海外Eコマースの最先端動画活用事例
本セッションでは、OgilvyInteractiveのロブ・デイビス氏、Adjust Your Setのクリス・ゴレル・バーンズ氏、Sapientのマット・リンジー氏の3名がパネラーとして登壇した。
はじめにプレゼンテーションを行ったのは、Adjust Your Setのクリス・ゴレル・バーンズ氏。同社は、イギリスに拠点を置くクリエイティブエージェンシーだ。リテールサイトを中心に、動画を使ったEコマースサイトをいくつもプロデュースしてきた。そのなかの一つMarks & Spencer(以下、M&S)について、その裏側を紹介した。
英国の老舗ECは動画・ソーシャルをフル活用
M&Sは、毎週2200万人が買い物をする英国のオンラインサイト。リテールでは、英国で最も古く最大の規模を誇る事業者である。動画を使ったEコマースのプロジェクトは約3年前にスタートした。
“販売している製品の360度プレビューのような動画ではなく、買い物客やサイト訪問者と『会話』ができるような動画のコンテンツを提供したい”“Eコマースサイトというよりはメディアサイトとして、より多くの情報をよりリッチに提供していきたい”というのがゴールだったという。訪問者のサイトエンゲージメントを高めるために、製品の情報や使い方の提案、生産者の声など、ためになると同時に楽しめる様々な動画コンテンツを、常時150本以上提供・更新している。
「サイトに一度訪れたユーザーは、動画での商品情報の取得を好んでいる」と、バーンズ氏は自信を見せる。動画を閲覧したユーザーのリピート率は、そうでないユーザーと比較して2倍になり、さらにリピートの頻度も2倍になっているという。「こうしたデータからも、動画による商品の提案がエンゲージメントを高め、オンラインショッピングでM&Sのサイトに訪問したいというモチベーションを大きく上げる効果が出ている」と語る。それだけではない。動画を見たユーザーは見ていないユーザーと比較して、ショッピングカートのサイズ(商品点数)が30%増え、平均購入金額が40%増えている。
また、最近では「Fコマース」と呼ばれるようになった、Facebook上でのコマースにも力を入れ始めている。M&Sの動画プレーヤーは、そのままFacebookのタイムラインに埋め込む形で共有することができる機能を備えている。さらに、閲覧するだけではなく、プレーヤー脇に動画内に登場する商品の詳細が表示され、そこから直接購入できる仕組みになっている。ソーシャルメディアで共有された動画コンテンツから購入への動線が作られることになり、M&Sのサイトに訪れたことがない新規ユーザーや潜在顧客へのアプローチに成功している。
今後はリテール以外にも金融やテクノロジーなど、複雑な製品を提供している企業にも動画によるコンバージョンのメリットが提供できるのではないかと語った。