップPCで情報を収集する。このように消費者は、一日中、細分化されたメディアやデバイスを通じてコンテンツへアクセスしているわけです。常にオンデマンドで情報にアクセスできる状態なので、何時、どのようにアクセスしたいかを、消費者は自分で選択できる、つまり、消費者がその主導権を持っていることになります。そして、広告主は、消費者が選んだときに、そこにプレゼンスを持っていなければいけません。現在、ユーザーが使い得るプラットフォームすべてに、アクセス可能な形でコンテンツを置いておく必要があります。結果として、“火曜日8時のテレビ枠をコントロールして広告を打つ”という時代は、もう終わったわけです」(ラオ氏)
こうしたマルチデバイスにおけるキャンペーン展開の事例として取り上げられたのは、サムスン電子のタブレット型多機能端末「Galaxy Tab」のキャンペーン。同キャンペーンでは、GoogleディスプレイネットワークとYouTube PC/モバイル、さらに昨年グーグルが買収した世界最大のモバイル広告ネットワーク「AdMob」を活用し、クロスデバイス・クロスプラットフォームで展開された。
「トレンドとしては、世界も日本も同じように進んでいますが、特に日本は積極的にモバイルを活用しています。日本では今後、AdMobネットワークを活用することが、非常に重要になってくるのではないかと、我々も注目しています」(ラオ氏)
キャンペーンでは、視聴者へのリーチ・CVRともに好調だったという

ディスプレイ広告キャンペーンの効果測定
動画を含め、ディスプレイ広告キャンペーンの場合、インプレッション数やクリック数といった計測値だけでは、その本来の効果を推し量ることは難しい。ブランド認知や好意度などのパラメータが、どのように向上したかを計測することが重要になってくる。この点は、グーグルでも課題として感じており、さまざまな計測技術の開発に注力しているという。
ディスプレイ広告キャンペーンに利用できる効果測定ツールとしては、「DoubleClickリッチメディアのレポート機能」「Googleキャンペーンインサイト」「YouTubeインサイト」の3つが紹介された。
DoubleClickリッチメディアのレポート機能
DoubleClickリッチメディアを利用して配信された広告のキャンペーン結果を確認・分析できる機能。YouTubeのマストヘッドなども、この機能によって効果測定ができる。インタラクティブな広告に対応しており、誰が閲覧しているのか、どのようにインタラクションしているのか、どれだけキャンペーンで時間を費やしているのか、といった最大100のユーザーインタラクションをトラッキングすることが可能だ。
Googleキャンペーンインサイト
ブランド認知度の向上や、ユーザーの関心度向上に対する広告の貢献度を分析できるツール。ディスプレイ広告キャンペーンが、検索ボリュームやサイトのアクセス数に与えた影響が分かる。現在は、アメリカとイギリスの大規模なディスプレイ広告キャンペーンでのみ、利用できる。
「従来型のマーケットリサーチの場合、アンケートデータを用いながら、情報を確認していくが、キャンペーンインサイトを使えば、オンライン上で、しかも数日のうちにこうした情報を入手することができます。サンプル数も従来型のアンケートよりも、大きくなります。つまり、キャンペーン継続中に、こうした情報を活用して、改善することが可能になります」(ラオ氏)
YouTubeインサイト
アップロードした動画について詳細な統計情報を見ることができるツール。視聴者のユーザー層、視聴者がどのように動画にかかわったか(再生時間、評価、コメント)、視聴者が動画を見つけた方法(検索、メール、埋め込みプレーヤーなど)などを確認できる機能が備わっている。
例えば、同社が昨年からWebやテレビで実施している「Googleで、もっと。」キャンペーンでは、複数のキャンペーン動画を作成してすべてYouTubeにアップロードし、誰がコンテンツを見ているのか、どのようにして見つけたのか、視聴率の推移、視聴数が口コミや動画の認知度に紐づいているか、といった情報をYouTubeインサイトを通じて分析しながら改善していったという。
YouTubeインサイトを使って改善を進めた。改善の過程で、動画へのアクションが増えるのに伴ってオーディエンスのエンゲージメントが高まっていくことも分かったという

日本において、今回紹介したような手法・表現などは、まだまだフルに活用されているとは言えないようだ。しかし、「逆に言えば、使ってもらえる余地が大きい」ともラオ氏は意気込む。
「ディスプレイ広告の可能性が、日本の広告主・広告代理店に力強く受け入れられ、採用されているのが、すごく励みになっています。ディスプレイ広告の将来は明るいと考えています。その鍵となるのが、テクノロジーイノベーションだと思っています。今後も引き続き、努力を続け、皆様とオーディエンスに価値を提供できるよう尽力していきます」
シャイリッシュ・ラオ氏
