商品を売り込むのではなく、“中の人”の顔が見えるように
Q. ソーシャルメディアを使ったキャンペーンは実施していますか?
昨年末に、Twitterのフォロワー数がちょうど2101(ニチレイ)人を突破したときに、「ニチレイ」「ヘルシー」「食」といったお題で謎かけをしてもらうキャンペーンをしました。告知はメルマガなど社内リソースだけで行ったのですが、220件もの応募がありました。また、通常、冷凍食品には“手抜き”“イメージがありますが、それを覆すようなポジティブなツイートをたくさんいただきました。
予算は年間で決めているわけではなく、通販事業の効率化によって生まれた部分をキャンペーンに回している感じです。こうして我々がいろいろと実験をして、良い事例をニチレイフーズ全体で展開できるようなサイクルを作りたいと思っています。
Q. Facebookで展開している企画について教えてください?
Facebookでは週1回くらいのペースで、「食」を中心とした“中の人”の顔が見えるコンテンツを作ろうとしていました。そこで、私たちが普段食べているものを写真とテキストで紹介しようという「社員の食卓」という企画を考えました。あえて、商品を売り込むようなことはあまり出さないようにしています。逆に、うちのヘルシーな商品とは相反するラーメンや生クリームたっぷりのスイーツも載せているくらいです。ヘルシーな商品を販売しているからといって、そればかりになったらおもしろくないですし、まずは「食の楽しさ」が伝えられればと思っています。

以前、有償ツールを使って写真コンテストも行いました。ある程度盛り上がったのですが、リテラシーの高いビジネスユースの方ばかりというのが正直なところ。私たちのターゲット層である40代~50代の主婦からの認知度や利用度が低いため、費用対効果を鑑みて、継続利用は見合わせました。
写真コンテストはやっていきたい項目ではあるのですが、まだちょっと早いなと感じています。最近、やっと気軽に写真をシェアする人が増えてきたので、流れは来ていると思いますが、まだ今の段階では、同じ金額をかけるのであれば、ブロガーを集めて試食会をした方がいいと考えています。
Facebookを“ファンが集うコミュニティ”に
Q. ソーシャルメディアを始めてみて、変わったことはありますか?
ソーシャルメディアから本サイトへの流入については、微増を繰り返してはいるものの、めまぐるしく増えているわけではありません。しかし、ブランドに対するお客様からの評価を知ることができて、とてもうれしく、励みになっています。ソーシャルメディア上でいただいたお客様の声は、積極的にニチレイフーズにも伝えるようにしています。最近では、会議をしていると、他の社員からTwitterやFacebookを活用しようという声が挙がるようになってきました。
Q. ECサイト上にソーシャルプラグインを設置されていますが、売上とシェアされた数は比例していますか?
しませんね。売れている商品が他と比べてたくさんシェアされているかと言われると、そういうわけでもありません。なかなか、通販サイトの商品に対して「いいね!」を押すというアクションには繋がらないでしょう。とりあえず設置しておいて、“よかったら広めてもらえるとありがたいです”というくらいの謙虚な気持ちが大切だと思っているので。これはソーシャルメディア全般を通して言えることかもしれません。狙いすぎてはダメですね。
Q. 目標としているゴールはありますか?
Facebookを“ファンが集うコミュニティ”に育成していきたいです。まだニチレイフーズダイレクトの認知度が低いので、Facebookを通じて継続的にブランドメッセージを伝えて、ニチレイブランドにもっと愛着を持ってもらえるようになるといいですね。現在、売上の割合も、Webと電話で半々くらいになり、お客様の年齢層も広がっているので、今すぐ売上に繋がらなくても、ソーシャルメディアを運用する意味は十分にあると感じています。何よりもお客様との接点を絶やさないことが大切。ある程度コミュニケーションの土台ができあがったときに何か仕掛けた方が、効果は出ると考えています。今は下積みの時ですね。

インタビューを終えて
“ソーシャルメディアでの販促は嫌われる”というのは、ソーシャルメディア担当者の誰もが気付いていることだと思いますが、上から求められる数字の圧力に負けたり、文化の違う海外の成功事例を真似たりして、失敗する例は後を絶ちません。塩谷さんのように、ソーシャルメディアを運用していく過程で、「お客様の反応によってスタイルを変えながら、独自のコミュニケーションを探し当てていく」というのが、本来のあるべき姿なのではないかと感じました。
企業側の欲求に固執せず、お客様に受け入れられる方法を考え続ける。ソーシャルメディア担当者は、長期的な視点を持って、ぶれる事なくまっすぐに向き合う真摯さと、お客様の反応を素直に受け止める柔軟さ、このふたつをバランスよく身につける必要があるのかもしれません。