アクセス解析ツールの中でもユニークなヒートマップ機能
アクセス解析ツールは数あれど、一際ユニークな機能を備えているツールと言えば、株式会社ユーザーローカルの提供する「User Insight」ではないだろうか。
ユーザーがWebページの中で熟読したエリア、スクロールして読むのを終了したエリア、ページ内でクリックしたエリアなどを示すヒートマップ機能はUser Insightの代名詞。サイト内でのユーザーの行動パターンを目で見て把握できるので、わざわざ数値を並べて分析しなくても、問題点・改善策を直感的に捉えられるのが特徴だ。
エリア情報サイト「ウォーカープラス」を運営する株式会社角川マーケティングも、ヒートマップ機能に惹かれてUser Insightを採用。導入前は情報誌時代からの「写真・レイアウトは見栄え良く」といった定石を重視していたが、解析の結果、Webサイトには雑誌でのノウハウとは異なる有効なアプローチがあることに気づかされたという。
角川マーケティングはヒートマップ機能を活かして、どのようにウォーカープラスを改善していったのだろうか。その過程を紹介していこう。
広告販売のため“主婦寄り”にならないユーザープロフィールを
ウォーカープラスは、『東京ウォーカー』『関西ウォーカー』などのエリア・エンターテインメント情報をまとめているサイト。角川マーケティングは「webザテレビジョン」「レタスクラブネット」などのサイトも運営しているが、ウォーカープラスが最も規模の大きなサイトだ。
収益源はバナーやタイアップ特集枠の販売。売上を伸ばすためには、PVを増やすことはもちろん、正確なユーザープロフィールを取得することも必要になる。
そもそも、角川マーケティングでアクセス解析ツールの導入を検討したのは、ユーザープロフィールを取得するのが目的だった。株式会社角川マーケティング 次世代情報コンテンツプロジェクト デジタル企画第1グループ グループ長 鴨生大輔氏(写真)は、当時の状況について次のように話している。
「今まではプロフィールを調べるため、プレゼントキャンペーンでアンケートを取っていました。でも、それでは主婦の回答が集まりがち。『実際はこうじゃないかもしれないよね。ちょっと調べてみようよ』となって。User Insightの導入を検討したきっかけはそれです。属性を知りたいと」
ユーザープロフィールの解析面でもUser Insightは独自の機能を備えている。アクセスしてきた地域などの情報以外に、性別・年齢、ネット利用度・来訪頻度、さらにはどの企業・団体からのアクセスなのかといった情報まで取得可能だ。
角川マーケティングではUser Insightをはじめ、複数のツールを検討。最初はプロフィールの把握が目的だったが、User Insightの説明を聞くうちにヒートマップ機能に興味を持つようになる。「サイトリニューアルにも役立つのでは」と感じられたのが、User Insight導入の決め手だったのだとか。
熟読エリア・終了エリアに注目してエリアトップを改修。適切なナビでPV増
「サイトリニューアルに当たって一番活躍したのはヒートマップですね。ページにいろんなコンテンツが載っていて『どこがよく見られているか』『どこがよく押されているか』というのが一目で分かり、前後の検証をすごくしやすい。コンテンツの配置を変えたら、次の日には熟読されたエリアが赤くなりますから。スピードが相当速くなるなと思いました」(鴨生氏)
ウォーカープラスは全体のトップページの下に、各エリアのトップページがあるという構造。User Insightで分析した結果、エリアトップについては、リニューアル前からかなりページの下部まで閲覧されていることが判明した。
そこでリニューアル時には、エリアトップに載せるコンテンツに気を配った。リニューアル前のエリアトップではページ下部まで閲覧されても熟読はされていない状況だったが、リニューアル後はページ下部まで満遍なく読まれるようになった。ユーザーを適切にナビゲートすることで、全体のPV増にもつながった。
Web業界では「ファーストビューが重要」と言われたり、情報誌では「写真・レイアウトは見栄え良く」と言われていたりする。しかし、エリアトップの下の方に置かれたテキストだけのコンテンツでも人気が出ることがあり、リンクがたくさんクリックされるなど、これまで常識と思っていた結果とは異なる結果も出ているそうだ。
改修費の掛からないCSSの修正程度で十分な成果を上げられるように
User Insightをアクセス解析に使ってきた鴨生氏は、実際に使ってみた経験談から「改修費を掛けない改善でも十分な成果を上げられるようになった」と明かしている。
「今までリニューアルと言えば、デザインをまずはデザイナーに依頼して、とやっていたのが、CSSを少しいじるだけでPVを増やせるようになりました。特集ページと言えば、写真+テキスト、写真+テキストで一覧をつくるページが必要になりますが、『写真が全然押されていない/見られていない』ということがUser Insightで分かるようになりました。ですから、今日リリースした特集で写真が見られてないとなれば、『ページが重くなるだけだから写真を外そう。ページを軽くした方がユーザーにとってはメリットがあるんじゃないか』と変えるようにしています」
また、ヒートマップ機能でサイトの利用状況・問題点が一目で分かるため、社内会議もスムーズに。どこがどれくらいクリックされたか、ツールからExcelに落とし込んで発表していたのが、施策前後のヒートマップ画面を並べるだけで説明できるようになった。1~2時間掛かっていた会議の準備が10~20分で済むようになったのだとか。
社内に根付く「記事で読者を動かそう」という意識を今後Webでどう実現するか
ウォーカープラスを今後どう良くしていきたいのか。鴨生氏は、雑誌の時から「記事を読んでもらうこと」が同社の目的ではないとし、「記事を読んで行動してもらうこと」を目指していきたいと語る。
「ウォーカー編集部には『最終的なゴールは読者を動かすこと』という文化が根付いています。雑誌を発行していたころから、『雑誌を見た人が何人動いたのか、分かるようにしたい』というのを、ずっと課題として感じていました。Webならそれが数字で見えます。ユーザーを動かす施策にまで踏み込むのが今後の目標です。その際にはUser Insightを活用して、どうすれば一番効率的に行動させられるのか、追求していきたいですね」