7月10日、時事通信ホール(東京・東銀座)にて、時事通信テクノロジーセミナー「爆発するソーシャルメディア 広報、広告、マーケティング業務はどう変わるのか」が開催され、定員300名ほどの会場に多くの人が参加した。
第1部の基調講演では、時事通信のIT専門記者であり、「ネットは新聞を殺すのかblog」を通じてブロガーとしても活躍してきた湯川鶴章氏が、ブログ、SNS、Second Life(以下、セカンドライフ)、YouTubeなどのソーシャルメディアの特徴を説明。セカンドライフやYouTubeは米国から発信されたツールだが、「人とつながる喜び、人に評価される喜びは日米に共通するもの。日本ではソーシャルメディアが誕生し始めた段階だと思うが、これから爆発的に普及するだろう」と予測した。
続いて登場したITジャーナリストの佐々木俊尚氏は、Googleとソーシャルメディアを比較した。世界の全ての情報を整理することを目的とするGoogleに対して、「Googleは最大公約数の検索エンジンなので、自分が欲しい情報を検索してくれない」とGoogleの限界を指摘した。例えばメキシコの政治や経済について調べようとして、“メキシコ”と検索しても多くの人が興味のある海外旅行情報がページを埋めてしまう。その点、「(特定の仲間が情報共有を行う)ソーシャルメディアは検索の母集団を小さくすることができる」と述べた。
また第2部では、仮想空間セカンドライフの日本最大級プレーヤーである電通と博報堂DYメディアパートナーズがそれぞれ登場し、セカンドライフの将来とその可能性について言及。
先に登場した電通の粟飯原健氏は、セカンドライフがある一定のスペックを搭載したPCでないと利用できないという現状について「家庭用パソコンの性能は急激に向上している。今回登場したセカンドライフが、さらにパソコンを進化させるきっかけになるのでは」と説明。また「現在10万人程度といわれている日本人ユーザーは、日本語版がスタートし、早期に100万人を突破した場合には、1年以内に1,000万人を超えることも現実味を帯びてくる」とセカンドライフの可能性に期待した。電通がセカンドライフに参加する目的は、新しいユーザーコミュニティとしての可能性と、新たな広告市場の発掘だ。「広告主としての出展支援するだけでなく、仮想経済を創り出すために必要なプレイヤーの参加を促したい」と金融・メディア・流通・通信・エンタテインメント業界などの参加を訴えた。電通はバーチャルTOKYO(セカンドライフ内で電通が管理する企業集積テーマパーク)のグランドオープンを8月に予定している。
一方、博報堂DYメディアパートナーズの相川雅紀氏は、セカンドライフに対する取り組みについて、「ユーザーとの共存、そして情報共有が基点」として、ユーザーのそばにいることが重要だと述べた。セカンドライフで企業が島を買って、構築しユーザーを誘導するような手法は、一方向の情報発信であって、ユーザー参加型でない。「ユーザーが基点の情報発信の中に、企業が存在するべき」として、Web2.0の延長であることを強く意識していることがうかがえた。しかしセカンドライフへの具体的な取り組みについては現在進行中の企画が多いということで、公式発表は今後随時行われるとのこと。
今回のセミナーでは、電通、博報堂DYメディアパートナーズともセカンドライフの日本人ユーザーが増加していく可能性は高いと考えていることが明らかになった。ただしセカンドライフに代わるサービスが出てきたときには、新サービスに柔軟に対応できるよう、現時点ではセカンドライフでノウハウを貯めている段階だといえるかもしれない。